表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
AT&D.-アタンドット-  作者: そとま ぎすけ
第二章 ドラゴンサーカス
43/162

068 ラストアタック4 お巡りさん壊れる。なお覚醒のもよう

頑張りが足りない。ゲリラ投稿。

テンションが切れる前に投下。

基本は月水金です。ご了承ください。



 御託は終わりだ。

 大吟醸は意識を細くし闇を走る。


 ―――トラップ?間に合わない!


 その足元の線に引っかからないように足を浮かす、中空で一回転して爪先から地面に降りる。


 ―――トスッ。


 勢いがあったおかげで跳び越えられたが、今度は勢いが殺せない。いや殺すべきではない。物が砂地に落ちる程度の音だが確かにさせてしまった。

 ゴブリンが振り返ろうとしている。

 小さな物音が気になったという体でゆっくりと・・・


 ―――間に合え!


 視界から逃げるように緩やかなカーブを描き、排水溝に吸い込まれる木の葉のように標的に迫る。


 ―――間に合わない!見つかる!


 トスッ


 ゴブリンの肩口に何かが刺さり、旋回は一瞬時を止める。


 その一瞬で十分だった。


 大吟醸はゴブリンの背後を跳び過ぎる――ゴブリンの肩を掴んで、その視界にはもう一体のゴブリンが目に入る。行幸だ。そういう思考が過ぎると同時に・・・いや、以前から行動は開始している。


 回転の力でゴブリンを投げ飛ばし、もう一体の心臓を剣で貫く。

 

 戦闘は終了した。


 大吟醸が手を挙げると後続がおっとりがたなで合流した。



「むちゃするなぁ」


 マティの意見はもっともだ。敵の数も確認せずに大吟醸は飛び出していた。通常なら物陰に潜んで様子を見るところだ。それを強攻策で乗り切った。大幅な時間短縮になったのは言うまでも無い。


「先を急ごう」




 ダンジョンは5×5mの石畳の通路だ。先を進んだおかげか作りがきちっとしてきた。だが、神殿の奥の院に当たるのか長い直線と短い階段などで、無造作に置かれた紐のようにうねっている。


 それでも、一本道ダンジョンならば良かった。紐は複数あるようで所々で枝道により繋がる。

 無駄に長い直線は逆に不安をかきたてた。現に小さなお堂に突き当たって引き返すことを余儀なくされた。枝道も厄介だ。マップは正確に軌跡を残す。そこから逆算して枝道を選んでも、実際は立体交差していたりする。

 マップがあるのに未踏域は謎のまま、実際に歩ってみるまで全てがグレーだ。


 トレジャーハントなら駄賃代わりに回収できるのだが、目に付く所には置いてない。探索は後日と割り切って引き返すが、気持ちは割り切れない。


 大吟醸の特攻も、ダイオプサイトの狙撃もそういった気持ちの表れでもあった。

 効果は出ている。―――だが、劇的という物ではない。それでも通常であれば焦りはしなかったのだろう。マティの活躍が無自覚に焦りを促す。


 大吟醸・ノッツ・ダイオプサイトはむしろレベル以上の活躍をしていた。それだけに伸びしろが少ない。確かに機能している。効果も挙げている。しかし・・・力みに対して手ごたえが無さ過ぎる悪循環に囚われていた。

 それを、苦々しく重いながら見つめるノッツ。


 これが成長の前の胎動なのか、それとも・・・

 大吟醸の成功に落胆を覚えたことに嫌気がさした。


(これでいい・・・特攻でいいんだ。選択は間違ってない。ここで失敗したら退却の判断が下せる。時間も無い。時間の短縮に成功している。ここは成功率は低いもの。成功のバックが大きいものを選ぶ・・・間違っていない。焦っちゃ駄目だ)


 焦りは募る物。制御など出来る訳も無く・・・



 ◆ スキル開眼【アクセル】



 (なんだ・・・あれ・・・?)


 マティにとってはダンジョンで走り出すなど、有り得ない事だった。だが考えれば考えるほど正解だと言う事がわかる。

 時間短縮はもちろんの事だが、スニークが出来るものが居ない。やれば全員できるが、特化した職業のシーフが居ない。

 足りない隠密行動を脚力で補った。そして援護したダイオプサイト。クロスボウを構えていた。ダンジョンで精密狙撃ができるのは暗視能力を持つエルフとドワーフ。マティでは松明の明かりに揺らめく視界で当てるのが限界で、とてもではないが肩を打ち抜くなど不可能だ。

 支援したくともラメラーアーマーで駈け付けては敵に気づいてくれというもの。

 更に驚いたのは連携だ。


 視界に入った瞬間に大吟醸は走り出し。ダイオプサイトはクロスボウを構えた。ノッツは俺を手で制止した。

 三人三様の状況判断に舌を巻く。俺は制止に従うのが精一杯で・・・正しいアクションはなんだったのか?今だわからない。

 攻めると決めた。三人は綱渡りの選択をちゃんと下した。


 鮮やかな連携。旅団の性格ではありえない。まず、案が出た時点で大論争が巻き起こる。そして、やってみようと決まる。習得するのは何時になるか?ぶっつけ本番なら間違いない。断言できる。

 失敗すると。


 多分、今の時点で旅団が目指すべき連携の姿を即興でやって見せた。

 当然、劣等感は沸くが未開の地を見せ付けられた感動の方が大きい。尊敬の念さえ沸いてくる。


(負けてはいられないな・・・)


 一人ベクトルが違う事に気付くはずも無く。


 マティは本人はいつもどおりに戦っているつもりだったが、撃破スピードは格段に上がっていた。胸に湧き上がる尊敬の念と高揚感がそうさせるのだろうと思っていたが、実際は違う。

 無意識に、攻撃は部位攻撃へと変化していった。


 これだけ周りで心臓突きやら複数巻き込み攻撃をやっていれば、「ああ、足に当てればいいのか」とか「首に添えておけば・・・」と思ってしまう。

 当然そんなに直ぐに出来る芸当ではないが、一人レベルは10レベルオーバーの実力差である。

 攻撃力の伸び悩みはそのまま、命中率の過剰成長を意味する。その上、敵は他のメンバーから見ても格下の雑魚。マティがその気になれば鼻だけ切り飛ばすのも、目を貫くのも造作も無い。


 警察という出自から、武道には一通りの経験があった。マティは知らず知らずに大吟醸らのレベルを超え、戮丸の戦い方の入り口に立っていた。


 トロールが棍棒を振り上げた。マティはカイトシールドの先端で手首を押さえた。いかに棍棒と言えど勢いが付く前に押さえられては攻撃にならない。触れる程度に押さえてやればいいのだ。

 膝を斬り飛ばす。足を失うほどの深手ではないが体制が崩れるには十分な斬撃だった。

 剣をくるりと回し、崩れ落ちるトロールを抱き止めた。

 正確にはそうの様な格好になった。


 マティの剣【アロンダイト】旅団正式装備のネームドアイテム。伝説級の一品ではない。強化魔法【シャープエッジ】が常時付帯されたユーザーメイド品。ネームドの特性の強化が出来ないは廉価品を製作する場合にも使われる。

 単純な魔法でレア品でもよくある付加魔法だ。ただ、成長しないという条件でコストを抑える効果がある。

 もちろん、マティ自身もより良い武器が欲しいが、癖が無い上、使い勝手もいい【旅団】の性格を現したこの剣が気に入っていてもいた。


 その愛剣の切っ先が肋骨のしたを潜り心臓に達していた。

 システム的に言えば、盾による妨害と視線を外したことによる命中修正のプラス。崩れる体にカウンター気味に入ったボディブローのような刺突。威力にプラス修正。アロンダイトは数本の肋骨など無視して心臓に達した。

 

 大吟醸が出来ないといった技術は、マティにとってはあっけないほど簡単な事だった。


「すげぇ!」


 仲間たちは感嘆の声を挙げた。当然嬉しいが、大吟醸とマティのレベルも違いすぎるし、根本的な動作が違う。

 正面から左右に体を振り視界から消えしがみ付き、鎖骨に剣を滑り込ませるなど、マティにはどう足掻いてもできそうに無い。

 一対一で正面からバックを取る。それがどれほど異常な行動かはマティには判っていた。


 それゆえに、大吟醸の技術に対しての尊敬の念は消えない。


 だが、それらを消し飛ばす出来事が起こった。



 ――――【アクセル】開放。


「うぞっ!」

「どうした!?」


 マティの視界の隅にはアイコンが明滅している。


「・・・ア・・・【アクセル】覚えた・・・」

「はいぃいっ!?」 

「なんじゃそりゃ!?」

「おめでとー」


 【アクセル】は称号のようなシークレットスキル。効果は加速。代表的な使い道は追加攻撃で、旅団が保有しているクエスト【西風の試練】の達成者は習得資格を得る。ただ、習得資格を得るだけでは当然使えない。開眼が必要になる。


 その条件はわかっていない。速く動けばそのうち覚える。と言ったもので、散々ダッシュや素振りを繰り返したが覚えなかったスキルだ。このスキルはキャストタイムこそ存在しないものの30秒のリキャストタイムが存在する。


「そんなもんがあったのか・・・?」

「でも、開眼したり理由がわからない・・・ってアレか?」


 マティは思い返した。

 原則的に攻撃は一回。例外は引っ張る行為は攻撃にカウントされない。二刀流なら各一回ずつの攻撃だ。盾は同じ理屈でカウントされる。

 押さえに一回と膝の切り飛ばしで一回。攻撃ラウンドは終了した。敵の攻撃は抑えたままなので次のラウンドで刺せばいい。そう思って行動していた。ただ、倒れてからでは刺し辛いので“ちょっとだけ急いだ”。


「それじゃね?」

「ちょっと使って見せて」


 マティは無造作に斜めに斬り上げた。しかし、その手は下ろしたままだった。明らかに人知を凌駕するスピードで往復したのだ。


 ハハハハハハハハハハハハハハハハハハ


 マティの口から抑揚の無い笑い声が毀れる。旅団でも40レベル前後の人間が切り札に隠し持つスキルだ。早くても30レベル。20台で習得したなど聞いた事が無い。隠匿しているのかもしれないが・・・


「ゴブリンだ!ちょっとゴブリンぶっ殺してくる!」

「まて」

「まて」

「まてぃ」


「おーいゴブリンよーい。ちょっと殺させてー。ちょっとでいいからさー」


 マティが壊れた。他三人は全力でマティを止めた。

 焦るのは無理からぬ事で・・・



厳しい現実を認識する前に逃げ出します。

働きながらで書けるのが一本くらいなので、二本はストックしておきたい。

その前提で挙げられるだけ挙げます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ