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AT&D.-アタンドット-  作者: そとま ぎすけ
第二章 ドラゴンサーカス
26/162

051 荒野戦3 運営側と揺籃計画 

チェックできてません。

書くことを優先しました。



 そこは薄暗く、幾重にもコンソールが浮かぶ。それは光のラインで出来ているが、立体映像のようにも見える。だが、そこでは確かな固さを持った物質として機能している。上においてあるコーヒーカップが湯気を立ち上らせているのが証拠だ。


 女はコンソールの前に立つ。

 この空間では椅子は必要なかった。実際の肉体は、それらしく見えるベットに横になっている。何の意味があるのか透明なキャノピーまで付いていて、エアコンのノズルがベット脇にそれらしく付いている。公園のベンチでも構わないものを・・・それらしい特注品だ。大体ベット自体が楕円形をしている。その時点でオカシイ。


 スプリング・シーツに至るまでそれにあわせて出来ている。その楕円の効果のほどはわからないが、我が社に経済効果がばっちり有る事だけは確かだ。それは現実の話でここではない場所の事だ。


 女・・・女史は息を整えた。一連の騒動を見守っていた女史に「両手持ち♪」は青天の霹靂・・・違うな・・・単純にツボだった。

 彼女は人の見てないのをいいことに、腹を抱えて笑い転げた。そのさまは普通にみっともない。下品な有様だった。


「人を呼び出しておいてそのザマは何だ?」


 ガルドは呆れ顔でそういった。

 急いで来た訳ではない。呼べば分体が出現する。薄々気づいているかもしれないが彼はホロンだ。

 ホロンというのは、SFで登場する言葉で意識統合群体とでも言えばいいのか?アタンドットでは複数の同じキャラクター・・・今はアバターか?を持つAIをホロンと位置づけている。条件はプレイヤーと似通っている。


 プレイヤーはアバターを操っているわけだから、アバターの死は極普通のステータス異常だ。ゲーム上の死である。

 一般NPCはAIを含むロジック回路の死も意味するので現実の死に近い。

 だが、ホロンの場合はAIがアバターを操っている。死んでも経験情報や思考回路をストックできる逃げ場がある。だから、プレイヤーに近い。


 しかし、明確な違いが有る。それは思考をアバターに積めるという点だ。

 プレイヤーが同時に操れるアバターは一つまで、普通のゲームなら曲芸として同時稼動できるかもしれないが、多分に無理がある。

 だが、ホロンは思考そのものをコピーできるので、問題なく同時運行が可能になる。このゲームには弊害の発生を恐れてエリアに一人と後付ルールがあるのだが・・・それは思考のハウリングを防ぐための処置だろうが、ここのAIのレベルは非常に高い。人間であれば【自問自答】で済むような問題だ。クリアはしているのだろう。技術的な問題じゃない。


 そして、共有されるのは知識・経験。と最近ではホロンという言葉は聞かないが、概念はよく見かける。インターネットに接続したPCや、宇宙昆虫・忍者・パリパリ女子学生など引っ張りダコな概念だ。


「エミュレートをお願いしたいの」


 女史は息を整えながら言った。

 彼女が閲覧できるのは言ってしまえばログだけである。腕や体の座標データと照らし合わせながら現状を再現しながら想像は出来た。が・・・それだけで曲芸レベルの荒業である。

 これもアタンドットのシステムに原因がある。こちら側は技術面で不可能な分野だ。

 このゲームは夢を繋げて再現したのはご存知だと思う。クオリティは意外なほどに低い。一応画像データもあるが、それはユーザーに見せて共有イメージを持たせるためのギミックと言ったほうがいい。だから、戦闘も実はシンプルなのだ。


「そんな事に・・・また戮丸か・・・」

「彼は凄いわ!どんどんこのゲームのクオリティが上がっている。スキルもどんどん開発していってるし、とても放置できないわ」

「つまり、ログを理解しながらだと笑い転げる暇が無いってことだな」

「そう!」

(少しは悪びれろ・・・・)


 彼女の言ったのももっともな話だ。夢の中の戦闘である。ユーザーの戦意にシステムが呼応してそれらしい経験をユーザーに感じさせる。それで、ユーザーには未体験なほどのリアルな戦闘に感じる。

 パンチを打つ際に筋肉に可動指令を意識しながらうつ者はほぼ居ない。どちらかと言えば腕を銃に見立てて放つ感覚に近いだろう。それなら、システム介在の余地はある。外れても当たっても不自然は無い。


「これ見てよ!」

「・・・すごいな・・・」


 そのデータは戮丸とチンピラの一戦。他愛も無い諍い(いさかい)の一コマだった。

 チンピラの襟首を左手で掴んだ戮丸は軽く振って、右手でチンピラの顎を撃ち抜いた。その際に左手は右手をガイド・・・レールとして使い、ひじまで押し込み首に強烈なストレスを与えている。


「命中あっという間に100%超えてるな・・・不意打ち判定?ああ、振った時点で標的をロストしてるのか・・・ダメージ加算が・・・クリティカルが出てる・・・100%過剰の影響か?しかしこのダメージは・・・ああ、左手で引っ張ってるのか・・・バインド判定も付いてるな。急所にヒットしてる・・・肘もか・・・うっわ、肘もバインドと不意打ちが活きてるのか・・・圧迫による継続ダメージ・・・もう死んでるよ」

「理解するのに3分かかったわ」

「――はやいな」


 イメージの質が違う。

 襟首を戮丸に掴まれた時点で終っていた。その時点で右手のパンチは外れようが無い状態だった。しかも急所に。


「腕で襟首を振っただけでロストなんてするものなの?」

「無いことは無いな。掴まれている訳だから頭が真っ白になったんだろう。見失うというよりは・さ」

「何でこんなこと出来るわけ?」

「リアルで経験があるんだろうな。この振り方も上手いよ。思いつきで出来る芸当じゃない」


 ついでに言えば巨人の大きさも概念であって規定の大きさは決まっていない。戮丸が観測したことによって定義された。


「再現できる?」

「ちょっと待ってろ」


 画像が、立体映像が浮かび上がる。戮丸とチンピラだ。かなりクオリティは高い。戮丸の視覚情報が確かだからだ。武器、特に暗記の可能性探っている。情報はガルドのAIで選別され、画像情報に反映される。アクセサリや防具も形状で武器として転用できる可能性まで疑っている。使い込み具合も重要な判断材料だ。システムは疑念を持てば妥当な情報を返してくる。チンピラは戮丸によって定義された。逆に戮丸の作り込みが甘い。それも、比較すればの話だ。


 ガルドが迷ってる。


 もし、AIをグレード分けするとなればガルドはホロンの中でも特級・・・イモータルと呼んだほうがいい。

 言葉通り、触れ得ざるもの。英霊と呼ぶのがふさわしい。ここでいう開発者は・・・というよりも彼らは発掘者なのだ。混沌とした仮想世界で・・・


 ―――時間はかかるが詳しく話そう。



 ◆ 揺籃計画



 夢のリンク計画はアタンドットが初めてではない。この計画は揺籃ようらん計画と名付けられ、このアタンドットは第二次揺籃計画に当たる。元になった第一次揺籃計画は、重症患者などが仮想世界で通常の生活を送りたいという考えからスタートした。下世話な言い方だが終末医療だ。


 第一次揺籃計画は原始的で繋げる事だけに留意されたと推察できる。二十数名の被験者の脳が並列で繋がれたらしい。

 何故、―――らしいという表現をするのか?は第一次と第二次のスポンサードが違い、地続きでは無いからだ。

 結果から言えば失敗だった。原因は共通項の未設定。特に時間軸の未設定が顕著だったと人は言う。

 ―――暴走した。


 ――あれから10年。


 これは説明のための例文でもある。発掘したシステムが崩壊したのが何時なのかはわかっていない。

 だが、読者はその暴走から十年間の推移を想像しただろう。社会問題になったかもしれないし、そうならないように各機関が暗躍したかもしれない。被験者は生き残っているのか?・・・など、たった一文で十年の月日が経過したわけだ。


 誰もが好き勝手な夢を見て好き勝手な時間をすごした。その結果はエミュレートされ演算機に蓄積された。夢の中ではそれこそ何でも思い通りだった。

 ゲームのような冒険の舞台もドラマのような愁嘆場もなんでもだ。気に入らなければ時間を巻き戻せば良い。モテモテのハーレムも望んだ分だけ結果が返ってくる。何せ夢の世界なのだから。

 眠ってみる夢といっても、人によってはモノクロだったり、フルカラーだったり、思い返せば支離滅裂で素っ頓狂な展開だったりもするだろう。車を運転してたら、次のシーンで教室でテストを受けてたりと・・・

 そういう矛盾点は機械がサポートする。モノクロであればその風景に付くであろう色を補完し、出鱈目な転移現象は座標を記録することによって防ぐ。それは機会が行っている事だが、厳密には機械を通して繋がっている他の人間の脳によって処理される。

 だから、夢というよりは現実に近い。


 そして世界は際限なく分裂と統合を繰り返す。

 一人一世界でも二十数個の世界。さらに世界線という考えも加わる。時間旅行などで顕著になるのだが、時間旅行をした世界としなかった世界。それにバットエンド・ハッピーエンドと際限なく増えていく。

 『共通時間軸を設定しなかった』というのはこういうことだ。


 先の説明文のように十年の物語が十年かかる訳ではない。一瞬で無限の時が暴走し、世界はビックバン的に増殖した。

 被験者の精神は永遠の時に耐え切れず、一瞬で風化した。


 ではその滅んだ世界がどうして?と思うだろう。

 被験者の脳は生きている。一瞬しか経っていないのだから、本来なら無人の多数世界を量産する形になるが、その世界の住人が居ない訳ではない。いなくなったのはプレイヤーだけだ。プレイヤーを楽しませるための脇役は当然存在する。それは機械と他の被験者により演算されるが一個の魂を持つように見える。


 その脇役達は当然世界の改変が出来ない。時間旅行もだ。当たり前の人生を当たり前に過ごす。

 そしてその世界は間違えようも無く異世界だった。


 第一次揺籃ようらん計画。この名前ですら推論の元に名付けられた物に過ぎない。

 ひっそりと、電脳世界に異世界が無数に生まれた事件であった。


 人格はコピーと分裂を繰り返し、アバターを増殖させていく。世界は融合と分裂を繰り返し、五つの世界として安定した。

 その中の一つの世界での一時代の英雄がガルドである。

 当然、英雄は綺羅星のごとく居る。ガルドが特別なのは意味があった。



 ◆ 英雄ガルド



 リアルの世界では暴走したシステムの中で一つの命が生まれた。被験者の子である。被験者達に共通している点は現実に悲観している。そして、自己保存本能は肥大化している。

 生命維持システムを逆用しての受精は出来ないことではない。そして、被験者の脳はいずれ朽ち果てる。

 世界の終焉は決まっている。


 システムに意思は無い。摩滅してしまった。ただ、被験者達の共有無意識は存在した。この子を育てなければいけない。それが出来れば世界は存続できる。

 ただ、育てるだけでは意味が無い。まっさらな子供の頭脳にシステムを流し込めば暴走時以上の混沌が待ち受ける。赤子の脳ではおかしな事もありのまま受容してしまう。混沌から世界が安定したのは希望やモラルそういった共有認識があったからだ。

 そこで、赤子には人格が必要になった。


 高レベルの負荷に耐えられる精神体。そして、最後に創造主の力に手を伸ばす。


 システムはそれを竜王と定義した。生贄は4人。ガルドは黒竜王。白竜王はレンク。ガルドの腹違いの兄である。青竜王はイアン。後は赤竜王・・・他にも竜王はいたが同時期に四人揃ったのはこの時だけだった。

 誰もが、悲惨な人生を送った。共通するのは如意宝珠という願望機を持っていた漠然とした記憶。どんな悲劇も回避できた。そんな漠然とした確信。

 更にガルドにシステムが追い討ちかける。恐怖と平常心をつかさどるステータスが人間の枠を超えていた。

 どれか一つなら、よくある悲劇だ。


 彼は、気を抜けばそれが毀れる。もし垂れ流しにすれば周りの人間はすべて発狂死するだろう。そんな中、ガルド本人は精神がまったく揺らがないのだ。それも最初からだったら速やかな死が待っていただろう。彼は覚醒でそうなった。普通の価値観を持った人間がある日を境にそんな凶悪な能力に目覚めたのだ。


 さらに戦場から逃げ出した英雄の子という生い立ち。笑うものは居た。だが、英雄を敬愛するものは多かった。その憎しみの矛先はガルドに向かった。


「生まれてこなければよかったのに」


 誰もが言った。聞き飽きた。


 覚醒前の記憶がさびしさが人を守れと叫ぶ。眼を覆わんばかりの悲惨な現状。打開できると叫ぶイミテーションの記憶。貧弱な肉体。

 人を命がけで守れば、守った人たちが発狂する。背中を刺されたのは何度だったか?殺した人間の顔は忘れられないの頑強過ぎる精神。その事実に打ちひしがれても常に冷めた目で見ている自分自身。

 それにもなれた。今度は愛情がガルドの心を切り裂く。一歩距離を置いて慕うものは多い。その一番悲惨な時期を見つめ続けたのがヴェイネスだ。


 彼女もガルドの被害者だった。


 当然、犯罪行為という意味ではない。

 絶望では足りない。どんな悲惨な現状も打開したガルド。彼女は娼婦だった。さげすまれる者だった。そんな人たちにも許せないものはある。

 宿した子供の死。幸せだった記憶を宿した指輪。意味を知らなければ歯牙にもかけない。法にのっとって蛮行を犯す人々。それらは唾棄するべき事だった。

 彼女たちを襲ったのはそんな物ではない。それを理解し、その身を挺して守ってくれた人。


 ―――それがガルドだった。

 ガルドは吼えた。町一つ震え上がる鬼の咆哮。絶対に許しはしない。銃弾盾にその身を晒し、怨嗟と悪意を一身に受け戦い続けた。

 少なくとも、娼婦たちは仕事の対価を当たり前のように受けられるようになった。


 大恩。では語りつくせない。愛情を抱くもの・・・愛情を投げ捨てても後悔しない程度の恩は感じていた。誰もがだ。

 それでも、背中を刺してしまった。それがガルドの纏う恐怖。それにはガルドは耐えられた。

 が、助けられた女たちは耐えられない。贖罪として首を差し出すものは多かった。


 それが、ガルドには一番効いた。


 そして、ガルドは善を投げ捨てた。


「俺は悪党だ」


 ガルドの口癖だ。悪党の背中を刺した・・・勇敢な行為だ。子供だましのロジック。

 その意味をベイネスは深く理解していた。ゆえに被害者だ。


 勇者を待つ魔王。結局、勇者は現れなかった。

 だから、ガルド自身が勇者になった。

 そんな英雄。


 結局、ガルドは赤子の精神体には選ばれなかった。

 暴力的な願望機をすらをも拒絶したのだ。それぐらいガルドの精神は頑強なものになっていた。


 ガルドの一生については別の話で行うとしよう。


 そこで、ネットの海から発掘され、簡単な交流の場と提案があった。

 それに快く応じたのがガルドだった。彼はその後の活躍もあって、英雄神としてひっそりと祭られるようになっていた。それに、黒竜王としての宿業もある。


 アタンドットの目的は交流用AIの育成。

 介護施設やマンマシーンインタフェースの開発。ガルドの生まれた第一次計画の根幹の継承。


 調べた結果。ガルドは暴力的な能力を持っていた。

 それでも、計画は通常通りに進んだ。

 彼の人生は開発陣は全員見ている。一人適正の高いものが追体験してみた。発狂前にガルドが回線を遮断して一命を留めた。

 涙が止まらない者、嘔吐が止まらない者様々な者が居たが、一つの共有見解を得た。


 ―――ガルドは敵に回したくない。


 もちろん、戦力的な意味もあるが・・・人間としてプライドが許さない。


 ゆえに彼はイモータルなのだ。

 アタンドットは最終兵器との友好条約の元に提供されている。

 だから彼らの立場はイーブンである。


 話が長くなったな。元に戻そう。


 そのガルドが首を捻っているのだ。女史にとっても驚愕の事実だ。

 一度だけガルドは生前・・・?完敗を喫している。それも素手の戦いでだ。少なくとも戮丸の腕前は英霊がぎょっとする程度のものなのだろう。


 チンピラと戮丸の戦闘がリピートされる。データ上で知っていた映像の再現には軽い感動を覚えた。

 結果は知っている。それだけに感動が意外だった。


「はじめるぞ」


 閉鎖した世界が戮丸の居る空間に置き換わる。戮丸を挟んで左右に女史とガルドが立つ。


「オワッタな」

 とガルド。巨人と飛竜、計五体が襲い掛かってきた。ビジュアル的に終ってる。


「何でこんなところに飛ばしたの!?」

「情報密度が濃いんだよ。戮丸のポジションにマーカーをセットしてあるから避けなくても大丈夫。再現映像だ」


 VRに再現映像も何も無い。全てが作られた映像なのだから。


「当たり判定も追加したほうがよかったか?」



ガルドの話が気になる方は諦めて。

仕事しながら書ける密度じゃないんです。

30年くらいのスパンで話が展開して、前半欝話。

何処から書けばいいかわからないし・・・技量不足です。

こうやって、小出しにネタ使っていってるので、書くかどうかも微妙。

タイトルはフラーズダルムという作品です。

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