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AT&D.-アタンドット-  作者: そとま ぎすけ
第二章 ドラゴンサーカス
24/162

049 荒野戦1 ムリゲ・・・

ラヴゥ!バトール!意味わからん。

20160301ホント何かいてるんでしょうね。当時の私は理解不能です。



  時は少し戻る。戮丸の蛮行に首をひねっている者には必要だろう。

 オーメルや銀が知らない巨人と飛竜退治の節である。




 茂みに隠れて様子を伺う。ここは巨大な盆地だ。季節風土の違いはあるがサバンナのように木立や下生えが散見される。村で見せてもらった地図を思い出し、方角と風景を照らし合わせる。

 

 人型モンスター――だがその半分のサイズの影を見つけた。

 疑問が浮かぶ。   

 足元でうろついている人影は人間大のモンスターなのか?

 縮尺が合わない・・・ゴブリンであれば巨人が小さすぎる。ここから見えるのがおかしい。人間サイズでも違和感が否めない。巨人はともかく飛竜が小さすぎる。モンスターでサイズを測るのは駄目だ。対象物を探した。


 小さいほうのモンスターでも近くに有る木立の梢に届きそうだ。人影は2~3mと見たほうがいい。

 巨人のでかさに恐れ入る。


 つまり、うろついているのが最初に想定したトロルに毛が生えたサイズ。

 ―――倍はあるな。


 10mくらいか?飛竜も似たような大きさだ。

 生物が空を飛ぶには最大がアホウ鳥と聞いた事がある。さすがはファンタジー。それ以上の大きさはタンパク質の限界で筋力では飛べないらしい。タンパク質が出す出力に対し、必要な質量が大きくなりすぎるのだ。プテラノドンも大体同じような大きさ・・・重量になると見られている。

 だから子供のアニメ映画ほど大きくはないのだ。子供を掴んで宙に飛び去るなどはアニメの中だけの話なのだ。


 推進翼を持つと言う画期的な発想を聞いた事がある。主翼に対して補助翼がありその補助翼がジェットエンジンのように気流を弾き出す。それだって、補助翼の動力をひねり出す筋力が必要なのは当然の事。鳥の胸筋は比率にして人間の二十倍あるという。

 あの発想は、浮力を得るだけの羽ばたきをした際に、周辺に与える影響を考えての発想だろう。輸送ヘリのローターが鳥と同じ方式だったら・・・その影響を考えて欲しい。


 あまりのでかさに頭が理論で拒絶してしまう。その理屈なら、10mの巨人は歩っただけで足が折れる。既存の物理法則は通用しないのか。多分、見た目どおり(・・・・・・)の性能・・・能力を持つだろう。小さな人影も近寄らない。


 数では圧倒している。多分ここで最強の勢力はこの辺の存在だろう。そのはずが、力関係がものをいう。あくまで個の強さが重要なのだ。勢力の為に犠牲になっても構わないと思う個体は居ないだろう。その怯えは伝播し、今の状態というわけだ。

 多分、牛の凶暴種でも居るのか?一定の距離を置き離れようとしない。


 奇妙な共生関係。恵まれた海などで大型魚と小魚の群れが共に暮らすそういうケースもある。危険はあるがそれ以上に餌が豊富なのだろう。



 戦力的には軍隊でどうにか?それを戮丸は散さなければならない。

 戮丸は単品ならトロルを倒した。が、あそこには数えるだけでうんざりする量いる。どう片付けるべきか?アトラスパームがあれば話は変わってくるが多分倒しきれない。最悪興奮するだけ興奮させてあっさり死ぬ可能性も否定できない。こちらの気が大きくならないように置いて来たのも理由の一つだ。


 手持ちの道具を見る。


 弩とコンバットナイフ(小剣+2相当)孤独シリーズ。ダガー+1が数本。弩用のボルトが24本。回復アイテムが欲しいところだが無い。MMOならある筈だがこういうゲームには無い。


 薬草は総じて煎じ薬の材料としてはある。この辺はリアルなのだ。親指切ったところで瞬時に治す薬は売ってないだろう?そういうことだ。

 そういえば毒薬があった。ミミック部屋で手に入れたものだ。道具袋に手を突っ込みそこにあることを確認する。いつもどおり冷たいビンの感触が教えてくれる。



 治療と言うのはこの世界・リアルでもこれ以上酷くならない為にするものである。


 包帯や添え木・・・どれも自然治癒を助ける為の道具。治す力は持ってない。それ故に回復魔法は強力で貴重なのだ。


 やることは簡単。これからあの団体にトレインを仕掛ける。あの集団が血眼になって追ってもらう。その過程で数体処理できれば・・・夢のような話だ。要は釣れるかだ。


 虎やライオンのような群れに鼠が一匹大騒ぎで逃げ出して、群れは追うだろうか?

 ―――答えは否だ。


 しかもこのゲームではヘイトは存在しない。知性が代用する。巨人が暴れればその他のモンスターは散り散りに逃げ出すだろうし、中には日和見な巨人も出るだろう。回り込む知能ぐらいはありそうだ。


 少なくとも巨人と飛竜は追って来てもらわないと困る。この両者は城壁を無視できる。城壁が機能すれば戦い方はある。だが、無視できるのは危険だ。その時点で二種類の敵と戦うのは困難だ。

 無視できる敵とそうでない敵。そういう意味だ。


 巨人は背格好からヒルジャイアント―――だろう。原人の様な格好をしている。

 フロストジャイアントになると、武装していて、最悪、魔法を使ってくる。会話が可能で文化も持っている。平たく言えば神だ。トールやオーディンをそれなりの知識で想像してもらえばフロストジャイアントの姿になる。


 ちなみに最近のゲームの斬○剣は・・・違いますね。


 隣の飛竜、腕の代わりに羽があるのでそう判断した。飛竜といえばその形状からほぼ二足歩行かと思いきや、モモンガの様に這っている。蝙蝠が岩場にへばりついている姿と言ったほうがいいか?飛竜をドラゴンの劣等種と紹介するものが多いが、概ねそういう傾向が強いというだけだ。飛竜がいるゲームではドラゴンは飛行能力を持たない場合が多い。最近のゲームでは見栄えがいいからよく飛ばせているが、ドラゴンの背中の羽は退化しているというのが、一昔前の定説だ。


 そして、馬鹿にはしてはいけいない。飛竜と評しているがどう見てもそうは見えない。

 ―――思いっきりドラゴンに見える。ドラゴンの前足に皮膜がついているといったほうが近いだろう。


 目の前が真っ暗になる・・・狩る人間が絶望に浸る訳には行かない。あれが襲ってきたらまず助からない。集めた人間はどういうつもりか?

 確かに、焼け野原にさせて、そこから火事場泥棒をすれば経験値になる。

 それは、許される事ではない。




 気を引き締める。まずあの集団は統一意思を持ってない。そこが救いであり、厄介なところだ。

 敵をガンガンに集めたから、心地いい餌場になってるだけに過ぎない。


 戮丸は逃走経路を確認して少しづつ近づいていく。





 反対側から攻めれば良かった。と後悔した。


 時は既に遅い。既に群れの中心を横断し外延部付近にいる。

 仕方無しに当初の目標だった食事の為に横たわる飛竜の足元にしゃがみ込む。


 ――正気の沙汰じゃないな――


 食事に夢中で気がつかない。他のモンスターも危険圏内という事で近寄ってこない。普通は小型のモンスター――トロルやオーガよりも小さな――が厄介なのだが、戮丸に気がつくとそそくさと消えた。ゴブリンマッシャーの効果だろう。その怯えが同サイズに伝播したのだ。正直助かるが―――目的を考えるとさほど意味は無かった。


 寝返りをうたれただけで即死亡。背中を慎重に飛竜の背に当てた。変化が判り易いようにだ。

 特に反応は無い。恐竜は知覚に時間がかかるという話を聞いた事がある。同様なのかもしれない。


 一息つくと弩の弦を引く。弩は引いたままにしておけば伸びてしまう。それを避けるために普段は外しておく。弦は硬い。物によっては巻き上げ機(クレインクイン)があったりするが、そこまで強力なものではないし、幸いドワーフの戮丸に引けないレベルではなかった。


 次にボルトを装填する。クロスボウの矢は弓矢のそれと違う。硬く太く短く重い。弓のように長いストロークを持たない弩はその分を加速する弦を強化して補う。その際に普通の矢(アロー)では勢いに負けてしまうのだ。

 センターに溝が彫ってあるがそこに乗せただけでは、下を向けた際に落ちてしまう。それを避けるために溝の両脇がクリップのようになっている。そこに矢羽を挟む。


 少し矢を引き戻し、矢の溝に弦をしっかりとセットする。

 狙うために背中に重心を預ける。ヒヤッとしたが律動は安定したものだ。


 狙う相手は最外周部に位置する巨人。背を向けている。耳の後ろ。自分で触って骨の無いところ。ここはつぼの筈。こんな小さな矢で効果があるのか?

 何かしらリアクションは有るだろう。

 「肩こりが取れました」「それはよかった。御代は結構、この飛竜を殴ってくれれば・・・」


 ―――夢見すぎ。


 標的を打ち抜いた。巨人にとって弩の矢など木のささくれ程度でしかない。巨人は首筋に手をやった。それこそ蚊に刺された程度だが・・・


 ―――ビクン。


 ああわかるわかる。何気なく触ったら矢を押し込んだのだろう。チクッとしたのだ。

 振り返る。それを見ながら次弾装填。アニメのように派手な動きで再装填したいが、ここは抑えて・・・飛竜が感付いてしまう。


 結局買ってしまった孤独の眼帯を開け、遠視がセットされている。今度は眼だ。サイクロプスなら的がでかいのにな・・・幸い目玉は二個あるので遠慮は要らない。

 眼を完全に潰してしまうわけには行かない。・・・どちらがよかったのか?


 ―――片目は貰った。


 瞼に刺さる。クソッ。


 つくづく、〈ガルドの手弩〉が良い物だと思い知らされる。あれはハンドガン形である。この弩はライフルやショットガンに形状が近い。アトラスパームの恩恵で片手で打っていたが、今は両手の補助無しでは照準が定まらない。


 先端が重いのだ。


 更に五連射可能。こちらは、引いた後クリップに挟む工程が存在する。非常に使いづらい。


 巨人は流石に気付きこちらに向かってくる。まだ発見に至ってないようだが時間の問題だ。それに飛竜という目標がある。


 時間の許す限り執拗に射撃を繰り返す。何とか片目は使用不能に持ち込めた。それでも攻撃の手は休めない。巨人はこちらを発見した。飛竜も反応したが俺よりも巨人のほうにだ。


 構わず、装填作業を続ける。あと一射イケル。


 最後の一射は思いっきり引いた。トリガーは引きっぱなしで仮想、弓のように構える。弦はクリップの間を通らなければいけない。クリップは手元に開くような形だ。装填しやすいようにの配慮だろう。


 弦の狙いはその開きとレールの隙間。通せば射出される。狙うのはもう一方のまぶた

 眼を潰してはいけない。眉毛と眼の間。眉毛はひさしとしての機能を持つ。その下に出血ポイントを設けたい。

 飛竜の威嚇の咆哮が響く。俺に気付いてないのか?巨人を威嚇する。


 弩は無事にクリップの間を通り、瞼を貫く矢を射出した。


 結果を確認している時間は無い。ナイフを抜くと背の飛竜に突き刺した。ドラゴンとの決定的な違いは鱗が無い所だ。いや、あるにはあるのだが、ワニのそれの様で重なり合って無い。継ぎ目がある。そこに突き刺し転げるように登る。


 痛いのか?痛くないのか判らない。それでも登った。

 戮丸程度の重量では、皮膚がずれないのか―滑らない―立つのはそれほど困難ではなかった。


 ここまで来ると『どうせ死ぬのだ。効率よく死のう』と諦観ていかん・・・そんな心境だろうか?背筋をピンと伸ばし辺りをうかがう。伺うまでも無く大群が眼に入るが、逆にこちらに意識してない奴を探す。


 大群と言う認識では駄目だ。巨人追加1別の飛竜も反応した。

 だが、そんな余裕は無かった。片目を奪われた巨人の棍棒モールが振り下ろされる。


 戮丸は乗っている飛竜のほうに意識を集中する。当然、回避行動をするのだ。こちらもあわせなければ――何とか落ちないように回避してみよう。


 ―――ド


 轟音が耳を貫いた。音の波が全身を突き抜けたのが判る。


 ――こりゃ無理だ。


 揺れる床で何とか弩を装填し、飛び降りたというよりも転げ落ちた。もう一体の飛竜に・・・

 背中に熱風を感じる。戮丸が浮くほどの量だ。たぶんブレス。

 ―――ブレスもありかよ!


 俺を狙ったものなら今頃消し炭だ。だから、確認の必要は無い。振り向きたい誘惑を必死で抑えながら、寄ってきていた3体のオーガの隙間を駆け抜ける。

 駆け抜けるで駆け抜けられたら、苦労は無い。肩に衝撃を感じ吹っ飛ばされる。どうやらすれ違いザマに蹴っ飛ばされたようだ。

 


 ――対したダメージではない。飛竜は!?


 絶望的な光景。もう一体の飛竜は宙に舞い上がる。感動すら覚えるその光景に意識の手綱は放せない。反射的に弩を構え撃つ。


 ――びよん。

 酷く間抜けな感触だった。装填が外れていたのだ。

 次弾―――回避が優先。

 もう一度転げまわった。


 酷い状況だ。飛竜二体に巨人二人その合間をオーガの群れあっちこっちで殺し合いが勃発している。鼠の様に走り回る戮丸。生きた心地など残滓すら残っていない。


 本当に最悪なのはこの鉄火場で我関せずの巨人が一人いる。

 この一体が反応してくれるまで戮丸はスタート地点にも立っていない。


 弩をセットしては外れる。当然だろう転げ周り、吹き飛ばされ続けているのだ。その上、ボルトを挟み込む作業は困難を極めた。

 号を煮やしたクリップを力任せに開くとグレネードランチャーの照準のようにクリップだった鉄片は立ち上がる。


 ―――これで、弩の機能は一つ失われた。

 親指で矢と弦を押さえながら走る。もう回避する余裕も無い。スピードで―――


 ―――前に避ける。


 今はオーガの脇の下。叩き付けた棍棒を潜り真横に立つ。


 射線はクリア。

 巨人が見える。


 照準は時間を贅沢に使って狙いを付ける。

 これは戮丸の持論。


 贅沢とはなんだろう?

 そう考えると照準に必要な時間が割り出される。実は逡巡(しゅんじゅん)――躊躇いの時間が一番長い。スナイパーならそれもいいだろう。戮丸のような乱戦時に急所を撃ち抜くタイプは訳が違う。回避の合間、時間は決まっている。その状況で贅沢に照準をつける。縦軸を合わせ、横軸をあわせる。贅沢といってもこれだけだ。これだけで当たる。逆に言えば、それは無駄な部分の一切の排除。


 躊躇いの時間は一切かけない!


 引き金を引いたと同時に戮丸は吹き飛ばされた。

 別のオーガがオーガと挟むように体当たりを仕掛けてきたのだ。


 時間にして一秒に満たない静止時間。乱戦では致命的な隙。もし判らない人が居たらFPSゲーマーに聞いてみよう。格闘家でもいい。


「きっかり一秒。動きを止めてみて」


 多分殴られる。それだけ致命的な隙だ。



うー。ストックは出し切った。

こことその前の回は平行作業でほぼ完成済みだったんですよ。

追加した。数行を書く時間が無かっただけで(白目)


6/30加筆・校正

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