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AT&D.-アタンドット-  作者: そとま ぎすけ
第三章 唯一つ・・・たった一つ・・・
159/162

032 柿崎一太





「一太くんイッタ?」

失礼なクラスメイトのボディに一太の無遠慮な拳が突き刺さる。

「学べよ、馬鹿なの?」

そう言い捨てながら逆の頬にフックをぶち込み、倒れた相手の胸を踏み越え自分の席に着いた。


———えええ?


 一太は進学クラスの分厚い教科書広げ授業の準備をすると教師が入ってきた。

 教師はこの珍事を把握していたのか「梶塚、お前は廊下に立っとけ。バケツ忘れるな」


———いいのか?


不満を漏らしそうな梶塚に教師は「高校生になってまで何やってるんだ」と独り言ちる。いいらしい。


授業はつつがなく進行した。

多くの学生がそうであるに安息時間の昼休憩。放送部が奏でる校内放送に思い思いの島を作っての昼食。

「《百》の続編出ねぇかな」

「出ねぇんじゃない?」

「なんで?ありえないだろ」

「モンマニでたからな」

「なんでお前はそんなにあっさり塩味なんだよ!いつもいつも」

「飯の間に胸倉が止めてくれ。ワタシジョユウヨ」

フンと田中は購買のハムキュウを喰いちぎる。


「いや、でもやっぱと《百》だろ?アンだけチンチンに熱いコンテンツ無視してVRMMO?何それ?俺たちは戦場を求めている!FPS!F/P/S!レバ剣じゃ僕らは栄養摂取出来ない体なんだ!!」

「でも《重力》だよ?」

「そこだよな。でこの記事!『最先端技術によるボディソニック!!』ってなんだよ!ぼでぃそにっくって?」

「あー田中それはだなぁ。先生が小学生の頃出た技術だ。スピーカーをばらして椅子に仕込んでないすばいぶれいしょんって奴だ」

さすが進学校の教師ゲームの技術にも明るい。いいのか?


「カビ生えてんじゃねぇか!」

「あ~醸してるだけ」

「・・・すぴーかー?・・・ばらす?・・・へっどまうんとですぷれいは?」

「無いんじゃないかなぁ?」


ロールシャッハテストのように表情を変える田中の顔を食事中に見たい顔じゃないなと一太は思った。

「田中、田中」

 と気づいた記事を指さす。

『今!時代は、《音》!!!』

———立体音響技術・・・キューサウンド?まさか・・・ね


・・・


「あの田中君とかいう人、可哀そう」と、どっかで女子がそう言った。



 水飲み場で弁当箱のぬめりを洗い流している時に先生が話か掛けてきた。

「カアイソウに」

「重力を信じられない奴に言葉は不要です」

「友情は無いのかな?」

「先日衰退しました」

「教師としては・・・混むんだよね」

「絶対サーバー2・3回落ちますよ。まだ落ちてないだけで」

「2・3回で済むかな・・・どこかのゴブリンにウチのワイバーンが落とされてなければ教職に殉じるのも吝かではないのだが」

「電離層まで登れる性能で地を這うゴブリンに加減しろと?なんであんなところに?」

「苦労したから見せびらかしたかったんや勝手10分も使ってない」

「更地になりますよ。リンドブルグでしたっけ?」

「苦労したんだよ・・・なんで火薬樽持ちのゴブリンなんていると思わねえじゃん」

「改心のファインプレイでした」


「ちくしょう・・・」

「リカバー利きますか?」

「・・・無理・・・諦める。には時間が足らない」

「でしょうね!(良い笑顔)」

「くっ」


「あー先生は・・・」

「諦めきれないんですね」

「お金がいくら飛んだとッ」

【至福】


「畜生」


先生は思った。生徒の喜びは教師の喜びだが、箪笥の角に足の小指をぶつけて粉砕っ骨折したら大手を振って学校休んでゲーム三昧。断じて否である。

柿崎一太の不幸は教師の喜び。


オカシイ。スコシツカレテイルヨウダ。


「早く帰ってモンマニをやらねば。疲れた時はモンマニが一番だ」

「んな訳ないでしょう?」

「どうしてそんな事言うの?」

「疲れてるときはしっかり休む。睡眠不足はデバフにしかならないんだから体大事に。今の評価が一日二日でひっくり返る事ないからしっかり休んで俺は話しませんから安心して、良いもん食ってエナドリ飲んで体調万全にしてください」


「ああ、そうだな」

 社会人として普通にブレーキが効きづらくなっているかもしれない。アレはそれくらいショッキングな事だが妙に「躁」状態に感じる。全部消し飛んだから、ここらで無理に休むのも悪い判断は無いかもしれない。


しかし、『優しい言葉は全部嘘』という言葉がある。


「あ、あのゲーム『漕ぎ』があるの知ってました?」


【不純物混入】




「お前は悪魔かあぁぁぁぁッ!!!」

「YESッ!!!」




ゲームにおける漕ぎって難しい。やり方聞いて練習して一生懸命やっても「こげてないよ」っていうのが日常茶飯事。

デマでも判別が難しい。

ぶっちゃければ一太の情報は正しい。ただ、積載重量を多少成長させ、過積載状態で拾う行動をキャンセルする事によって速度が微増する。入力を成功させ続ける限り青天井で速度が上がる。だが、舵角が少しでも深くなりすぎれば即座に失速。それこそ空走距離をたっぷりとれる状態で先回りにしか使えないような技術を『有るよ』って情報だけ伝えるのは悪魔の所業と言わざる負えないが男子高校生ってこんな感じだったよね。『人の不幸はわが身の幸』


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