031 モンスターズ・マニフェスト怪物の証明
「よっく出来てるなぁ」
スレイは舌を巻いた。
FPSは極論すれば、ガッチガチに出来上がっている。発展の余地がないくらいに。
そこで発展途上の時代にピントをあわせ、かつイレギュラーも忠実に再現する事によってバランスとっている。
ゲームであるからこそ無視されている不具合は山ほどある。
戦闘の衝撃で乗り上げてしまい擱座。戦車が駄目になるときの典型的なパターンだ。これがゲームになるとほぼ無いくらいの頻度に落ち着く。
だが、それは逆にファンタジーという事もできる。
「うっわ、自軍の指揮所ふっとばし・・・ビニル袋の稟議書がとおった!?」
わからずやが居たようです。風通しが良くなっちゃってまぁ。
軍事クーデター?ビニル袋の稟議書を通すために?FPSだよ?
「うわぁ、うわ、うっわあぁ。やってみたいこのゲーム」
いろんなストレスがすぽんと抜ける気がした。
スレイバインは情報共有化のために自分とゴブリンに【記憶同一化】魔法を行使した。
今のゴブリンはスレイバインでありゴブリンでもある。
この魔法は空間に向かってかける物であり、その性質上非常に危険な試作魔法だ。
もちろん、魔法開発などはスレイには出来ない。
スクロール化の技術は《クラン:精霊雨アルブスレイン》のナハトによるものだ。
スレイはゴブリンを見つめ思い出した。
自分が城陽高校一年、柿崎一太だったことを・・・
「目黒宗助 KO大3年生・・・よし、思い出せる」
スレイと呼ばれるが正確にはスレイバイン。自己をしっかり持っていないと持っていかれる。
心や考えも筒抜けなのは困りますね。一太も同じ心境らしい。
ヤバいどちらの感情かわからない!下手に共感を覚えるような思考は危険だ!
慌てて呼び退るが意味がない。
二人は同じことを同じように脅威に思う。
貴方は思い出すことに注力してください、私は見ることに集中します!
「あなたを必ず助けます!」
その言葉が自分の胸に突き刺さる。
恐怖に負け助けるはずの味方真っ黒に感光するまで焼き払った苦い疼き。消し炭になって倒れた巴。
助けれた事は一度も無い。
だからこそ助けたい。
もう助けないと一歩も進めない。
助けさせてくれ。
スレイの目には胸に拳を当てまっ直ぐに自分を見つめるゴブリン《じぶん》が映っていた。
うっわきっつい。文字が記号の羅列に見えてた。意味ワカラン。ミスタイプ、多すぎ5倍はキー押してる。
これに自覚できない抜けがいっぱいあるんだろ?うんざり。
あとでゆかりさんに読み上げてもらって精査します。してからあげろって?無茶ゆうな。