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AT&D.-アタンドット-  作者: そとま ぎすけ
第三章 唯一つ・・・たった一つ・・・
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007 田村大《タムラマサル》は愛煙家ではない

◇007 田村大タムラマサルは愛煙家ではない

 



 田村大タムラマサルは愛煙家ではない。

 では喫煙所にいるのはおかしな事だろうか?


 工場というよりは学校を連想させる建屋の二階、階段脇の喫煙所は作業員の休憩所であった。

 当然、休憩には食堂も使えるが、百人以上が収容できる食堂に時間をずらして休憩を取る派遣の人間には居心地が悪い。喫煙所なら適度な狭さに飲み物の自販機がある。

 椅子が無いのは、時間によってはごった返すからであり、居場所が無く時間の無い派遣員はここで休憩を済ます。

 何人かは地べたに胡坐をかいている。禁止事項の一つだが・・・


 田村は虚空を見つめる。

 しかし、その行動は別段特異な事ではない。ほとんどの人が手に持つ端末を覗き込んでいる。ニュースを見ているのか、ゲームをしてるのかうかがい知ることは出来ないが、こんな場所にはよくある風景だ。

 短い休憩時間。それを何かしらの形でつぶしながらこなす。


 田村も同じ事をしているに過ぎない。ただ、田村のものは世代が違う。携帯端末などはすでに無い。首に仕込んだジャックの機能で全てがまかなえる。


 この機能は補助的な物でしかないが、実にありがたい。

 問題になるのは”音”なのだ。休憩時間とはいえ勤務中に音声を流すのははばかられる。かといってイヤホン使えば、外の音を聞き逃す。


 無音で音楽を楽しめる。


 そして外の音の聞き逃しもない。音も映像も全て脳内で再生されるのだから・・・


「ダイさん?何やってるんすか?」

「ん?動画見てた」

「やっぱそれ、イイッスカ?」


 田村は声のほうに視線を向ける。声の主は同僚だ・・・派遣社員で同僚も何も無いが、ほかに言いようが無い。友人ではないが、嫌いでもない。よく知っているようで何も知らない。そんなありふれた相手だ。


「まぁ、高いだけはあるよ」

 そっけなく答える。年は一つ二つ下で、入って3ヶ月ぐらいのベテランだ。ちなみに田村は一年の大ベテランであったりする。もう指導する必要はない。問題なく機能している。もちろん、知っていたほうが好ましい事柄は山ほどあるが、そこまで男に求めてないし、第一、筋違いだ。

 同じ仕事をし、同じ給料を貰う。


「で、どんな感じなんすか?音とかもちゃんとしてるんすか?」

 男は興味があるようだ。というよりもこの時間帯、顔ぶれは変わらない。さすがに暇つぶしにも限度がある。

 だが、田村にとっては耳にたこが出来る内容だ。最後は「・・・いいなぁ」で締めくくられる話だろう。


「音はちゃんとしてるし・・・携帯・・・いやパソコンを体にねじ込んだようなもんだから」

「何でも出来るじゃないっっすか!なにみてるんすか?エロ動画とか」

「エロは見てないけど、何とはいい辛いな・・・5窓開いてるから」


「ご、ごまっ、5窓?」


 パソコンでウィンドウを五つも開けば画面が埋まってしまう。その常識からだろう男はひどく驚いた。

「掲示板とかも開いてるから、そんなたいした事じゃない」

 情報量的にという話だ。実際にパソコンでもそれぐらい開いてる。ただ裏画面ということになるが。


「はぁ~すごいっすね。じゃあ、裏番組なんかも・・・」

「そりゃ録画して後で見る。話がごっちゃになってひどい目にあうからな」

「・・・ちっさく無いですか?」


 田村は男が根本的に認識違いをしていることに気がついた。


「全部フルスクリーンで見てるのと一緒。だから、ドラマなんかは二本同時には見れないんだ。全部認識してるから」

 認識の強いものに集中が行ってしまう。いうなれば二冊の漫画を透視しながら読むようなもので、説明は非常に困難だ。ただその認識にも化け物が存在する。最近それを痛感した。


「判るような。判らないような」

「わかんなくていいよ。うつ伏せで眠っていても見られるDVDプレイヤーぐらいに思っておけば・・・」

「それって地味にいいっすね」

「おかげで、家に帰ったら寝たきりだ」

「体がだめになりそう」

「その分、体動かしてっから・・・」

「ああ、壁登りやってるっていってましたよね」

「ボルダリングな」


 実際はそうでもない。ゲームを起動すれば低周波治療器と同じ理由で、ゲームやテレビを見ているよりはるかにカロリーを消費する。その上、ゲーム中の間食やジュースもゼロになった。いやおうも無く痩せるというもの。

 体が軽くなり、筋力も徐々についている。ボルダリングはその向上し続ける身体能力のテストの位置づけだが、その事は黙っていることにした。


 興味をもたれても正直困る。

 同好の士が増えることは原則的には歓迎すべきことだ。だが、仕事の付き合いをゲームの中でまで続けたいとは思わない。


「そろそろ時間だ。戻ろう」

 そういって田村は話を切り上げた。男は何とか安く手術を済ませる方法が無いものかとぼやいている。

 今までは儀礼的に羨む言葉を残し終わるものだったが、現実的な話になっているんだなと感じた。


 つまり、この時点では田村にとってもまだ人事だった。




◆ ボルダリングジム




「調子いいじゃないですか」

 黄色い声が耳に甘い。ちょっと前の自分だったら、だらしない顔で受け答えするのだが、今はちょっと食傷気味で困る。

「ありがとう。なじんだのかな?今日はあと2・3セットこなしてあがりますよ」

 ちょっとそっけなかったかな?とはいえ新人インストラクターの女の子だ。客をほめるのは当たり前。彼女にとってもお仕事で自分は客だ。互いに不快にならない程度でいいだろう。

 田村は宣言どおり、軽くこなして帰るつもりだったが、それは次の言葉でもろくも崩れ去ることになる。


「ポスターとかって興味ありません?」

 ???

 来年のポスターでも余ったか?若干時期がずれているが・・・しかし、貰っても困る。普段使いのものでも貼るスペースが無い。趣味が趣味なので、出れば買ってしまう。車にも何本か積んでる始末だ。とても見せられない内容なのだが・・・


「・・・いや、いいよ。余っているくらいなんだ。ありがとう」

「そうじゃなくてですね。ポスターのモデルになるつもりはありませんか?」


 青天の霹靂だった。田村は写真写りが良い悪い別にして、貼ってまで見つめたい容姿ではなかった。それだけに意外すぎる申し出。

 少し、気がよくなったが、自分の写真が使われたポスターを見て入会したいとは絶対に思えない。永久保存版黒歴史確定。

 さすがに自覚のある馬鹿でもそんな地雷は踏まない。

 悲しいことにこの時点でこの話が自分に振られた理由がわかった。


 田村は痩せた。その数字、実に30kg。それでも今すっきりしてる程度のシルエットだ。元は押して知るべし。自分でも劇的に痩せたと思っている。今までの衣服は全滅だ。

 ジーンズに至ってはあまりにも皺がよりすぎて、ベルトで閉めても腹が痛い。


「痩せた理由はここじゃないから・・・詐欺だよ」

「・・・そう、ですか・・・」

 インストラクターは落胆を隠せない。事務所で覗いていた人間も肩を落とす。

 そりゃ、30kgも痩せた実績を前面に出せば集客力は望めるだろう。彼らにとってはとんでもないビジネスチャンスだったわけだ。


「やっぱり、痩せた理由ってそれですか?」

 首を指差すしぐさを見せる。

「興味あるの?」

「それはありますよ」

 インストラクターなんて人種はダイエットとは無縁の人生を送っていると思っていた。いや、必要があっても、成功させて今に至るわけだ。

 現に今しがた見た首筋も細く健康的でダイエットの必要性など見つけられない。


 ふと、考えが至る。彼らは30kg太る愚など冒せないのだ。自前で用意するには30kg太るとこから始まる。実に最低なチャレンジだ。絶対に体を壊す。

 それを思えば気の毒なことだ。とはいえ、ポスターモデルは勘弁して欲しい。


「これやっても痩せないよ」

 田村は真実を告げた。「え?」と驚く。ちょっと彼女の名前が思い出せずに聞くと「水橋です」と抵抗無く答えた。


「俺はね、水橋さん。毎日ペットボトルを空にするような生活を送ってたんだよ。ネトゲは妙に口寂しくてね。びっくりする量をぺろりと平らげるんだ。それだってやってる時間が異常で休みなら10時間ぐらい普通にやる。そんな生活は太って当然だ」

「大食漢なんですね」

「そういう訳じゃないんだが、運動してるほうが腹減らないし。まぁ、そんなことはいいや。で、そんな人間が間食をピタッとやめて、運動開始したら痩せるでしょ?」


「それって・・・ここで痩せた事になりませんか?」

 田村は困った。以前の自分にゲームと間食をきっちりやめ運動を強要すれば間違いなく痩せる。そんなことは絶対にしないが・・・


「間食は止めてないんだ。むしろガッツり食ってる。ただ、ゲームの中での話でね。リアルが売りのゲームなんで食ったらちゃんと味もするんだ。胸焼けだってする。それでもゲームで食べたからって食事の代わりにはならないでしょ?」

「・・・もしかして、そのゲームの中なら食べ放題なんですか!?」

 妙なところに喰いついた。


「・・・あ、ああ。ゲーム内でお金とかは支払うけどね。軌道に乗れば大体喰える」

「・・・ステーキとか、まがい物じゃないん・・・」

「ステーキはモンスター化した牛が居るんで、ほぼ毎食だな。ほっとけば被害が出るし、家畜には危なくて使えない。殺すなら肉をとったほうがいい」

「おいしいんですか?」

「筋っぽいのに油たっぷりであんま美味くないけど、腹はいっぱいになる。宴会じゃ奪い合いになるんだけど必ず残るそんな味」

「判る気がします・・・」

 水橋の顔は女子にあるまじき、よだれが出そうな顔で、田村はちょっと引いた。


 ちょっとだけだ。


「もしかして水橋さん・・・」

「はい、お肉はずいぶんとササミ以外食べてません・・・」


 ササミは運動選手の代表格の主食だ。まずいとは思わないが、それしか食べられないとなれば気の毒に思う。誰だったか女性で大量の脂身や鳥皮を食べてた。当然見ているだけで胸焼けしそうなそれを嬉々として食べてたのが印象的だった。

 そういう事情か・・・


「本当に食べられるんですね!?」

 水橋は念をおす。


「・・・ま、まぁな。だから、こっちの食事はレタス一玉とかで済ませられるんだ。何でも良いんだ空腹感がまぎれれば・・・」

「それは・・・痩せますね」

「だろう?以前は安いもので済ませていたけど、バランスが悪ければ具合が悪くなる。最初のうちは極端な食生活だったけどバランスを気にするようになった。腹持ちのよさは必須条件だけど。ここだってそうさ、自分の体がどうなってるか知りたいから」


「それが田村さんにはボルダリングだったんですね」

「まぁね。あっちの体は冗談抜きで超人だから、自分の体がその何パーセントかは知っておきたいよ」

「ゲームの中ですからね。やっぱり屋根の上まで一っとびであがれたりするんですか?」

「そりゃ無理だ。その辺もリアルでね。せいぜいオリンピック選手並みの体ってところかな。だから気づいてない奴も多いよ」

 

「じゃあ、そっちでボルダリングやればいいじゃないですか?」

「・・・やってるよ。この間、100mくらいかな断崖絶壁を鎧着て補助具無しで踏破した」


 へー。そんな声が聞こえてきそうな顔だ。俺だって「42.195km走破したよ。ゲームで」といわれれば同じ顔をするだろう。


「まぁいいや。お水ちゃん」

「お水ちゃん!?」

 水橋は反論しそうな顔だがそれをさえぎって田村は言った。


「多分、偉い人かな?こっち睨んでるよ?」 

 水橋は慌てて事務所に走っていった。


 意外なほどに時間を食ってしまった。それに腹も減ってきた。満足する為のという意味でだ。

 こっちの食費はひどく高い、シリアルでも買って帰るかと帰途に着く。


 が、・・・・


「田村さん。お食事など一緒にいかがですか?」

 田村には聞きなれない言葉を水橋はかけて来た。




◆ 子連れ狸亭にて




「・・・で、スルーしてきたって訳か?」

 ほかの面々は悶絶している。


「だってしょうがないだろ!話の流れ的に食事と酒はこっちで済ませてるんだから!?」

「世にも珍しい女子からのお誘いをンな理由で断ったと・・・ホモか?」

「いや、マジでそんな雰囲気じゃ無かったってば」

「そりゃそうだろ?・・・徹底して免疫無いな。次はちゃんとしたお店につれてってやんな」

「撒き餌かよ。なんかやだな」

「この潔癖童貞大将は・・・」

 大吟醸の青臭さに仲間の揶揄が飛ぶ。


「・・・あの次郎坊・・・さん」

「なんだ?」

 大吟醸は次郎坊にかしこまって聞いた。経験上大体くだらない質問だ。


「こういった場合、どういったお店に・・・やっぱりフランス料理?」

 ラスティナインの面々はひどく重いものを背負った気がした。


「なあ大吟醸・・・そこまでその子嫌いか?」

「は?」

「まぁ、マジレスしてやるか。ハンバーガー屋でいいんじゃねぇか?」

「そりゃひどいwww」

「くっ付く気がなくて話だけならジムの帰りだ。適度に落胆させていいんじゃないか?ラーメン屋でも可」


「あ、ありえねぇ・・・最低でも行き付けの店くらいは・・・」

「大吟醸にそんなものがある人種に見えるか?ムシュ。外食事体しないぞ」

「そんなはずあるかよ。一つ二つあるよな?」

「・・・ラーメン屋と牛丼屋は除く」

 大吟醸の口からでかかった言葉は次郎坊の呟きで消えた。


「・・・何喰って生きてきた?」

「ラーメン屋と牛丼屋とコンビニ飯で事足りる。まぁ定食屋くらいは抑えてるもんだが、それじゃ変わらん。そりゃ知ってるくらいは知ってるだろうが通いはありえんな。金銭面的に」

 ムシュフシュの疑問を次郎坊が見てきたように話す。大吟醸の表情はそれが正解だと告げていた。


「まぁ、いわれてみればねぇ。僕も無いかな?」

「確かにそういわれると無いかもしれませんね」


「同士!」


「僕は営業なんでお昼はあっちこっちで、通ってる店が無いってだけなんだ」

「居酒屋くらいは抑えてるよ」

 ノッツとマティの裏切り。


「やっぱり俺の気持ちがわかるのは次郎しか居ない!」

「やだなぁ。・・・でもさ、それを俺に聞くのが間違いだってわかんない?」

 一同は深くうなずく。ここでの生活を見る限り果てしなく朴念仁だ。


「やっぱり、こういうのって女に聞くのが一番じゃないのか?」

 ガルドがコップを拭きながら会話に参加する。彼もその辺は疎そうだ。


「それはやめたほうがいいじゃないか?そういう話を振ると自分が他人の財布で食べたいものを羅列し始めるから、実際無理して高価なものを用意しても・・・重いし・・・」

 ノッツは大吟醸よりましらしく、まともな意見を返す。


「そうか?」

 そりゃ、世界を救った大英雄と大吟醸では桁が違いすぎる。

 大吟醸が首を千切れんばかりに縦に振る。


「だから、無難なところでワンチャンありそうな奴」

「えらい限定的だな。目薬もって、スクリュードライバーかカルアミルク出すバーにでも誘え」

 それを聞いてムシュが顔をしかめる。「古ッ」と唇が動くのが見えた。


「で、その目薬は何のために?」

「こっそり酒にポチャンと、これで相手は潰れる・・・」

「あんたがそれ言うな!」

 次郎の首を絞める大吟醸。


「――――殺されるかと思った」

『ダウトッ!』


「ま、冗談は置いておいて、誘われたんだろ?正直に言っちまえよ?」

「正直にって?」

「見栄張ることないじゃん。『女友達に誘われて食事なんかした事無いからいい店無い?』って・・・それで済むだろ?それに割り勘にもしやすいし」


「女に金を払わせるのはねぇな」

「俺らみたいなブサメンはおごりを嫌がられるケースもあるんだよ。それにジムに通ってジャック端子で金銭面で苦しいって言えば、今回のケースなら通るだろ。相手だって食えない店に連れて行かれるよりいいさ」

「そういうもんか?」

「こいつが迸る女スキー粒子を押さえ込めるとも思えん。本人にまったくその気が無くても普通に警戒される」

「不憫だな」

「リーズナブルだろ?」

 次郎と大吟醸の返答に二の句が告げないムシュフシュ。


「喰えないものって・・・?」

「その娘ダイエット中だろ?それに接客業だ。ニンニクたっぷりの料理なんて仕事に触る」

「そんなものは常識・・・」


 ポンと手を打つ大吟醸にムシュフシュは頭が痛くなった。


「まぁ、最悪のケースは高い料理屋に連れて行かれ『これが美味いんだ』ってニンニク料理出されて、勘定の時点で『割り勘でよろしく』っていわれたら二度と一緒に食事に行かないな。俺でも」

「そんな馬鹿がどこに・・・」

「男ってのはニンニクが無条件で好きなんだ。おい大吟醸ニンニクは?」

「マシマシ」

 ――――闇が深い。


「ガイドブックを見て高い料理のどこがいいのか判らない。そんな状態でニンニクの文字には間違いなく食いつく。変に見栄張ってるからデートのガイドブックじゃなくて美味いもののガイドブックなんぞみて、そこでニンニクって文字が載ってれば普通に選んじまう。ま、そんな馬鹿なことにはなら無いだろうが・・・大吟醸どんなガイドブック買ってきた?」

「男の美味いもの百選・・・」


「言葉もでねぇや・・・」


 コンビニじゃこれしかなかったとの弁明をやり過ごす。次郎の与太話がにわかに現実味を帯びてきた。


「――――で、ちゃんと説明しろよ」

 聞いた感じじゃ色っぽい展開は望めそうに無い。『落胆させて』といったがそれは食事の内容に関してだ。

 ここで言ったのはこのゲームの危険性。シャロンのケースもある。強い、需要がある、なんて理由で職業を選択すれば、とんでもないしっぺ返しが待っている。


 それでなくとも大吟醸は厄介ごとに首を突っ込んでいるのだ。

 説明に一応の納得は・・・してないな。だが、大吟醸は店を後にした。彼にはやることが山積みなのだ。




「――――あいつ大丈夫かなぁ?」

 ノッツが心配する。

「ガラじゃないが上手く行く事を願うしかないな」


 と次郎坊が答え「どういう脳ミソしているんだ?」とムシュフシュがいぶかしむ。

 今は大吟醸に恋人ができるのは賛成だ。そうでなければあいつの心は焼き切れてしまう。だが、そんな状態だからこそ、見ず知らずの女性にほいほい付いていく大吟醸の精神構造を疑った。


「多分、留守だな。条件反射だけで生活出来そうだし・・・」


 次郎の言葉には不思議な説得力があった。




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