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AT&D.-アタンドット-  作者: そとま ぎすけ
第二章 ドラゴンサーカス
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038 ザ・性転換!

 ◇038 ザ・性転換!




「あるよー」


 希望の声が響いた。


「あー、それで注意事項なんだが、これは中毒性があるのか一回しか効かない。免疫抗体が出来るんだな。で、スイッチで切り替わるランマと永続性のモロッコがあるが・・・」


 ――殴りたい。


「そのランマってのは?」

「正確にはある条件下で性別が変わる体質になってしまうんだ。使ったら、もう元には戻らない」

「お湯が男で、水が女か?」

「よく知ってるな。その通りだ。お前の深読みはここに至っては神懸(かみがか)ってるな」


 ――ノーコメント。


「元に戻らない方を下さい。あとニイタカヤマもありますか?」

「おいおいどうしたトーレス・・・ああ分かった、個室の方に入りな。ここじゃ物騒だ」


 トコトコと入っていくトーレス。ずいぶんご機嫌である。


「嬉しいもんかね?」

「―――そりゃな」


「孤独シリーズって手に入るか?」

「そりゃ・・・ギリで一個ずつ、慟哭が無いが誰か買ったのか?」

 ――ハーイ


「全部貰おう」

「怨嗟と象徴と怒りね」

「あと、小剣も作っているはずだ有ればそれも」


 スクロールを開いて換装すれば早着替えが出来ると、ガルドに教えてもらった。

 先日の更衣室はいったい・・・

 余談であるが、ニイタカヤマは本人による手作業でしか着脱できない。



 ◆ 匠、こだわりの一品



「モロッコ飲んだら顔も作り変えてな」

 体形も変更できるらしい。そこまでリセットできるのだ。


 髪は本体準拠のストレート腰まで、これに異存は無い。気に入ってるからしている髪型だし、ボリュームが無いのがコンプレックスだったが、フワフワの髪で戦うと考えると・・・なれているのが一番と結論した。髪色は変えたくもあったが、リアルで会って違いに愕然とされるのがいやなので黒。

 ほんのちょっと青みを足した。


 身長は170なので見栄を張って165にした。身長が変わると歩行も困難といっていた。


 問題は胸。ちょっぴり小ぶりなのだ。大きくするともろに影響出る。この世界ではブラはない。

 ニイタカヤマがあるじゃないか?

 どう見ても支える構造じゃないんですが、リアルだったらベロンと剥けるよ。


 見得はパッド一枚分で・・・常時装備してるツケがここに出た・・・

 まだ薄い・・・ああ、寄せてあげる・・・効果あったのね・・・

 見得増量。

 ・・・

 ・・・

 ・・・

 更に増量。

 まえにオックスにもう一声って評価されたし・・・


 お尻とウエストは問題ない。運動しているので余り苦にはしていない。

 鏡を見る。


 ・

 ・

 ・

 ・・・・・・・・・・微調整。

 胸が増量されたのでラインが崩れた。アンダー付近を増やしラインを整え、屈伸。


 ――何この皺!

 調整調整。

 ――お尻が異常に!

 調整調整。

 ――太ももが原因ね!

 調整調整。

 ――エロスが足りない地味ボディ…お尻をツンと上げて…ああ、笑窪が出来た。

 調整調整。


 微調整という名の大改造。大幅にラインは変わってない。本体のスタイルは良いのだ、ただ、胸が小さいだけで・・・その小ささが美しいライン作っていたということを失念し、見栄を張ったから大改造に至った。


 モデラーや絵描きが一度は通る道。


 もう何が美しくて醜いのか良くわからない。ただ、本体というお手本に慣れ親しんでいたからこそ・・・


 いい体が出来上がった。

 

 ――おお揺れる。

 確かに振動とは違う揺れを感じた。それはささやかな物で、本体には決して無かったもの。


 下着を脱ぎニイタカヤマを装備していく。ふと気づく・・・服が無い。

 ここにあるのはプレートアーマー・・・

 

 ――着てみる。

 確かに女性らしい柔らかい線が出てきたが、男基準に作られたアーマー。こだわりのヒップラインはプレートで隠れてしまう。ウエストも、バストに至っては薄いふくらみが、有るだろうな程度しか分からない。

 ニイタカヤマをつまむ。

 ――これも服。






 その前に名前だ。この格好でトーレス名乗るのは・・・元の名前と懸け離れていない名前で女戦士。出来れば他の人とも違和感の無いものが・・・


 ・・・巴御前・・・


 戦国の便女。これは便利な女という意味だ。性的奉仕もしたらしい。その必要性からおおむね美女。


 美女の語源とも目される。


 便利というのは戦場に置いて戦い、身の回りの世話をし付き従った。こと巴御前に関しては美女と明記され一騎当千のつわものという記述も残っている。


 そんな女でも決死の戦場に連れて行くのは武門の恥らしい。逃げろと再三命令があったのにもかかわらず、同行し最後には「最後の奉公にございます」と敵将の馬の首をねじ切り落ち延びた。


 びっくりスーパーガール。女傑と呼ぶにふさわしい女性だ。


 これは物語上のことで実際に居たかは分かっていない。源平合戦で平家サイドの記述である。源氏サイドの記述にも似たような事が書かれている。(タイトルから)

 当時の風俗から戦場に遊女を侍らす可能性も在ったらしい。うがった見方を見れば、窮鼠猫をかむで、戦働きをした女を男集が脚色したのではないか?


 ただ、現代において事実も脚色物も関係が無い。どちらも不確か、ならばその物語を読んだものの中の感動こそが真実とはいえまいか?


 と、言う事で妄想STOP。




「巴にしよう」


 あこがれるに足る姿だ。音も似てるし、戮丸・次郎坊という重要人物も居る。実際、このゲーム史上では歴史に残る戦いをしているし、していくだろう。


 ――そこに並ぶ名前でありますように。


 ――苗字はどうしよう?芝瑠璃?いくらなんでも・・・そうだ。木曾にしよう。

 巴御前は木曾義仲の愛妾であって妻ではない。それは知ってる。だからこそ、これだ。


 木曾巴。名前は決まった。ガルドに頼んで改名してもらった。



 部屋を出るときに迷った。これも服、あれも服・・・気づかなかったドジッ娘アピール・・・

 ガルドは何も見なかったという顔をたのんで・・・。


 ――私のスタイルじゃないな。――恥ずかしいし。

 

 現状、倍の防御力を持っている。空調機能が付いたせいか格段に着心地はよくなった。ヘルメットは要らない。これで着けているのと変わらないというのは凄い。

 ガルドにヘルメットと衣服を預けた。ちょっと抵抗があったが女の子を呼んでもらほどでもないと思い差し出す。ガルドは普通に受け取ってしまった。


 下着は薬を飲んだ際に女性用に代わった。スパッツのような布切れだ。

 インナーウェアも買おう。男のときは鎧に内張りがあったし、下着で十分だったが、今ははしたない。楽な格好をする際にいきなりニイタカヤマは流石に女の子ですし。


 扉を開けて外に出た。



 ◆ お披露目(W)



「次郎坊さん」


 次郎坊は声をかけられ振り向いた。なんとなく立ち去りがたかったし、色々なプレイヤーが質問してくるのでそれの受け答えをしていた。ただ、そろそろシャロンがINするなぁと考えてはいた。


 振り返るとそこには青年が立っていた。丁度戮丸を細くした感じだ。


「俺もサブキャラ作っちゃいました」


 えへへ、と笑う。その声に聞き覚えがあった。


「おまえ!オーベルか!」

「そうです。このキャラはウォルフっていいます」

「疾風?」


 へへへと笑って答えない。


「次郎坊見てて思ったんです。空手をそのまま使えるキャラクターっていいかもしれないって」

「戦士やドワーフじゃ被るか・・・それでシーフって、能力値を調整したのか。なるほど、それにしてもファーストダンジョンよく抜けたな」

「必死でしたよ!それより、この体の性能の良さにビックリです」

「そうそう、関節は異様に柔らかいし・・・」

「わかるわかる。ベストコンディションを軽く上回って、反応もいい」

「そうです。おれっ超興奮してきて、前宙なんてリアルじゃ無理なのに、ゴブリンの頭を飛び越えて――」

「うんうん。二枚蹴りとかも出来たりしてな―――」


 ――次郎坊さん


「どうやるんですか!」

「俺のは似非だけど・・・ってか本物しらんし、Sの字を書くように蹴り上げるんだよ。一動作で」

「なるほど!」


 ――次郎坊さん


「下段と上段にしか当たらないし、条件を選ぶんで使えないが――なぞるだけだ」


 威力などは期待できないし、奇襲技としても効果が薄い。それでもやりたくなるのが人の(サガ)



『次郎坊さん!』



「!――なんだ。トーレスか驚かすなよ・・・」


 (え?)


「ああ、トーレスも女の子になったんだ!よかったよ」


 (え?)


 反応は普通。


「あ、あの何か無いですか誰だか分からなかったとか、綺麗でビックリしたとか・・・」



 ―――半泣きである。



「いや・・・予想通りで――なぁ?」

「本体に似せたんだね。だから驚かないよ」

「そんな似てるのか!?」

「似てる似て無いじゃなくて、雰囲気がよく出てる」

「どっちが美人?」

「うーん。ぼくは本体の方が好きだなぁ」



 自信作。崩壊。――涙が出てきた・・・



「まてまてまてまて、俺はこれくらい美人だろうなぁって想像してたからであって。ホント綺麗だ」

「もしかして次郎坊さん素顔見たの?」

「ああ、ありゃあないわ。下手にイケメンなのが更にたちが悪い。悪い夢だって自分の頭蓋叩き割りたくなったよ」

「――わかる」


 そんな言葉は慰めにならない。めちゃくちゃ苦労したし、自信作だった。褒めてくれると思ってた。


 男衆のフォローをせねばなるまい。

 

 巴が苦労したのはボディライン。プレートでは見えないし、見えたとしても何と褒めればいい?

 ないすばでぃっ!とは思っても言えない。


 顔は既製品をちょっと弄っただけ、目尻に泣きボクロを追加したり、顎のラインを少し細くして面長に目尻をほんの少し下げる。普段のメイクで気にしてる部分を修正したぐらいだ。


 だから、雰囲気がよく出ていると評したのだ。今の巴の顔は既製品の美女に同じメイクを施した程度、普段から人となりもセットで見ているウォルフには、本体に軍配が上がるのは当然の帰結。


 絵心のある人間が見れば、よくあることと慰めてくれたかもしれない。

 《作り手のこだわりは、得てして理解されないものだ》


「名前はなんていうの?」

「――木曾――巴」


 彼女は歴女だ。だが、本人にその自覚薄い。二次創作ではなく本物志向の、いうなれば――真性――。その彼女がキャラクターにその名前を与えた。


 自信と覚悟の表れだろう。


 ―――悪い事をした。

 なまじ本体が美人(自覚が無い)で、美声の持ち主だから尚更たちが悪かった。



 

 


 次郎坊がそっと詫びの品物を差し出す。


 ――孤独シリーズの眼帯とマント・・・


「次郎坊さんそれはいけない!」


「へっ?」


 次郎坊の顎から頭頂ヘかけて、巴の拳が駆け抜けた。

 もちろん次郎坊は光へと帰って・・・




20160206 編集加筆

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