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AT&D.-アタンドット-  作者: そとま ぎすけ
転章 未定
118/162

おや?




「そんなにやりたかったか?」

 そう言ってムシュフシュのジョッキに酒を注ぐ。

「いや、まぁ、そのな。ゲーマーやってれば名作って言うのは聞こえて来るよな」

「まぁ、判る」

 出来のいいゲームは噂話に小耳に挟む。どんなゲームかも想像が付く。


「そんな、すれ違うタイトルは誰でも一つはあるもんだ」

「だよなぁ!あるよな!」

 やりたいが出来ないゲーム。アーケードなら最寄のゲームセンターに入荷して貰わないと出来ないし、コンシューマーならハードが違うと出来ない。最近は大体どこも同じタイトルをリリースしてくれるが、昔はハードメーカーがソフトハウス抱えていた事情からその辺の差はでかい。

 当然ゲーマーは自分のしたいゲームを求めるが、どうしても出来ないゲームがあったりするものだ。


「おまえも有るのか?」

「あるよ。山ほど・・・ファンタ○ーゾーンに、R-T○PE、ガン○リフォン2、ジェ○サイド2・・・山ほどあるよ」

「R-T○PEはやりこんだんじゃ・・・?」

「大人になってハードとセットで買ってきてやり込んだ。当時、視力が落ち始めた頃でやらせてもらえなかったんだよ」


「何だかんだで結構あるよな」

 ムシュフシュも思い出す。グレゴリオの時に思い出したTRPGもやりたいが出来なかった・・・当然無理をすれば出来たが、いかにオタクと言えど全方位に全力全開とはいかないものだ。それでも諦めきれず、大人になって財力に物を言わせるなんて話はよく聞くものだ。


「んで、『なんだ?この駄作』ってのもあるあるだ」


「ハハッ、そうだな。―――俺は3D酔いが酷くてな・・・」

 次郎が顔を曇らせる。ムシュが酒を呷る。


「もしかして、FPS・TPSは全滅か?」

「ああ、十分ももたない。辛うじて出来るのがモンスターを狩るやつだ」


 ムシュの言ってるゲームは社会現象になったほどの人気ゲームだ。回避に重点をおけば酔うだろうが、闘い方次第といったところだ。

 だが、それで代わりになるとはとてもいえない。


「蒸気系が強そうに見えるがな・・・?」

「蒸気系は実際好きだ。ただ、やれる物が少ないが、ジャンルに囚われない所があるだろ?デザイン的にも蒸気は気に入ってる」

「蒸気なら俺が言った様なゲームも有るだろう?」

「多分ある・・・だが、多分、次郎が言ったのと似たゲームだ」


 蒸気とは海外のゲーム販売サイトで単純和訳して蒸気と呼ぶ。それで通じる。世界単位なので、多種多様のゲームがプロアマ問わず販売される。

 ムシュが言ったのは、要素を取り出せば同じゲームが見つかるという話で、味付けまで期待通りとは行かないと言う事だ。


「ギ○ーズとか好きそうなのにな?」

「実に残念だ。カバー多用のゲームなんで、まだやれたが・・・」

「移動時間が酔うまでか・・・酔い覚まししながらカバー。ゲームになんねぇな」

 理論上する事は出来るが、楽しいかと問われると、・・・罰ゲームだろう。


「結局できるのはアタドンだけだ」

「ここで、できれば問題ないよな」

 ムシュフシュは開き直って言ったが、聴いた方は別の捉え方をした。


「それが出来たらサイコーなんだが・・・?無理だろ?」

「まあ、稼働中のMMOの中で他社のゲームをやるってのが頭おかしいよな」

「同社なら・・・」

「メンコンはソフト出してない。聞いた事ないだろ?」


 ここシバルリなら場所は幾らでもあるし、騒音も気にならない。更に、アバターはプレイヤーの身体特性を引き継がないというのが大きい。つまりここでなら酔い易いという身体特性がなくなるのだ。

 その辺は実体験で知っている。本来なら次郎は疲労が嵩めば言語中枢に異常が出るが、どの状態でも流暢に話せる。

 もし仮に、アバター独自の身体特性が有ったとしても、作り直せば済む話だ。


「・・・どうした?」

 次郎は自分の眉根を中指で叩いている。トントンと、何か考えている。もしくは思い出そうとしているようだ。


「・・・ん?いやぁ」

 次郎は口の右端を吊り上げて『何でもない』と答えた。非常に盗賊らしい笑みにムシュフシュが気圧される。



 ドンッ!


「よ!次郎―――面白かったぜ。あのゲーム!確かに買いだな!」

「―――そうそう、ほんとによく出来てたよ。違和感あったけど、なれると新鮮で好きだよ!」

「―――電撃が強いですね」

 ザ・三馬鹿。全員ムシュを確認して評価を一段階上げて語っている。

 煽るスタイル。ムシュフシュ相手によくやる。だからこそ三馬鹿・・・

 ・・・誰に似たのか?理解に苦しむ。


「・・・多分お前だ。」「あれ?声出てた?」


「三人とも、買ったのか・・・気に入ってくれたのなら。薦めたかいがある」

「やりたくなってバ○ドと一緒に・・・」

「どれ買った?」


 バ○ドは制作会社は一社で類似ゲームはほぼ無い。しかし、シリーズは結構出ている。

「コンシューマーのを買いました」

「アレか・・・」

 とマティ。


「ソレのPC版・・・」とノッツ。

「・・・業が深い」

 


「武装○融・・・」

「初代か!・・・よく動いたな!」

 さすが大吟醸。


「でもやっぱり。バ○ドのほうに移っちゃうよね」

「シューティングだからなクリアしちゃうとな」


「結構歯ごたえあったね。ハードは・・・」


 カラーン・・・

 次郎のコップが乾いた音を立てる。


「ク、クリアできないヤツも・・・いるよな・・・」

「僕は出来た。普通に。」

「何度か失敗したが、出来たぜ」

「意地でクリアしました」

 三人は次郎坊よろしく非常にイイ笑顔で答える。


「お前も人の子か・・・」

「このニュータイプ共め・・・」

 実際40代の男がシューティングで20代に張り合おうというのが無理な話。

 敗北感に打ちひしがれる次郎坊を他所に、三人はフルコンプの情報交換と部隊編成の話で盛り上がる。


「やっぱり面白いのか?バ○ド」

「そりゃね。昔やってたけど、今やっても面白い」

「何しろエロゲーで金字塔をぶちたてたゲームだからな。ストーリーもいいし」

「初めてやったけど確かにストーリーも良かったね。最終戦間近で主題歌流れる所なんかは熱くなった」


「今時普通だろう?」

「BGMが主題歌になってて最終戦闘うんだよ。熱いぜ!」

 次郎が『劇場版マク○スのラスト』と呟き、ムシュフシュが『ああ!』と納得する。


「といってもエロゲだろ?・・・たかが知れてる」

「エロゲを馬鹿にしないほうがいい。もちろんムシュの言う言葉も判るが、大抵ストーリーのいいエロゲってのは限界が外れている事を差すんだ」

 と補足する。アダルトというジャンルのおかげで通常であれば濁して終る拷問シーンが事細かに描かれる事もある。それが一概にいい事とは言えないが、その状況を上手く使ってある。


「萌え~♪って感じだけど、そういう良さじゃないよね」

「そうそう、萌え~♪幼女に『―――何さらしてんねん!』って感じ・・・」

「・・・ソレはわかんないけど、敵キャラクターに殺意が沸くのは確か」


 ―――お巡りさん?


「ムシュフシュも食わず嫌いせずに、リア充人生にピリオドを打てばいいと思うよ」

「こっちにおいで~。二次元はいいぞ」

「TPOを弁えるのが現代の姿ですよ」



 その後、演武台に引きずりこまれた三人VSムシュフシュの戦闘は熾烈を極めたが、その戦闘の真実を知るものは少ない。




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