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AT&D.-アタンドット-  作者: そとま ぎすけ
転章 未定
116/162

シューティングゲーム談義





「だからさ。シューティングってどうなのよ?」


 そんな話題が飛び込んできた。

 ここはシバルリの酒場。【錆びた9番(ラスティナイン)】のホームと言っていい。メンバーにスレイを始めとした【ドーラ】の面々もたむろしている。

 今日は戮丸ではなく次郎坊で孤児の世話をヘルガに丸投げして、ここでサボっていると言った顛末だ。

 シャロンはというよりも、女性陣はあちらで会話に花を咲かせている。


 玄関の改装を余儀なくさせたムシュフシュは自分専用の席でトロールのようにジョッキ呷る。それにおっかなびっくりのオックス。苦笑いで見守るスレイバイン。

 ノッツ、大吟醸、マティ、ウォルフのバトルフリークスは、これまた何やら話し込んでいる。空手の試合と限定条件付きでウォルフはマティを下し、晴れて仲間入りをはたしたようだ。

 他にも客はチラホラいるが、せっかくオープンテラスで舞台を臨めるのに、こんな陽気に室内に篭るのは、ここに根城をおく面々くらいだろう。



「ん?シューティング得意なの?」と次郎坊は気だるげに聞いた。

 いつものスキル診断。まぁゲームに限らず身体能力をきいてアドバイスするに変わりはないのだが、彼はその伸びたい方向をゲームから割り出している過ぎない。

 向上心があれば伸びる。当たり前のロジックを予言のように言い当ててやってるだけだ。当然外れることも有る。当たるも八卦当たらぬも八卦の占いの様な物だ。

 元々、ここに居るのは重度のゲーム好き、方向性さえ与えてやれば放っておいても形になる。


「いや、いつもの診断じゃなくて好きずきの話し・・・古い人は結構好きだよね」

「って言っても、俺らの年代はソレしかなかったからな。ゲームと言えばシューティング」

「何でそんなニッチなジャンルを・・・」

「コンピュータの進化だよ。RPGなんか影も形もなかったし、当時の技術力じゃシューティングかアクションパズルぐらいしかなかった」

「PCゲーなんかはスプライトが使えただけで話題になったりしてな」

「ずいぶん昔の話ですね」

「スプライト?なんだそれ?」

 スレイとオックスが騒ぐ。


「まあ、レイヤー構造の事なんだが、当時は単層レイヤーだったから全画面書き換えでやってた。その辺はゲーム機のほうが優秀で、その機能を最初から積んでたし、パソコンは実務用と言う事から普及が遅れたな」

 テキストレイヤーはあったとかは抜きにして。


「だから、昔のアクションゲームはあんなにチープなんだ」

「じゃあ、楽勝だろ?」

 大吟醸の感想にオックスが乗っかる。全員がオックスを珍獣を見るような目で見る。


「なんだよ。昔のゲームだろ?簡単で当然だろ?」


「ほんとにコイツは素人なんだな・・・」とムシュフシュ。

「すまないな。ムシュ・・・。昔のゲームはユーザーにクリアさせる気なんて毛頭なかったんだよ」


 当時はマーケティングなんて意識も薄かった。プログラマーは容赦ない難易度を用意し、『ついてこれない者は気にしない』といった姿勢だった。


「画像だけ見れば簡単に見えるんだけどな。実際、攻撃全部が自機狙いの高速弾。つまり殺す気の攻撃満載なんだよ。セオリーもなかったからな。結構難しい」


「で、次郎はどんなのが好きなの?」

 と、ノッツが聞いた。シューティングとは言えジャンル違いだが嗜むようだ。


「そういうお前さんはやっぱり弾幕か?同人の?」

「当然、アレが一番いいね」

「ニワカが・・・弾幕シューティングと言えばアーケードだろ?」

「・・・その辺でやめておけ千日戦争するつもりかムシュ?」

 ノッツとムシュフシュはこだわりがあるらしく双方引かない。


「横スクロールもいいですよね」と、マティ。

「ああ、波動砲とかビットとかロマンだよな!」と大吟醸。

「いやそこは、オプションでしょ?」

「捕鯨のロマンを軽んじるな!」と、再度ムシュフシュ。


 どんだけ、アーケード愛してるんだムシュフシュ。

 女性陣を他所にシューティング談義に花を咲かせる。


 ・・・実に平和だ・・・


「で、次郎は何が好きなんだ?」

 結局質問は元に戻る。

 弾幕同人好きなノッツ。限らず、アーケード至上のムシュフシュ。本格派横スクロールのマティに、アングラ横シューの大吟醸。スレイは意外な事にキャラバン系の縦スク。古いね全く。オックスとウォルフは置いてかれている。


 オックスは単純にゲームに対して浅い。ウォルフはノッツに近いが、キャラクタ好きと判明した。


「サンダー・・・とかって面白いよね。バトルガレ・・・とか」

 巴、実は男だろ?男性陣が冷や汗流すようなタイトルが口から毀れた。


 マティVS巴

「Pは二週目から本番よね」

「参りました」

 巴は流れるような返答でマティを蹴散らした。


 巴に至っては幻獣に近い。誰もがその存在を一度は語るが遭遇したことはない。もしくはブラフだ。


 興味は次郎の趣味に戻る。


「あー俺は、基本的にゲームは下手なんだ。下手の横好きで・・・」

「横スク?」

「そういう意味じゃねぇ!でも、横スクは確かに好きなのが多いな。基本的にギミックが多い方が燃えるな」

 そこで大吟醸がガッツポーズをする。


「確かにアレも好きだ。唯一ワンコインクリアしたほどやり込んだしな・・・」

「それならそれなりに巧いんじゃ?」

「アレは攻略系の走りでな。練習次第でどうにかなるんだよ。家庭用でも出てたし・・・どっちかって言えばコミック系かな」

「コミック系?」

「スカイ○ッズとかグレートラ○タイムショーとか、弾丸フィー○ロンとか」


 微妙な沈黙が流れる。

「おい、ノッツそれって変なのか?」とオックスが聞く。

「名作と言えば名作だけど・・・ネタ枠かな?簡単な訳じゃないけどね」

「練りこみよりアイデアが面白いほうが好きだな。同人だけど、格闘攻撃取り入れたシューティングとか・・・最近で気に入ったのはス○ライク○ィッチーズのシューティングが面白かった」


「マジか・・・アニメの便乗タイトルだろ。正気か?」

「ああ、あれやったの?最近じゃないね。僕も気になってたんだどう?買い?」

 ムシュフシュは『ガ○パンはいいぞ』みたいに言うなと渋面を造り、ウォルフとノッツが食いつく。


 次郎は暫し考え込む。

「お勧めは出来ないな。何しろあのゲーム。便乗ゲームに有るまじき完成度なんだ。シミュレーションパートは紙芝居だ。タイトル好きならまだ判らんが、そう考えるとゲームの完成度と比べてしまってな。どうしてもショボク見える」


「なら買ってみようかな?」

「ノッツにもあまり薦められない。完成度は高いが・・・まぁ面白いから買って見るのは有りだと思うが・・・」

「何で渋るのさ?」


「いや、全方向シューティングなんだ・・・」

「スクロール?」

「いや、横スクロール。弾を撃つ方向がアナログスティック依存で全ての方向に向かって撃てる」

 かわしてナンボの同人系弾幕シューティングとは真逆である。面白いと思ってくれると思うが、回避を期待して買えばガッカリする。


「・・・それってヌルゲになんない?」

 多方向に発射できるのは、むしろシューティングでは基本だが、発射方向を任意で変えられると言うのは稀だ。砲塔が回転するのだ。


 敵を全て殲滅しようとすれば、敵の前面に出なくてはならなくなる。それがシューティングのジレンマを発生させ面白くさせる。


「そう思うよな。理論上は自機を動かさずに徹底迎撃でクリアできそうなモンなんだが、そうじゃないバランスで出来てる。やってみれば判るよ。固い敵や自機狙い、全方向から襲い掛かる敵。ほんとに上手くできてるんだ」


「ロス○ワールド見たいな物か?」

「そうそれ!それの進化系!」


「そういう出来の良さか・・・買うのはちょっと怖いな」

「俺はちょっと興味が湧いたぞ。絶滅した当てる系のシューティングだろ?」

「まぁ、ちょっと違うが・・・概ねそんな感じだ。結構ムズイ。ハードはクリアできなかった。というよりサイト見たらスコアアタックをイージー基準でやってる。そんなゲームは始めてみたよ」

 ゲームの難易度が上がって、クリアが困難になる。その要因に敵の固さが加わるので、高難易度だとスコア基準がバラバラになるのだ。そこで難易度の低いゲームモードで競い合っていたという具合だ。


「俺もちょっと興味が湧いたが、あのゲームだろ?パッケージが・・・」

「シューティングなら気にしなくていいじゃん?」

「ご褒美CGがな・・・なければね」

「女に見られたら俺の人生終るッ!」


 ムシュフシュは頭を抱える。それで合点がいった。彼がアーケードに拘る点はパッと見、趣味の範囲に収まるからだ。

 幼女のキャッキャうふふは彼の美学から大きく外れる。


「ところで、ムシュの職業は?」

「スタイリスト・・・」

「そのガタイでかッ!?」

「リアルの身体は普通だ。こんな巨体の訳がないだろ?」




「このゲーム勿体無いんだよな・・・」

 次郎が呟く。

「勿体無い?」


「そだよ。シューティングでありながら完全に従来の物と一線を画する。常識が通用しない。このゲーム用に攻略は形成されるべきだし・・・」

「シューティングでまっさらなスタートラインが用意されたと?」


 ストイックなジャンルのゲームは経験練度が物を言う。人によっては三十年選手もいるジャンルだ。その積み重ねにはどうしても勝てないし、不必要な物は殆ど淘汰されてしまった。


「まあ、そう考えれば勿体無いな」

「だろ?幾らでも発展の仕方があるだろうに・・・」

「完成度高いって言ってなかったか?」

「ああ、このゲーム自体は非常に完成度高いよ。でも、このタイトル以外なら幾らでも変化の余地がある」

「たとえば?」

「対戦シューティング。一時期チラッと出たし俺も見たが、アレは俺には無理だ」

「何で?」


「互いに弾幕放って回避能力を競う感じだ。あくまで根幹が従来のシューティングなんだ。好きな奴は好きだろうが基本的にゲームベタの俺には厳しい。レベルがかみ合わないと弾幕放って終わりの作業ゲーになる」


「まぁ、人は選ぶわな」

「コイツなら、単純にLスティックで逃げ、Rスティックで狙う単純構造でゲームが成り立つ。左右の慣れは有るが、サテライトだって直感的に出来る」

「なるほど、毛色が変わるな。同ジャンルで完全に別物だ」

 とムシュフシュは納得する。


「でもそれって退化じゃねぇ?」とオックス。

「というよりも今の3Dシューティングが高度な進化を要求しすぎる嫌いがあるよね。単純に難しいし」

「そう?」

「ノッツは黙れ!」


「俺はあのシステムに発展して欲しかった。確かに技術的には退化するが、そのほうが面白い場合も多分にある」


 ゲームである以上利益が見込めない以上製作できない。そこでタイアップという手法をとったのだろうが、今度はタイアップ側を手を抜きすぎた。ゲームシステムにキャラクター性が薄いのもあいまって、時代の流れに埋もれていった。


「ある程度連続してくれないと、ゲーマー側も基礎攻略が作れない」

 そう次郎はぼやいた。当然完全新ジャンルはシステムの破綻と言うデメリットを内包しているし、認知が弱く、売り込み、説明が難しいという点もある。


「次郎・・・難しいプログラムじゃないだろう?同人かなんかで作ってくれないか?」

「残念、俺はベーシックでテ○リス作って限界だ。今はVB。VCだろ?訳判らん。俺だって同人で出たら欲しいよ」

 何でも魔人の次郎坊にムシュは一縷の希望を残すが敢え無く散った。


 このゲームには裏がある。ゲーム機のコントローラの進歩によるところも大きい。現にロス○ワールドは専用のコントローラを必要とし、時代の影に消えて行った。現在普及のコントローラで無理なく出来る点も次郎が驚いた点の一つだ。


「昔なつかしの2D全方向フリースクロールなんか面白いと思うんだがなぁ」

「ロボゲでいいじゃん」

「ロボゲは敷居の高さが永遠の命題だ。バ○ド系のゲームに仕上げれば化けると思ったんだがな」


「バ○ド系か・・・」

 ムシュが溢す。立派なアダルトゲームだ。ムシュフシュには致死性の劇物に近い。

「やっぱり、面白いのか?」


「チョー面白い!」

「表でろ!」


 煽る次郎。


「エロとかキャラクターはいいんだ。ゲームだけ抜き出したモンはないのか?」

「有るよ?」

「ホントか!なんてタイトル!」

「いや、ゲーム内のゲームモードで・・・」

「意味が無い!」


 更に煽る次郎。


「なぁ、あのゲームってコンシューマーで出てなかったか?」

「東○でアウトなムシュには一緒だよ」

「ムシュフシュにも困った物ですね」


「黙れ!異常者!三馬鹿トリオ!」


 それを真似する子供も煽る。





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