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AT&D.-アタンドット-  作者: そとま ぎすけ
第二章 ドラゴンサーカス
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036 厨二装備を手に入れた。製作者を殺したい。

 ◇036 厨二装備を手に入れた。製作者を殺したい。




ふと疑問に思う。【孤独の怨嗟】って、グレードはとうなってるんだ?


 アイテム製造の基本ルールに、コモン・アンコモン・レアがある。これは、加算表記だ。それはわかる。レアになると属性が加算される。それに応じた名前が付加される。


 ロングソードに火属性が端的にファイヤロングソード。温度だけならヒートロングソード。

 そしてここまでのグレードは強化が可能。人によってはネームドより強化されたレアアイテムの方が強いという。



 そして、固有の名前を関したネームド・ユニーク。強力な複合効果を持ち、変化を受け付けない。変化を受け付けないというのは属性マジックアイテムの副次効果で、レアぐらいまでのグレードは強化が可能。ただし、その条件から素材、料金は跳ね上がる。


 《マジックアイテム》自体はアンコモンから付く付加属性だ。+1が魔法由来の効果なら、この属性が付いてしまう。数少ない例外属性の一つで珍しくも無い。


 ただし、ネームドクラスになると強化魔法すら受け付けない。洒落にならない数の魔法がかかっているからだ。


 ではこの[孤独の怨嗟]は?


 魔法はかかっていないが、固有名詞になっている。製作精度で加算状態になっているが+表記は無い。強化が可能なのはわかる。



《ネームドコモン》


 ???

「これって・・・」

「ああ、それですか?構造の完成度が高くてシステムがネームドクラスと判断したユーザーメイド品に送られるグレードです。流通量が多くなればネームドが取れます」

「じゃあ、まったく同じコンセプトで作れば[孤独の怨嗟]って名前が付くわけか?」


「はい。普通に作ったのでは-(マイナス)表記になりますが・・・それは精度がいいので」

 未熟品って判断が下るのか・・・


 ――何その製作系テロ?

 

「登録商標?じゃあ、この形状が気に入ったらずっと孤独の怨嗟シリーズって探す事になるのか?」

「シリーズ名は《孤独》です。ズボンもありますがご覧になりますか?」

「見せてくれ・・・」


 なんだこの罰ゲームみたいなネーミングセンス――


 ――殴りたい。




「こちら【孤独の慟哭どうこく】になります」


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・勘弁してくださいオネガイシマス。




 怨嗟えんさとは異なり右足にプレートが仕込んである。左は仕込みか?と思ったが、細い鎖が仕込んである。鎖帷子な訳だ。この仕掛けはまさか・・・


「試着していいか?」

「どうぞ」


 試着してわかった。このプレートがある右足。片膝をついた際に接地部分にプレートがくるように出来ている。しかも、そこであえて可動制限がくる様になっている。低い椅子に座っているようで、苦しくない。


 工場作業者は腰を痛める。基本的に床においてあるものを扱う事が多いからだ。

 製品を数える際、腰を下ろす。テーブルに載せるサイズではない事が多いし、尻をつかないと腰や膝に負担がかかりすぎる。その為に椅子を運んでいたら面倒すぎるし・・・


 工場作業の経験豊富な戮丸曰く――欲しい。というよりも作業服にこれを採用しろと言いたくなる。

 作業員の腰は洒落にならないほど深刻。隠れコルセッツの多い事多い事。


 ぐうの音も出ない性能。何だこの心配りは・・・商品化してくださいマジで。


 


 ただ、名前は変えて欲しい(切実)






「これ下さい。・・・孤独シリーズってこれで終わりですよね」

「お買い上げありがとうございます。孤独シリーズは後マントと眼帯がありますが」


 木曽さんが改二になっちゃうじゃないですか!


「後は、手袋を鋭意製作中…ですが、ネームドコモンの判定が下りないそうで・・・」


 その辺が拘りか、マントと眼帯は要らないな。マントはシャロンを背負う関係上邪魔になるし、眼帯は・・・

 

 ・・・そこにロマンを感じた事がないんだ。

 

 どう考えてもいる物ではないし、あれって眼球を失って目をつぶれないから、その穴を塞ぐためにつける物だろう。手術で塞いでしまうのか?


 今時は大体目が無事で、その目が邪眼とか、―――厨二チックなワンダーランドが飛び出すがのだが・・・?


「眼帯ってネームドコモン判定下りたんだ・・・」

「はい。開閉機構がついていてルーペに、蓋にライトの魔法がかかっていて精密作業に最適です。ガンサイトがついたレンズと交換可能で、使用していないレンズは蓋に収納できる優れもの。遠視レンズも現在検討中ですが、なにぶんエンチャンターがつかまらず・・・」


 グラッときた。やばいぞ孤独シリーズ。普通に欲しい!



 店員は思った。

 ―――この客・・・落ちる!


「こちらのマントは慟哭と同じ手法で出来てまして、防弾性能があります。更に各種ポケット、ハンギング可能な構造で武器も吊るせます」

「武器そんなに持ってないのでいいです」


 と言うより使わない。


「ではこちらのマジックハンドをお付けして武器の換装が自由に・・・」

「いらない」


 戮丸は体術でカバーできる。ジャグラー並みの換装能力は雑味が入るのを嫌う。

 性能としては申し分ない。これで工場作業をしたいくらいだ。本当の意味でマジックハンドだった。


 ・・・背に当たるシャロンの柔らかさには勝てない。

 マジックハンドはマントにハンギングする。そのマントは各種プレートが仕込んであり、ちょっとした鎧だ。




 ――あれ?食い付きが・・・店員には戮丸の購入基準なんてわからない。浮きが沈んだら引き上げる釣り人のような感覚だ。こんなときに製作者が言っていたのは・・・


「この何の変哲も無いコンバットナイフをお付けします」




 ――どうにでもなれ・・・


 しかし、Hit!


「そのナイフをkwsk・・・いや、買った!そのナイフだけ下さい!」




 戮丸は着替えを手早く済ませた。サイズのほうはシステムのほうで調整してくれるらしい。

 腰の後ろにコンバットナイフを挿す。コンバットナイフは小剣+2相当のものだった。短剣のカテゴリーに入れるには大きすぎる。予想通り柄は螺子式で中空になっており、コンバットナイフの基本性能は全て持ち合わせている。鞘を使ったワイヤーカッター機能も完備だ。


 拳・蹴りを繰り出し動作チェックをする。収納したナイフのがたつきは無い。今度は三連抜き斬り。ロックを親指で外す以上、少しもたついたが、それは戮丸の主観で、三つの弧の軌跡が残る。全てロックのかけ外しをしている。


 手のアトラスパームが青白い光を放つ。片手で逆立ちした。そのまま宙に飛び上がり、天井の突起を摘み滞空…摘みを離して体をひねり落下を殺して着地。


 曲げた脚の可動範囲は動作に影響無い。音は、ほぼしなかった。風斬り音だけが印象に残った。




 言わねばなるまい。


「パーフェクトだ―――」

「お客さん凄いね。軽業師かなんかですか!お金が取れるレベルですよ」


 二度のよそ様の引用は許されないらしい。



 ゴメンナサイ




「後は背負子だな・・・服飾店にあるとも思えないが・・・」

「有りますよ。こちらのマントです」


 それは今までの孤独シリーズに対して、一転して明るい配色のマントだった。パステルピンクとかではなく明度が高いと言った印象を受ける。背の部分に木製のフレームが付いてるのが特徴か?


「このフレームの部分が背負子形状になるんだな」

「そうです。と言うよりは背負子にマントをかぶせた形状です。穴を通していますのでマントがずれる事を防いでいるのです。」

「邪魔になれば畳めばいいか。それも貰おう」

「毎度ありがとうございます」


 孤独シリーズは厨二が過ぎた。別に装飾過多ではない。逆に実利一辺倒で全体的に漂うフ○ム臭、オイルと血と硝煙のかをり・・・


 ――このままじゃ、スケさんだ。嫌いじゃないが・・・


 この背負子つきマントで、幾分か雰囲気が和らぐだろう。

 このマントもネームドコモンか。


【天使のマント】

 ――ランドセル?


 ああ、その機構が詰まってるわけね。看板背負って歩くわけじゃなし孤独シリーズで諦めた。性能がいいことはいいことだ。腰ベルトもあるのか。本格的な作りだ。


 エンブレムが見える。赤十字にも見えるそれは木枠に、ちょこんと刻まれている。

 ――ビクト○ノックス?いやウ○ンガーの社標じゃないか?


「天使シリーズもあるのか?」

「はい、お気に召さないと思いますが・・・」

 孤独シリーズは戦闘特化がた、対して天使シリーズはアウトドアといった製作者のこだわりが見える。


「もしかして、天使と孤独の作者って仲悪い?」

「犬猿の仲でございます」


 両者とも現実に学んだ機構を取り込んでおりベクトルが真逆・・・さもありなん。




 ◆ シャロンとアケボノ



「何処の社交界に行くんだ?」

「へへー」


 シャロンの選んだものは真紅のドレス。背中が大胆に開き、胸元も見せる作りで強調してある。下に着たアケボノがチラ見せ下着のようにアクセントに、炎のようにアニメーションするアケボノはジュエリーのような光でシャロンを飾る。


 スカートはマーメイドラインと言うのか?体のラインを引き立たせる。そうなると可動域で問題が出るが大胆なスリットが可能にしている。


 分かっていてもそんな格好で冒険に出るつもりか?と言いたくなる生脚とか・・・アケボノで全ておKなのだが・・・


 目に嬉しい。素直にそう思う。ただこれにリュックを背負って武装を持つのは・・・


 ――シュールだ。


「それ頂こう。よく似合ってる。次は普段着を選ぼうな?」

「買ってくれるの?」

「ああ。ガレットやアリューシャと会う時にあるといいだろ?俺も気に入ったし」

「ありがとう!」


 ――あのぅ。お値段の件ですが・・・


 そこにはありえない金額が・・・財産の半分消し飛んだ。


「――何も言うな。――天使シリーズから見繕ってくれないかな?」

「了解しました」



 ◆ シャロンの新装備



 戮丸の背にベンチが出来た。店主がサービスでつけてくれたクッションのおかげで膝は痛くない。

 本来、背中合わせに座ったほうがいいのだろうが、シャロンは膝立ちの格好で、戮丸の肩に顎を乗せている。両手は戮丸の首を包むようにしな垂れかかっている。


 楽チンである。


 自分専用席が戮丸に出来たのがうれしい。パタパタと戮丸の体を叩くが、気にした風もない。


 シャロンの選んだ服装は奇しくも、全て天使シリーズの作者によるものだった。ライトグリーンに白。明るい色彩が目立つ。ブラウンの皮の部分も有るがそれは大地の色といった風で他の色合いをさわやかに引き立たせている。肌の露出も少ないパンツルック。上着の裾が丁度スカートに見える拵えがシャロンの魅力を引き出していた。


 露出が減った分女性らしさが減ったか?と言えばそうでもない。女性特有の丸みを帯びたラインは強調され、とても柔らかそうだ。

 ニットのセーターが女性らしさを損なっているか?と問えば分かってくれるだろう。


 ただ、露出部分が少ないと言ってもある事はある。そんなところは必要ないだろう、と思うところが開いてたりする。そこから見えるアケボノがこの快活なお嬢さんが、妖艶な女の部分を併せ持っている事を主張する。


 ――センスがいいな。


 それが戮丸の第一印象。今時のオネェサンのコーデはさすがだなと思った。清潔感を持たせれば併発する野暮ったさが微塵も無い。体を縛り上げる皮ベルトが快活さを足しているのだろう。凄く好感が持てた。


 ただ、アケボノが・・・

 丁度首が開いているデザインで、アケボノはチョーカーのようなデザインをしている。そのギャップからもろに首輪を連想してしまう。

 丁度陰になるから無視してしまえばいいかとも思ったが、黒地に緩やかに絡み合う炎のらいの自己主張は凄まじい。

 下に逃げれば谷間に追いやられ、上に逃げれば艶やかで潤った唇。更に逃げれば、大ボス瞳に追いやられる。


 もしシャロンに尻尾があれば、千切れんばかりに振っていただろう。どういう訳か上機嫌で無防備なのだ。パタパタとぶつかるシャロンの手が心地いい。このまま木陰に入って眠ればそれだけで幸せだろう。


 ――爆ぜろ!


 そんな周囲の殺気がむしろありがたい。脳は既に茹で上がっている。

 こんな様が伝わってなければいいが・・・


 俺は服飾店で教わった宿屋へと向かった。





今夜はお楽しみですか?


孤独シリーズのマントは孤独の象徴といいマフ


20160206 編集加筆

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