甘い罠
yagimokiさんは「夜のカフェ」で登場人物が「手を繋ぐ」「罠」という単語を使ったお話を考えて下さい http://shindanmaker.com/28927 #rendai
俺と友人と彼女は仲が良い。三人で遊ぶことも良くあるし、互いに互いの家で夜を過ごすこともある。今日は友人のバイトが終わるのを待ってから、夜通し遊びに行く予定。その為に彼女と二人でカフェで時間を潰すことにした。彼女はとても魅力的な女性。顔立ちが綺麗であるし、何より彼女といると居心地がいい。そういう目線で見たことないと言えば嘘になる。だが、一線を越えてはならない。付き合ってるわけではないし、この子は俺の友人の大事な大事な彼女。十数年来の友人の彼女。手を出すことはあってはならない。
タバコの煙が店内でゆらゆら揺らめいて霧散する。何処かしら自分に似ているので少し嫌な気持ちになる。タバコに火をつけて、煙を肺に入れる。辞めようかとも考えたが、辞められなかった。禁煙は自分の意思の弱さが露呈しただけだった。だからと言って辞める気力も起きず、惰性で吸い続けている。再び煙を肺の中に入れる。多分もう辞めることは出来ないだろう。
「ねぇー、話聞いてるの?」 彼女が机を可愛らしく叩きながら主張する。そういう狙ったような行動も彼女がやると少しだけだが、ドキッとしてしまう。
「あー。うん、聞いてる聞いてる。」
タバコを灰皿に押しつけて消す。完全に消せたわけではなく、煙がちらちらと上がっている。
「全くもー」
急に暖かいものが俺の手を包んでくる。彼女の手だ。柔らかく優しい彼女の暖かさが伝わってくる。その熱が顔にまで伝染してきて暑くなってくる。
「お前……彼氏いるんだからそういうのは辞めろよ」
「えへへ。良いじゃん」
満面の笑みを浮かべてこちらを見てくる。こういうのはよろしくない。今すぐに手を離さなければならないのに、離すことが出来ない。
これは罠。分かっている。引っかかってはいけない。もしこの罠に引っ掛かったら、友人との関係が壊れてしまう。甘い甘い罠。 だが、この子を選んでそいつとの関係は破滅してもいい。そんなことを考える辺りとんでもない馬鹿者なのだろう。
彼女の手を強く握り返した。もう後戻り出来ない。