↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

ハンバーグ

作者: 向日葵
掲載日:2026/08/17

放課後の教室には、まだ三人の女子生徒が残っていた。

窓の外では、運動部の掛け声が遠く響いている。

西日が差し込んだ教室は、昼間よりずっと広く見えた。

三人は窓際の席を囲むようにして座っていた。


「ねえ、ハンバーグってさ」


最初に口を開いたのは、窓側に座っていた少女だった。


「なに、急に」


「脂身が多いのと少ないのだったら、どっちが好き?」


「えー」


向かいに座っていた少女が少し考える。


「私は多い方かな」


「私も」


「やっぱり?」


「だって、その方がおいしくない?」


少女は笑った。


「わかる」


「でも脂っこすぎるのは嫌だよ」


「そこは加減じゃない?」


「加減って?」


「ほどよく入ってるやつ」


三人の間で、どうでもいい会話が続いていく。


教室の時計が、かち、かち、と音を立てていた。


「じゃあさ、赤身が多いのは?」


「それはちょっと嫌」


「私も」


「やっぱり?」


「なんかパサパサしてそう」


「わかる」


また笑い声が上がった。


あまりにも普通の会話だった。


放課後の女子高生が、夕飯の話をしている。


「じゃあ、どこのが一番好き?」


「どこのって?」


「部位」


「えー、そこまで考えたことない」


「私は柔らかいところ」


「私も柔らかい方がいい」


「筋っぽいのは?」


「嫌」


「硬いのも?」


「嫌」


「じゃあ柔らかくて、脂がほどよくあるやつ?」


「最高じゃん」


三人の意見が揃った。


「でもさ」


一人が頬杖をつく。


「新鮮な方がいいよね」


「まあ、それはそう」


「古いのって、やっぱり味落ちるし」


「保存状態にもよるんじゃない?」


「でも、できれば新しい方がいい」


「わかる」


窓の外から、校門が閉まる音が聞こえた。


教室に残っている生徒は、もうほとんどいない。


「焼き加減は?」


「私はしっかりめ」


「えー、私は少し柔らかい方」


「私はどっちでもいいかな」


「じゃあ三人で食べるときはどうする?」


「中間」


「それが一番じゃない?」


「そうだね」


少女たちは楽しそうに話している。まるで、どこにでもある放課後の雑談だった?


そのとき、一人のスマートフォンが机の上で震えた。


画面が点灯する。ニュースアプリの通知だった。


『市内で発生している連続事件について――』


画面には、最近この街を騒がせている事件の記事が表示されている。


少女はそれをちらりと見た。けれど、何も言わなかった。

そのままスマートフォンを伏せる。


「でさ、ソースは何派?」


「デミグラス」


「私も」


「じゃあ全員デミグラスじゃん」


「チーズ乗せたい」


「わかる」


「目玉焼きもいい」


「それもう最高」


話は何事もなかったように続いていく。


「あと、量」


「量?」


「一人分ってどれくらい?」


「大きい方がいい」


「私も」


「食べきれる?」


「余裕」


「じゃあ大きめで」


三人は顔を見合わせた。


「決まりだね」


「うん」


「じゃあ、今日はどうする?」


「いつもの時間でいいんじゃない?」


「警察いないかな」


「時間ずらせば大丈夫でしょ」


「じゃあ、少ししてから行こ」


「賛成」


三人が立ち上がる。鞄を肩に掛ける。机の上に置かれていたスマートフォンが、もう一度震えた。

画面には、先ほどと同じニュース記事が表示されていた。


市内で続いている事件。

未解決のまま増え続ける被害。

犯人の手掛かりはいまだ見つかっていない。


しかし、その画面を見た少女は何も言わない。


スマートフォンを鞄にしまう。


「じゃ、行こっか」


「うん」


「今夜も調達しに行きますか」


「そうしよ」


三人は笑いながら教室を出ていった。


夕暮れの廊下を、並んで歩いていく。


その後ろ姿は、どこにでもいる普通の女子高生にしか見えなかった。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
短編ありがとうございます リアルホラーだ(||゜Д゜)ヒィィィ! 女子高生が犯人だとはどこにも書いてないのに すっかり犯人を押し付けてしまいました 自分が相手より優位であると思った瞬間に 相手に対して…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。