最終章ぜよ
かれこれ夜になってしもうたけんど、わしゃ出かける気になれざった。
母がわしが中庭におるがを見つけて、「今日のうちでなかったらならん。さあ、行きや!」と小声で言うた。
それでわしゃ出かけていき、エーミールは、と尋ねた。
彼は出てきて、すんぐに、誰ぞがヤママユガをだいなしにしてしもうた。
悪いやつがやったがか、あるいはネコがやったがかわからん、と語ったが。
わしゃそのチョウを見してくれ、と頼んだ。
二人は上に上がっていった。
彼はろうそくをつけたがじゃ。
わしゃだいなしになったチョウが展翅板の上に載っちゅーのを見た。
エーミールがそれを繕うために努力した跡が認められた。
ちゃがまった羽は丹念に広げられ、ぬれた吸い取り紙の上に置かれてあった。
やけんどそりゃ直すよしもなかった。
触角もやはりのうなっちょった。
そこで、わしがやったがや言い、詳しゅう話し、説明しょうと試みた。
するとエーミールは激したり、わしをがなりつけたりなどはせんずつ、低う、ちえっと舌を鳴らし、しばらくじっとわしを見つめちょったが、それから「そうか、そうか、つまり君はそがなやつなんやねや。」言うた。
わしゃ彼に、わしのおもちゃをみんなあやる言うた。
それじゃち彼は冷淡にかまえ、依然わしをただ軽蔑的に見つめちょったき、わしゃ自分のチョウの収集を全部やる言うた。
やけんど彼は「けっこうちや。わしゃ君の集めたやつはもう知っちゅー。そのうえ、今日また、君がチョウをどんなに取り扱うちゅーか、ということを見ることができたさ。」言うた。
その瞬間、わしゃすんでのところであいつの喉笛に飛びかかるとこやった。
もうどうにもしようがなかった。
わしゃ悪漢だということに決まってしまい、エーミールはまるで世界のおきてを代表でもするかのように、冷然と、正義をたてに、侮るように、わしの前に立っちょった。
彼は罵りさえせざった。
ただわしを眺めて、軽蔑しちょった。
その時初めてわしゃ、いっぺん起きたことは、もう償いのできんものだということを悟ったがじゃ。
わしゃ立ち去った。
母が根ほり葉ほりきこうとせんずつ、わしにキスだけして、かまわんでおいてくれたことをうれしゅう思うた。
わしゃ、床にお入り、言われた。
わしにとってはもう遅い時刻やった。
だが、その前にわしゃ、そっと食堂に行って、大けなとび色の厚紙の箱を取ってき、それを寝台の上に載せ、闇の中で開いた。
ほんでチョウチョをひっとつひっとつ取り出し、指でこなごなに押し潰してしもうた。




