第5章ぜよ
エーミールがこの不思議なチョウを持っちゅーいうことを聞くと、わしゃすっかり興奮してしもうて、それが見られる時の来るがが待ちきれんなった。
食後、外出ができるようになると、すぐわしゃ中庭を越えて、隣の家の四階に上がっていったがじゃ。
そこに例の先生の息子は、こんまいながら自分だけの部屋を持っちょった。
それがわしにはどればあ羨ましかったかわからん。
途中でわしゃ、誰にも会わざった。
上にたどり着いて、部屋の戸をノックしたけんど、返事がなかったがじゃ。
エーミールはおらざったのだ。
ドアのハンドルを回してみると、入り口は開いちゅーことがわかったぜよ。
せめて例のチョウを見たいと、わしゃ中に入った。
ほんでづぐに、エーミールが収集をしもうちゅー二つの大けな箱を手に取った。
どちらの箱にも見つからざったが、やがて、そのチョウはまだ展翅板に載っちゅーかもしれん思いついた。
はたしてそこにあったが。
とび色のビロードの羽を細長い紙きれに張り伸ばされて、ヤママユガは展翅板に留められちょった。
わしゃその上にかがんで、毛の生えた赤茶色の触角や、優雅で、果てしのう微妙な色をした羽の縁や、下羽の内側の縁にある細い羊毛のような毛らあを、残らず間近から眺めた。
あいにく、あの有名な斑点だけは見られざった。
細長い紙きれの下になっちょったがや。
胸をどきどきさせもって、わしゃ紙きれを取りのけたい誘惑に負けて、針を抜いた。
すると、四つの大けな不思議な斑点が、挿絵のよりはずっと美しゅう、ずっとすばらしゅう、わしを見つめたき。
それを見ると、この宝を手に入れたいちょいう逆らいがたい欲望を感じて、わしゃ生まれて初めて、盗みを犯した。




