XとP
この道は自転車が多い。しかも道幅も狭いときた。そうなれば何が起こるのかは想像に難くないわけで。
無言でXの手を取り引き寄せる。
明日からも毎日ずっと、手を繋ごう。
車内アナウンスが流れた。Xの最寄駅に着くらしい。他愛のない会話を徐々に転換させる。
「このままXを持ち帰っちゃおうかな〜」
電車がホームに止まる。
「えぇー帰らないと…」
ドアが開く。
「冗談!じゃあね!気をつけてね〜!」
寂寥を滲ませぬよう、気をつける。
強い日差しが射す駅のホーム。
「好きだよ」
そのつぶやきは電車の音でかき消される。
聞こえなくても、それでいい。
Pは抱きしめながら言った。
「ねえX、好きだよ。」
Xは背伸びをして普段よりも小さく、高い声で囁く。
「私もだよ」
一つになっていた体が離れる。
いつのまにか変化した手の繋ぎ方。気付いてしまった時、心の笑みが漏れた、ような気がする。
自分は今、どんな顔をしているだろう。
「このままお持ち帰りしちゃおうかな?」
もう6時だ。来るわけない。家の掃除もしていないし、呼べるわけない。
「いいよ〜?」
もちろん冗談。Xもそれをわかっているから、こんなことを言う。
「んふふ、嬉しい」
この気持ちは隠せているだろうか。こんな行動をしている時点でバレているのではないだろうか。
「じゃあ、気をつけてね」
自分は今、どんな顔をしているだろう。全部バレないでほしい。でも、少しくらい伝わればいい。
宿泊行事。若い2人が一つの部屋で何も起こらないなんてことは……
あった。
でも、
「好きだよ。大好き。」
なぜ、こんなことになっているんだろう。
「うん。」
Xは微笑みながら、膝の上にあるPの頭を撫でる。
冬の寒い日、乾燥して寒い風が唸るように吹いている。決して恋人ではないが、恋人繋ぎで隣を歩くXは万年タイツを履かない主義ゆえ、実に寒そうだ。
「こっちきて」
「?」
Xと左右を入れ替え、反対の手をポケットから出し、手を繋ぐ。
「カイロ、持ってるの。あったかいでしょ?」
Xが突然肩を預けてくる。
「どうしたの」
愛おしい。顔は見えないし何を考えているのかわからないが、そのままだと辛そうなのでXの方に少し体を向ける。
「なんでもないよ」
Xは起き上がってもとの態勢に戻る。先程まで埋まっていた肩が空いて、寂しい。
今度はPが甘える。少し姿勢は悪いが、Xの方に合わせるために体を下に滑らせる。
「ねえ____」
「うん?」
「なんでもないよ」
もうすぐXの最寄駅だ。
Xのいなくなった角の座席に移る。さっきまでそこにいた、Xの温もりを感じる。




