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悠久の星紋剣士  作者: 蒼野 レイジ
ルナエティカ星紋学園
9/69

予期せぬ挑戦

学園の敷地内は活気に満ちていた。


戦闘試験で二属性を使いこなす姿を見せたレヴァンの噂は、学園中に広がり、彼に注目する者も増えていた。

ランキング2112番からのスタートを切った彼は、次の目標を定めようとしていた。

(ランキング制度の仕組みを理解するのも重要だ。この場で経験を積むためにも、強い相手と戦うべきだろう。まずは武力に秀でるものは1000人ほどだったはず。まずは、1000番台前半と戦ってみるか…)


そう考えながら歩いていた彼の前に、ある生徒が立ちはだかった。


「お前が例の二属性使いか。」

現れたのは、ランキング900番台前半に位置する星紋術士だった。

背は高く、鋭い目つきが印象的だ。その言葉遣いとは合わない細身の見た目と、知的な印象を受ける。


「俺の名は、クライヴ・エアスフォード。二属性使いのお前に興味がある。俺と手合わせしないか?」

挑発的な口調だったが、その背後には純粋な興味が垣間見えた。レヴァンは一瞬考えたが、最終的にその挑戦を受けることにした。


「いいだろう。この学園のレベルとランキング制度を学ぶには良い機会だ。」


「そういえば、ランキング戦は初めてだったな。一緒に受付まで行くから、手続きの方法をを覚えるといい。受付はこっちだ。」


今すぐにでもランキング戦をしそうな勢いであったが、意外にも冷静で親切な対応のクライヴにレヴァンは驚いた。見かけによらず、面倒見が良いタイプなのかもしれない。レヴァンはそう思いつつも、クライヴの後をついて行った。


クライヴとレヴァンは、円形で5つあるうちの受付の1つにいた。

円形の受付の中央部には、透明で巨大な板が設置してあり、今日行われるランキング戦の一覧が表示されている。


「ランキング戦の申し込みですか?」

受付の女性が声をかける。


「あぁそうだ。レヴァン・エストだ。ここにいるクライヴとランキング戦を行いたい。」

レヴァンは、短くもはっきりと伝えた。


「ランキング2112番のレヴァンさんから、ランキング914番のクライヴさんへの申し込みですね。承知しました。」


ランキングの順位が離れすぎているため、止められるかと思っていたレヴァンは少し驚いた。


その表情の変化を見ていたクライヴは、レヴァンに説明する。

「この学園の自由さと一緒で、挑戦も自由だ。誰も可能性を否定するようなことはしない。」


レヴァンは納得しながらクライヴの回答に頷いた。


「それではクライヴさん。挑戦を受ける者として、ランキング戦の日時を指定してください。ご様子を見るに、今すぐですか?」


「ああ、今すぐに行いたい。可能か?」


受付の女性は、書類に目を通した後にすぐ答える。

「はい、可能です。急ぎ、ランキング戦の審判を呼びますね!」


手際よく書類に記入した後、受付の女性は背後にある透明な板に手を伸ばしてマナを注ぎこむ。

すると、不思議なことに透明な板には、クライヴとレヴァンのランキング戦が何時に行われるかが表示された。


どうやら初めてのランキング戦は、15分後に行われるようだ。

…レヴァンは不思議と、どこか懐かしさを感じていた。


透明な板を遠目に見ていた生徒が、レヴァンとクライヴの名前が表示されてから慌てて走り出して行った。


「ランキング戦の申し込みが確定しました。それでは遅れないよう、試合会場へ向かってください。」

受付の女性に礼を言い、クライヴとレヴァンはその場をあとにした。


会場の場所が分からないため、レヴァンはクライヴの説明を聞きながら歩いていた。


「あの原理は不思議だよな。あの透明な板は、正体不明の特殊な物質でできているらしい。この時代にはない、大災厄以前の物質だそうだ。ちなみに俺は、マナと星紋、星紋術に反応する鉱物を組み合わせた研究をしていて、同時に武力を高めるためにこの学園にいる。お前は?」


「大災厄以前の物質でできているのか…それは興味深いな。研究内容も実用的で面白そうだ。俺は、約束の地という場所の情報を求めてこの学園に来た。何か知っているか?」

レヴァンは興味ありげに説明を聞きながら、自分の目的もクライヴへ伝える。


「約束の地…すまないが、俺は情報を持っていないな。だが、何か情報を得たらお前に伝えるよ。」

クライヴは申し訳なさそうに答えながらも、協力の意思を示してくれた。


「ありがとう、助かる。近いうちに鉱物についても話を聞かせてくれ。興味がある。」


「あぁ、もちろんだ。人に話すことで得られる気づきも多いからな。」


話をしているうちに、2人は試合会場へ到着した。



試合会場。

挑戦を受けたことを聞きつけた観戦者たちが、次第に集まり始めた。


その中には、噂を聞きつけたセリーネの姿もあった。

彼女は、レヴァンの実力を確かめるべく観戦席の最前列へと移動した。試合が始まるまでの間、周りを見渡しながら彼女は考える。


(興味深いわね。この戦いで、彼の本当の力が見られるかもしれない。それにしても、学園ランキング500番台のレン・オルディンに102番のリィナ・アーケイド、属性に関する研究論文で今話題のセシリア・アルトリーネ、他にも実力者や権威ある人がたくさん。あの人、入学してすぐに注目の的ね。)


セリーネが考えているうちに、レヴァンとクライヴが入場して試合開始の位置についた。


審判の「試合開始!」の掛け声と共に、試合が開始された。


試合が始まると、クライヴはすぐに槍を構え、高速の突きを繰り出してきた。レヴァンはそれを軽々とかわし、鋭い剣撃で応戦する。


「ガキィン!」


金属音が響き渡り、二人の攻撃が激しく交錯する。


「流石に手強いな…」

クライヴはすぐに武器戦では分が悪いと判断し、得意の星紋術主体の戦闘に切り替えた。


「本気で行く!風刃散舞ふうじんさんぶ!」


無数の風の刃が彼の周囲に発生し、高速で位置を変えながら全方位からレヴァンを攻撃する。

観戦者の中から驚きの声が上がった。


「あの風の星紋術、あれほどの速さで移動しながら操れるなんて…。しかも威力も高い。」

「制御が難しいのに、あれで900番台なのか…やはり、3桁の実力者は違うな。」


レヴァンは目の前に迫る風の刃を見据え、右腕にマナと星紋の力を集中させた。


彼は、剣技のみで一つひとつの刃を高速で切り払っていく。

その動きは正確かつ常人離れしたスピードだ。


「あの動き…やはり、ただの星紋術師ではないな。」

「彼は、戦闘ギルドに所属している者なのか?」


「うちのギルドでは、あんな高速で剣を振るう奴は見たことがないな。」

レヴァンの動きに、ギルドにも所属しているであろう者や力を追い求める者が、口々に驚きの声をあげる。


観戦者の一人であるセリーネもまた、レヴァンの剣技に感心する。

(やっぱり強いわね。腕にマナと星紋の力を集中させて爆発的なスピードで剣を振るっているのね。あれは鍛錬の賜物ね。普通の人が同じことをやってもその力に振り回されて大けがをしてしまう。)


「やはり、戦闘経験が豊富だな。だが、これで終わりだと思うなよ!」

クライヴは高速移動をやめ、攻撃パターンを全方位から拡散に変更した。


広範囲の強力な連続攻撃が続く中、レヴァンは冷静にそれらを風壁や剣技で防御しつつ、反撃の機会を伺っていた。


レヴァンが防戦一方で反撃の機会を伺っている間、クライヴはさらに星紋術を発動させた。


「お前に出し惜しみはしない。嵐風波動らんぷうはどう!」


クライヴが上空に渦巻く巨大な風の塊を作り出し、それを地上に向けて解放した。

風圧は爆発的で、周囲の観戦者たちも一瞬息を呑んだ。


最前列で見ていたセリーネは、その技の威力を思い出す。

(これは、風属性の上級星紋術…あの威力では建物や障害物も一掃される。これが彼の強さ。流石にこれは、彼でも防ぎきれないわね。)


セリーネの予想をよそに、レヴァンはその技の威力を見極めると、冷静に判断を下した。


断風衝壁だんぷうしょうへき!」


彼の前方に風を圧縮した壁状の衝撃波が展開され、巨大な風の塊を受け止める。

衝撃波が刃状に変化し、相手の攻撃を相殺しただけでなく、反撃として吹き飛ばした。


その瞬間、観戦者たちは言葉を失った。

「見たこともない術だ…あんな風属性の星紋術があるなんて。」


セリーネは目を見開き、心の中で興奮を抑えきれなかった。

(あの発想…面白いわ!攻防一体の星紋術なんてみたことがない!どんな環境で学べば、あのような星紋術が身につくのかしら?)


戦闘は終盤に差し掛かったところで、レヴァンの左手にある星紋が微かに輝き始めた。

その瞬間、彼の脳裏に断片的な記憶がよぎる。


「っ…またか。」

視界を覆いつくすほどの星喰いとの戦闘、戦っている人々の怒号や叫び…


「そこだ!!」

勝負を諦めていないクライヴの槍が、レヴァンの僅かにできた隙を突く。


一瞬の隙を突かれそうになったが、レヴァンは冷静さを取り戻し、星紋術を発動した。


嵐鎖らんさ!」


風の鎖が生成され、クライヴを拘束すると同時に刃状の風がゼロ距離で持続的なダメージを与える。

最後の攻撃に全神経を注いだクライヴに、避けることは不可能であった。


クライヴが必死に抜け出そうとするも、風の鎖の強力な締め付けに加え、ゼロ距離で風の刃を浴びたことにより、その場で気を失った。


試合終了の鐘が鳴り響く中、レヴァンは剣を静かに収めた。



勝利後、観戦していた生徒たちが次々とレヴァンに話しかけた。


「君の星紋術…どこで習ったんだ?」

「戦闘試験の時から思っていましたけど、やっぱり火属性の術もオリジナルですか?」


どうやら、多くの生徒はレヴァンのことを旅人の星紋術師ではなく、変わった星紋術を使う者として見ているらしい。

レヴァンはそれとなく答え、その場を後にした。


しかし内心では、周囲が自分の術を物珍しがる理由を考えていた。

(なぜ俺は、他の星紋術士と違うのか…。記憶が戻れば、この謎も解けるのか?)



彼の視線は遠くを見つめ、次なる試練を予感していた。


レヴァン・エスト ー 学園ランキング 914

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