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悠久の星紋剣士  作者: 蒼野 レイジ
結界崩壊
44/69

学園襲撃

学園の夜は穏やかだった。

周囲を守る結界がもたらす安心感の中、星喰いの脅威など遥か遠いものに思えたからだ。


生徒たちはそれぞれ寮や自室で過ごし、教本を開いて星紋術の知識を深める者や、静かに談笑を楽しむ者もいた。かすかな声やページをめくる音が聞こえるだけで、学園には静けさと安らぎが漂っていた。


しかし、その静けさは突然破られる。


静まり返った夜、空気がわずかに揺れるのを感じたのは、星紋術に長けた者たちだった。

最初は気のせいかと思うほど微かな振動だったが、遠くから聞こえる低い轟音が徐々に学園全体へと伝わり始める。


「……何だ、今の?」


一人の生徒が星紋術の教本から顔を上げ、隣の友人に囁く。その声は不安を隠しきれずに震えていた。

その瞬間、空にかかった暗雲が異様な速さで広がり、夜空の星々を覆い隠す。


空気がまるで重く圧し掛かるように変質し、湿った冷気が周囲に漂い始める。


「この感覚…」


別の生徒が、胸元に手を当てながら呟く。彼女の顔は青ざめ、目は暗い空に釘付けだ。


「まさか…星喰いじゃないよな?」


それを聞いた隣の青年が苦笑するように言葉を返す。


「まさか。街を覆う結界とこの学園の結界がある限り、星喰いが近づけるわけがない。」


しかし、声の端にはわずかな動揺が混じっていた。


そのときだった。

遠くの地平線が不気味な閃光で一瞬照らされると同時に、裂けるような轟音が響き渡る。

衝撃で窓が微かに揺れ、周囲の生徒たちは驚いて顔を見合わせた。


「……間違いない、星喰いだ。」


震える声でそう呟いたのは、星紋術を扱う感覚に優れた上級生だった。


「しかも、こっちに向かって来ていないか!?」


彼の言葉に周囲の生徒たちは言葉を失い、静かにざわつき始める。



学園を守護していた結界に、突如として亀裂が走った。

普段は目に見えない結界だが、異常が起きた瞬間に、その姿が淡い青い輝きとして現れた。


夜の静寂を裂くような鋭い音が響き渡り、結界を維持していた星紋具がかすかな揺らぎを伴って光を失っていく。


そして次の瞬間、ガラスが砕け散るような破裂音と共に、学園を覆っていた守護の結界は霧散し、無力な空間がむき出しになる。


「結界が……崩壊した!」


警備を担当していた術士が悲鳴にも似た声を上げる。

周囲にいた者たちも次々に顔を上げ、天空に現れた異変を目の当たりにする。


結界の消失に伴い、学園内の空気が微妙に揺らぎ、不穏な波動が周囲に広がっていくのを、誰もが肌で感じ取った。


結界の崩壊がもたらした緊張感の中、空の遠方に何かが現れるのが見えた。

それは星喰い特有の様々な色彩を帯びた存在だった。


それぞれの個体はまるで異なる色合いと質感を持ち、目が眩むような鮮やかな赤、深海のような青、あるいは黄昏を思わせる金色など、見た者の心をかき乱すような不協和音を伴った姿をしている。


彼らの体表は光を反射する部分もあれば、吸収するかのように暗く沈む部分もあり、まるで形態そのものが常に変化しているかのようだった。


「来るぞ……星喰いだ!」


見張り台に立つ警備術士が叫び、周囲の警報が一斉に鳴り響いた。

学園を囲む森の木々がざわめき、街を駆け抜ける冷たい風がその訪れを告げる。


遠くの空で飛び交う星喰いたちの動きが徐々に明確になり、それがこちらへ向かっていることが明らかになった。


星喰いの一部は翼を広げて空を裂くように舞い、別の個体は地面を這うように蠢きながら進む。

その動きは滑らかでありながらも、どこか機械的な不気味さを感じさせた。


さらに、触手を持つ個体が空中に浮遊しながら、まるで獲物を探るかのように触手を四方八方に伸ばしている。学園の門の近くで地を揺るがせるような音を立てながら移動する巨大な個体の影が、壁に迫る恐怖を一層際立たせた。



「全員、準備を! 防御術を展開しろ!」


指揮を執る教員が厳しい声で命じる。


星喰いの襲来は明らかに結界の崩壊と関係があり、学園内の防御が脆弱化した今、迅速な対応が求められていた。


一方で、結界が崩壊しても、街全体を覆う広範囲の防御結界は辛うじてその機能を保っていた。

しかし、その結界にもわずかなひび割れが生じ、薄くかすかな振動がその不安定さを示していた。


結界の外側にある街の防壁は、今にも突破されそうな圧力を受けながら、辛うじてその形を維持している。


「この街の結界も、時間の問題だ……。」


一人の警備術士が呟く。

その言葉は周囲にいる者たちの耳に届き、恐怖の連鎖を引き起こした。


しかし、彼らに絶望している暇はない。

今は何としてでも学園内で星喰いを食い止めることが最優先だった。


その頃、高級宿の一角にいるセリーネが、星喰いの特異な色彩を放つ姿を遠目に捉えていた。


彼女は月明かりに照らされた庭園に立ち尽くし、冷たい夜風に吹かれながら、学園で起きている異変の大きさを悟る。


「これは……ただの偶然じゃない。結界が狙われている……!」


彼女は強く拳を握り、何かを決意したかのように学園の方角を見据えた。



星喰いたちが街の外側にある学園の門に近づくにつれ、その動きがさらに激しさを増す。

一方で、学園の内部では防御術士たちが次々と陣形を展開し、応戦の準備を整える。だが、彼らの表情には焦りと不安が色濃く刻まれていた。


遠方の空では、巨大な星喰いの影が月を覆い隠すように現れ、その姿が地上に不気味な影を落とす。

そして、学園を囲む最後の結界が光を微かに放ちながら、ゆっくりと歪み始めた――。


「どうして……ここまで完璧だった結界が……。」


誰もが心に浮かべた疑問。その答えはまだ誰の手にも届いていない。

だが、この夜が明けるころには、学園と街を巡る星喰いとの戦いが激化し、すべてが変わる運命が待ち受けている。


学園の結界崩壊と星喰いの接近により、学園は混乱に陥っていた。


生徒たちは戦闘訓練を受けているとはいえ、実際に星喰いと対峙できる実力者は多くない。

恐怖に足をすくませる者もいれば、慌てて武器や防具を手にする者もいる。


学園内では教師たちが指示を飛ばし、生徒たちに退避経路を示しながら、志願者には防衛のための陣形を取るよう指示する。


「ランキングが1000番以内の生徒で、学園防衛に志願してくれる者はここに!1000番より下の生徒は避難を優先しろ!」


一方で、星喰いの襲撃を目の当たりにして立ちすくむ生徒もおり、その姿が緊迫感をさらに増幅させる。


学園の結界が崩壊したという報せを耳にした瞬間、レヴァンは剣を握りしめ、迷うことなくギルド「星の光」へと足を向けた。


道中、響き渡る警報の音と人々の叫び声が、彼の心をさらに急き立てる。夜風が頬を叩き、星喰いの気配が空気中に漂うような不穏さを肌で感じながらも、彼の足は止まらなかった。


(学園の結界が崩壊したということは、街の結界も危ういかもしれない。ギルドで作戦が立てられているはずだ。すぐに動かないと街自体が危ない。)


彼の頭の中は冷静だった。


学園、ギルド、軍が連携しないと、この状況を突破できない可能性が高い。

さらに、彼は単独での行動は無謀だと知っていた。これまでの戦いを通じて学んだ仲間との連携こそ、最も効果的な対応策だと判断していた。


街中を駆け抜ける中で、彼の視界には様々な光景が飛び込んできた。

避難する人々、恐怖に凍り付いた表情、そして対星喰い用の防衛術を展開しようとする術士たちの必死な姿。それらを横目に、レヴァンは己の役割を心に刻む。


「守るために力を手に入れた。それをここで使わずにどうする?」


ギルドの建物が視界に入ったとき、レヴァンはさらに速度を上げた。

夜の闇の中で灯るギルドの明かりが、彼に希望を与えるように見えた。


扉を勢いよく押し開けると、すでに何人かの所属者が集まっていた。

ギルド内は慌ただしい雰囲気に包まれていた。


グラハム支部長が指示を出し、星喰い襲撃への対応策を練っている。

レヴァンは真っ先に彼の元へ駆け寄り、状況を尋ねた。


「グラハム支部長、状況はどうなっている?」


「レヴァン、来てくれて助かる。状況は最悪だ。学園の結界は完全に崩壊したが、街全体の結界はまだ保たれている。しかし、それも時間の問題だ。何より、先に学園の結界が崩壊したのが気がかりだ。」


グラハムの言葉は緊迫感に満ちていた。


それもそうだ。

対星喰い結界は、学園のどこかから展開されている。

それも、学園そのものと街全体を覆う形で二重の結界になっている。仮に外側に位置する街の結界が破壊されても、学園の結界が維持されていればそこが避難所になるのだ。他の国でも同様に、中心となる施設から二重に結界を展開している。


「俺はどう動けばいい?」


レヴァンは即座に問い返した。

その表情には迷いはなかった。


グラハムは彼を見つめ、冷静な声で答える。


「お前の力と経験が必要だ。学園周辺の防衛ラインを強化するために所属者を率いて、防衛にあたってくれ。結界の修復は、学園にある星紋具を修復師が直した後、学園総帥であるルディアス・ファルグレイ殿が結界を再起動させる。契約者のお前は大きな戦力だ。一番大切な所を任せる。」


「街の外はどうする?」


「街の外は、軍と星の光以外のすべてのギルドが担当する。だが、あの大群相手だと街に侵入されるだろう。そこで、1人1人の戦闘力が高い我々が、街の中に散って防衛にあたる。」


レヴァンは力強く頷き、ギルド内にいる仲間たちを見回した。

いずれも初対面の者ばかりだったが、その誰もが真剣な眼差しで彼を見つめていた。


「行こう。星喰いに学園を蹂躙させるわけにはいかない。」


その一言で、仲間たちは一斉に準備を整え始めた。

武器を手に取り、防具を装着し、それぞれの役割を確認しながら迅速に動く。


レヴァンは自分の剣に目をやりながら、風の加護による感覚を研ぎ澄ませた。

その力が剣に宿り、風の流れが手元に集まるのを感じ取る。



ギルドを出発した一行は、夜の街を抜けて学園へと向かった。

彼らが駆け抜けるたび、街の人々がその背中を見送り、安堵の表情を浮かべる。


星喰いの恐怖が迫る中で、彼らの姿は希望そのものに見えた。


「急げ!まずは、学園の状況を確認する。」


レヴァンの声に仲間たちが一層速度を上げる。

学園が近づくにつれ、空気の重さが増していくのを全員が感じていた。


学園の門が視界に入った瞬間、遠くの空に異様な光が浮かび上がった。

それはまるで、結界が最後の力を振り絞っているかのような脆い輝きだった。


「一体、何が起きている……!」


レヴァンの心は焦るが、その足は迷いなく前へ進んでいた。

そして彼は剣をしっかりと握り直し、これから始まる戦いに向けて意志を固めた。


(ここは絶対に守り切る!)


夜空に浮かぶ星が微かに輝く中、レヴァンたちは学園へと突き進んで行った。

その背中には、無数の思いが託されていた。



学園の外縁から、逃げ惑う生徒たちの足音が響き渡る。

その中の一人が息を切らしながら駆け寄り、レヴァンに訴えかけた。


「学園の庭園に、黒い結晶のようなものが現れて、そこから次々と星喰いが湧き出してる! すごい数だ……もう、どこにも逃げ場がない……!」


その言葉を聞いた瞬間、レヴァンは表情を険しくした。


「それだけじゃないんだ!」

別の生徒が恐怖で震えながら続ける。


「手強い星喰いが現れて、学園総帥のルディアス・ファルグレイ様が生徒の逃げる時間を確保するために応戦している! でも、あの星喰い……今まで見たどんなものとも違う……」


「ルディアス殿が直接出ているのか……」


レヴァンは息を詰め、総帥が自ら戦場に立つ異常事態を直感的に悟った。

それだけではない。


別の生徒が震える声で続ける。


「ランキング上位の生徒たちも戦ってるけど、全然押し返せてない……みんな、本当に追い詰められている……」


周囲からの情報が次々に流れ込む中、レヴァンは冷静に剣を握りしめた。


「俺も向かう。お前たちは避難を優先しろ。」


その時、低く唸るような地鳴りが響き渡り、一瞬の静寂が場を包む。

次の瞬間、学園の門が轟音と共に崩れ落ちた。鉄の扉が裂け飛び、破片が四方に散らばる。


黒い結晶から生み出された星喰いたちが、学園から一斉に街へ突入してきた。


「クソ、行かせない!」


誰かの叫び声が戦場の緊張感を引き裂き、生徒たちが慌てて星紋術を展開する。

素早い動きで建物の間を駆け抜け、長い触手を伸ばして灯りを飲み込み、窓ガラスを次々に打ち砕いていく。



学園の中央部では、ルディアス・ファルグレイが星喰いの主である特異個体と激闘を繰り広げていた。その手には白鋼の剣が握られ、一振りするたびに光の刃が星喰いを切り裂いていく。


しかし、星喰いは再生能力を持っているのか、斬られた箇所から再び体を形成し、総帥に襲い掛かる。


「ここで押し返さなければ、学園も街も終わる……!星紋の力を持つ者たちよ、奮起せよ!!」


星紋術で強化されたルディアスの声が学園中に響き渡り、学園内で戦っていた教師や生徒たちは押されている状況からさらに奮起する。


彼の星紋術が白い輝きを放ちながら周囲を包み込んでいた。

総帥の力がかろうじて学園中央部からの星喰いの侵攻を阻止していたが、すべての星喰いを阻止できているわけではないのは遠目からでもわかった。


一方、ランキング上位の生徒たちは、群れをなす星喰いと激しく交戦していた。

火、雷、水といった多彩な星紋術が放たれる中、それでも星喰いの数を抑え込むには至らない。


苦戦の色が広がる生徒たちの顔に焦りの表情が浮かんでいた。



学園内から発生している数体の星喰いを前に、レヴァンは5名の星の光の仲間たちを集め、迅速に指示を出す。


焦りを振り払うように深呼吸し、全員の顔を見渡した。

戦場の緊張感の中でも、彼の声には冷静さが宿っていた。


「みんな、聞いてくれ! 今の状況では、学園全体を守るには各所で戦力を分散させるしかない。戦闘力の高い俺たちが、まとまって動くのは効率が悪い。すぐに動いてくれ!」


レヴァンは一人ひとりに具体的な指示を出す。


「エリオット、お前は学園北側に急行し、星喰いを撃破してほしい。一番情報もなく見えない所だ、気を付けろ!」


「了解!」


「エリシア、学園の西側を頼む。そこに集中して現れている星喰いの群れを引き付けつつ、逃げ遅れた生徒がいれば必ず助けるんだ。」


「任せてください!」


「キース、東側の守備を固めてくれ! 煙があがっているのが気になる。街への進行を阻止してほしい。」


「やばいのがいそうですね、全力で倒しに行きます。」


「フローラ、正面入口を守ってくれ。漏れ出てくる星喰いの撃破と生徒の救助をしてほしい。」


「はい!味方には癒しを、敵には植物属性の力を思い知らせます。」


「デイン、お前の役割はその機動力を生かした遊撃と情報共有だ。東側から時計回りに支援に回ってくれ。最初はキースと共に動き、各所で対処・状況を判断。星紋術による合図の花火を打ち上げろ。青は討伐完了、黄色は応戦中、赤色は救援だ。」


「了解です。と、なると…隊長は中央ですか?」


「あぁ。俺は学園総帥と合流して、全体の状況を確認する。その間、みんなは自分の役割を全力で果たしてくれ。それぞれの場所で、星喰いを撃破し、逃げ遅れた生徒たちを守ってくれ。これが星の光の使命だ!」


「「了解!」」


(星喰いがこのまま街にまで到達したら……全てが終わる!)


レヴァンは剣を強く握りしめた。その剣の周りには風が渦を巻き始め、周囲の空気が震えた。


学園に入る途中、背後から別の逃げ遅れた生徒の声が響いた。


「お願いだ! 他の仲間も助けてくれ……!」


その叫びに応じるように、レヴァンは振り返り、力強く頷く。


「風よ!」


レヴァンの言葉に呼応するように、風の力が彼の周囲を守るように旋回する。


星喰いがさらに街へと侵入しようとする中、レヴァンの目は鋭く光り、風を纏った剣を構えた。

その背中には迷いの影はなく、ただ前を見据える決意があった。


「俺が突破口を開く!各自、役割を果たせ!!」


仲間たちは力強く頷き、それぞれの役割を胸に刻み込んだ。

短い激励を交わした後、全員がそれぞれの持ち場へと向かっていった。



レヴァンは仲間たちを送り出した後、一人、総帥ルディアス・ファルグレイが戦う学園の中央庭園へと向かった。


そこにはすでに数体の星喰いが集結しており、総帥が孤軍奮闘している姿が見えた。


「ルディアス殿!」


駆け寄ったレヴァンに気づき、総帥が軽く振り返る。


学園庭園で押し寄せる星喰いの群れと対峙する中、総帥ルディアス・ファルグレイの白鋼の剣が次々と星喰いを斬り伏せていく。その場に駆けつけたレヴァンを見つけ、ルディアスが鋭い視線を向けた。


「レヴァン君か。良いタイミングだ。」


その声には焦りの色はなく、しかし状況の深刻さが滲み出ていた。

ルディアスは大剣を振り下ろしながら冷静に続けた。


「この星喰いどもは一筋縄ではいかん。見えるか、あの黒い結晶が。」


レヴァンは庭園の中央に目を向けた。

結晶は不気味な光を放ちながら、まるでその場を支配するような威圧感を漂わせている。


そして、結晶を囲むように巨大な星喰いの主が静かに佇んでいた。

その姿は異形でありながらどこか美しさをも帯び、黒い結晶を守る意志がその存在から感じ取れる。


「避難中の生徒から報告を受けました。その結晶が星喰いの出現元なんですね?」


「その通りだ。だが、ただの結晶ではない。あれは星喰いを呼び寄せる触媒だ。あの結晶を破壊すれば、この星喰いたちの出現を止められるかもしれん。」


ルディアスの言葉は落ち着いていたが、その奥には緊張感が滲んでいた。


「結晶を破壊するためには、まずあの星喰いの主を倒さなければならない……簡単には近づけんぞ。」


その一言に、レヴァンの体に緊張が走った。

しかし、彼の目は迷いを見せることなく、剣を握る手に力を込めて応えた。


「わかりました。あいつを倒せば、全てを終わらせることができるんですね。」


「あぁ。そのためには君の力が必要だ、レヴァン君。あの特異個体は私が倒そう。周りの敵が多く厄介だ。頼めるかね?」


ルディアスは一瞬レヴァンを見つめた後、口元に薄く笑みを浮かべた。


その言葉にレヴァンは大きく頷き、風の刃を発生させた。

渦巻く風が彼の周囲に集まり、鋭い刃となる気配を感じさせる。


「分かりました。総帥、任せてください。」


「良い覚悟だ。」


二人の視線が交わり、その瞬間、互いの間に強い信頼が生まれた。

ルディアスの剣が再び光を放ち、レヴァンの風が勢いを増す。



結晶を守る星喰いの主が不気味な咆哮を上げると同時に、空気が震える。

まるで決戦の始まりを告げるかのように、庭園の周囲に漂う闇が一層濃くなった。


「行くぞ、レヴァン君!」


ルディアスの声に応えるように、レヴァンは剣を構え直した。


「はい! 絶対に止めてみせます!」



風と白鋼、二つの力が交差しながら、星喰いの主へ向けて駆け出す二人。

黒い結晶を巡る死闘が、いよいよ幕を開ける――。


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