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悠久の星紋剣士  作者: 蒼野 レイジ
第1章 ーヴァルストラ共和国編ー 忘却の剣士
2/69

荒廃した地に立つ剣士


風が吹き荒れる荒野。


砂塵が舞い上がる中、荒廃した村の跡地にひとりの剣士が立っていた。

彼の名はレヴァン・エスト。


普通の剣より少しだけ長い剣を背負い、鋭い眼差しで周囲を見回す。

その剣は手元を守るガードが付いており、直線的な刀身には美しい模様が浮かび上がっている。そして、光の筋が走るたびに鈍い輝きを放つ。


この村も、かつては人々が生活し、星紋術(せいもんじゅつ)を学ぶ者たちの拠点だった。

しかし、星喰い(ほしくい)の襲撃により無惨に破壊され、いまやその面影すら残っていない。


星喰い(ほしくい)——それは千年前に起きた大災厄以来、人類の前に立ちはだかる最大の脅威だった。

通常の武器は一切効かず、大地を揺るがし、街を飲み込み、文明そのものを崩壊させた存在。星紋術の力のみが対抗できる唯一の手段である。


星紋(せいもん)——千年前の大災厄から人類が発現した星喰いに対抗する力。

自然に発現するか過去の経験や危機的状況下での強い感情の高ぶりで発現する。

発現した際は、使える星紋術のイメージが浮かぶ。星紋の見た目は、持ち主により異なり一定条件を満たすと変化する。

大災厄以降、人類はマナを感じ取れるようになっており、星紋の力と合わせることで星紋術を発動できる。マナの量と質、星紋によって扱える星紋術の強さや大きさが変わる。


星喰いの脅威は千年前から続いており、恐怖と憎悪が人々の心に刻み込まれている。


「ここが奴らの巣か…」


レヴァンの低い声が、吹きすさぶ風に掻き消される。かつての建物は軒並み崩れ去り、砂に埋もれた瓦礫が無造作に転がっていた。


彼の背後では、ギルド「星の光」の仲間たちが戦闘態勢を整えながら、緊張した面持ちで待機している。「星の光」は、星紋術士や熟練の戦士たちが集うギルドであり、星喰いとの戦いの最前線に立つ存在だった。


とはいえ、このチームは無名の者たちが集められた即席の部隊に過ぎない。

ベテランと言えるのはリーダーであるレヴァンただ一人であり、若手の星紋術士や戦士たちは、星喰いとの戦闘経験が乏しい者ばかりだ。


「レヴァンさん、あれを見てください!」


仲間のひとり、大剣を携えた屈強な戦士が鋭い声で指さす。

その先には、異形の怪物「星喰い」が姿を現していた。

鋼鉄のように硬い皮膚を持ち、筋骨隆々とした巨体。その姿は一目で圧倒的な力を感じさせ、空気が震えるような威圧感を漂わせていた。

巨木のように太い腕を構え、敵意をむき出しにしたその姿に、誰もが一瞬言葉を失う。


「各自、持ち場に着け!」


レヴァンの声が荒野に響く。

その指示を受け、仲間たちは動き出した。慣れた手つきで武器を構え、それぞれの役割を果たそうとするが、明らかに動きが硬い。

初めて星喰いと対峙する者が多く、誰もがその巨大さと異質さに飲み込まれそうになっていた。


「俺が引きつける。お前たちは支援を頼む。」


レヴァンは自ら一歩前に出た。

彼が持つ剣が青白く光り、万物に宿るとされるマナと彼自身の星紋の力が剣全体に宿る。

はっきりと視認できる力強い青い光はその純度の高さを証明し、美しさすら感じさせる。その光景に仲間たちは息を呑んだ。


星紋術は、人によって性質が大きく異なる。レヴァンが放つ星紋術は、まるで自然そのものと調和しているかのようだった。


「行くぞ!」


掛け声とともに、レヴァンは星喰いへと突進した。星喰いもまた大きな咆哮を上げ、腕を振り下ろしてくる。大地が割れんばかりの衝撃音が響き渡り、砂埃が舞い上がる。その破壊力は圧倒的だったが、レヴァンは冷静だった。


「ドォン!」


星喰いの腕が地面に叩きつけられる。その瞬間、レヴァンの身体が青白い光をまとい、風のように加速した。次の瞬間には巨腕をかわし、その脇腹を鋭い一閃で斬りつける。


「ズバン!」


剣撃が硬い外殻を砕き、星喰いが苦悶の咆哮を上げる。

その声は遠くまで響き渡り、鳥たちが一斉に飛び立った。仲間たちはその動きを目の当たりにし、驚愕の表情を隠せない。


「なんて速さだ…!」


レヴァンは敵の動きを観察しつつ、再び間合いを詰める。星喰いが怒り狂い、両腕を振り回しながら突進してきた。地面が抉られ、岩が砕け散る中、レヴァンはさらなる星紋術を発動した。


「身体強化!」


マナと星紋の光が再び彼を包み、身体能力が限界を超えていく。

剣を振り上げる動作ひとつにも、力が宿り、見えない光の筋が周囲に広がった。


その一瞬、彼の記憶に断片的なイメージがよぎる——かつてどこかで見た光景。しかし、それが何であるかまでは思い出せない。


星喰いの咆哮が再び響き渡る。倒れる気配はない。むしろ、その怒りは頂点に達したかのようだった。


「まだ終わらないか…。」


レヴァンは剣を構え直し、気を引き締める。

星喰いが繰り出す攻撃がさらに激しさを増し、荒野全体がその暴力に飲み込まれそうになっていた。仲間たちは星紋術による支援を試みるが、その威圧感に押され、動きが鈍る。


「耐えろ、俺が仕留める!」


レヴァンの言葉に奮い立つように、仲間たちは必死で陣を維持する。

しかし、星喰いの圧力は彼らをじわじわと追い詰めていった。巨大な腕が再び振り上げられ、今度は全員を巻き込む一撃を放とうとしている。


「ここで止める!」


レヴァンは星紋術をさらに強化し、剣を大きく振りかざした。その動作に合わせて光が周囲を包み込み、荒野が一瞬静まり返った。その輝きは、次なる攻撃の前触れであるかのようだった。

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