↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】血まみれシュレッダー1 〜戸塚結実の追憶〜  作者: ゆこさん
5章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

96/191

5章-2.追放(1) 2021.11.18

「ユミちゃん。パンケーキって作れる?」


 仕事終わり。帰宅途中にアヤメは唐突に話題を振ってきた。


「barの設備があれば、十分作れると思います」


 パンケーキを作ろうと思った事は無いが、材料さえあれば作れるとは思う。残念ながらユミの部屋にある調理器具では厳しい。大き目のボウルや泡だて器、作業スペースを考えると少し厳しいなと思う。ただ、barのキッチンが使えるのであれば、調理器具が揃っているので可能だろう。

 そう考えたものの、いつもパンケーキはお店に食べに行っていたのに、どうしてユミが作れるかを確認したのだろうか。疑問に思い首を傾げる。


「無限にパンケーキ食べたいなって!」

「!」


 実にアヤメらしい理由だった。今度はパンケーキパーティだろうか。


「この後食べるなら、材料買って帰ります? あ、でもbarのキッチンの使用許可が取れるならですけれど……」

「使用許可なら任せて! シュンレイに確認するね!」


 アヤメはニコニコしながらスマートフォンを取りだし電話をかける。


「あ! シュンレイ! パンケーキをbarで作りたいんだけど、今日この後キッチン使っていい? うん。えー。そこをなんとか! 食べたい食べたい食べたい!」


 アヤメがごねている。力技だ。これはきっとシュンレイが折れるだろうなと思う。

 ユミは、そんなアヤメの様子を静かに見守る。一人百面相をしながら懸命に電話で話しているアヤメの様子はとても可愛らしい。相手には声しか伝わっていないというのに、身振り手振りも激しいのだ。その様子に、思わずクスっと笑ってしまった。


「お願い!! うん。うん。分かった! ありがとー! じゃぁね!」


 アヤメはニコニコしながら通話を切りユミの方を見た。


「使ってOKだってー!」


 きっとダメと言われたに違いない。それを無理矢理覆させたのだろう。シュンレイが不在の時は基本的にキッチンは使用不可だ。恐らく外出しているなどで体が空いていないのだろうと推測できる。


「使用時の条件とかって、何かありました?」

「なんか、フクジュを付けるって!」


 そもそも不在時に使用不可というのは、シュンレイがいない場合はbarを解放していないためだ。不特定多数の人間が、barが空いているからと不在時に来てしまった場合に、対応が出来ず面倒な事になる。トラブルを避けるためにも、基本はシュンレイがいる時にbarを開けて使用するということにしている。


 ユミはスマートフォンで、パンケーキの作り方を検索し、必要な材料を確認していく。作り方も一通り確認した。


「楽しみだなー!」


 アヤメはとても機嫌が良さそうだ。こんなに喜ぶのであれば日頃から作ればよかったと思う。


 帰り際にスーパーへ寄り、パンケーキと一緒に食べたいフルーツなども買い、ユミ達はbarに持ち込んだ。barの扉の鍵は既に空いており、室内にはフクジュがテーブル席の椅子に座って書類を読んでいた。恐らく仕事中に駆り出されたに違いない。


「フクジュさん、こんにちは。なんかごめんなさい」

「いえ。大丈夫ですよ。論文を読んでいるだけですので場所は問いません。お気になさらず」

「フクジュありがとー!」


 そうは言っても、薄暗いbarよりは明るく広い研究施設内で読み込んだ方がいいに決まっている。少し申し訳ない気持ちになる。

 フクジュが座る席のテーブルの上には、たくさんの書類が置かれていた。ちらっと見えた書類は英語で書かれたような物に見えた。日本語以外の書類も複数あるようだ。素直に凄いなと感じる。


 ユミは早速パンケーキを作る準備を始める。買ってきた食材ですぐに使わないものは冷蔵庫にしまい、エプロンをつけ、必要な材料をキッチンカウンター上に用意していく。

 アヤメにはフルーツ系を細かく切ってもらうようお願いした。ナイフで作業ができるものについてはアヤメも戦力になるため、ご機嫌で作業をしてくれる。

 たまにアヤメはこっそりつまみ食いしているようだ。ユミは笑いそうになるのを堪えて気が付かないフリをしてあげる。


「あ、ユミさん。ホットプレートがあるそうですが、お使いになりますか?」


 突然フクジュに声をかけられる。


「はい。あるなら是非使いたいです」

「分かりました。用意致しますね」


 フクジュはそう言ってbarのバックヤードへ行ってしまった。ホットプレートがあるならば、随時焼きながら食べる事が出来る。


 しばらくするとフクジュはホットプレートを持ち戻ってきた。コンセントが近くにあるテーブル席にセッティングしてくれている。


「プレートは洗いましたのでそのままお使い頂けます。電源を入れて温めておきますね」

「ありがとうございます!」


 非常に助かる。こんなにフクジュをこき使ってしまって良いのだろうか。本当に申し訳なくなってくる。

 せめてお礼に出来上がったパンケーキでも食べてもらいたいなと思う。


 ユミは生地を大きめのボウルに作り、ホットプレートが用意されたテーブルへ運ぶ。アヤメがカットしたフルーツ類も小皿に乗せテーブルへ運んだ。泡立てが終わった生クリームを袋に詰めて、好きなだけ絞って食べられるように用意する。


「アヤメさん! 焼きましょう!」

「うん!!」

「フクジュさんは甘いもの大丈夫ですか?」

「え、はい。甘いものは好きです」

「了解です!」


 ユミはふわふわの生地を温められたプレートに乗せていく。ヘラで形を少し整えつつプレートに6つの塊で乗せた。アヤメはその様子をキラキラした目で見ている。可愛い。


「生地って、生でも美味しそうに見えるよね!」

「アヤメさん。つまみ食いはダメですよ。お腹壊しちゃいます」

「えぇぇ……」

「少し待てば美味しいパンケーキになりますから! もうちょっと待っててください」

「はーい!」


 アヤメは元気よく返事をしてへにゃっと笑う。その笑顔につられてユミも微笑んだ。

 ユミは焼き加減を少し確認し、フライ返しを使ってひっくり返す。すると綺麗に焼き色が付いていた。それだけで食欲をそそる。レシピの画像で見た通りふわふわに出来そうだ。甘く香ばしい香りが漂い、出来上がりがより一層待ち遠しくなる。

 チラリとアヤメの姿を見ると、うずうずしているようだった。作るところから一緒に楽しめるというのはまた違った良さがあるなと感じる。

 間もなくすると、裏面にもしっかり焼き色がつき中にもしっかり火が通ったようだ。ユミは皿に2枚ずつパンケーキを盛り付け、粉糖を薄くふりかける。


「アヤメさん、これに、好きなだけフルーツとクリーム乗せてください!」

「はーい! 任せて!」

「フクジュさん、苦手なフルーツとかありますか?」

「いえ。特にはありません」

「了解です!」


 ユミは自分の分とフクジュの分の皿に盛り付ける。いちごやブルーベリー、キウイやバナナなど彩りを考えて乗せる。そして生クリームを添えて、シロップをかける。見た目から美味しそうだ。


「フクジュさん。良かったら食べてください。今日のお礼です。あ、でも、こちらに置いたら邪魔になっちゃいますか?」


 フクジュが座る席のテーブルの上には書類が沢山あり、スペースがない。無理に置くと汚してしまいそうだ。


「フクジュもこっちで一緒にたべよー! 休憩ってことで!」


 アヤメが手を振り呼んでいる。


「そうですね。せっかくなので、御一緒させていただきます」


 フクジュは立ち上がり、ホットプレートのあるテーブルまで来てくれた。

 作って冷やしておいたアイスティーを3人分グラスに注ぎ飲み物を用意して、ユミもテーブルに着いた。アヤメのパンケーキの皿を見ると、これでもかというほどフルーツが盛られ、生クリームが掛けられている。きっとこれがやりたかったのだろうなと思うと可愛らしくて笑ってしまう。


「いざ! いただきまーす!」


 アヤメの元気な挨拶に続いて、ユミも手を合わせ挨拶をした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ユミのパンケーキ食べたい……からの、壁ドン! 壁ドンは思ってたのと違う(-д- 三 -д-)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。