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4章-1.期日(5) 2021.8.13-2021.8.14

「今回の依頼の詳細を説明しまス。晩翠家の規模は大きくありませン。拠点となるのは、この建物のみでス」


 シュンレイは、拠点を示す航空写真と建物外観の写真をユミ達に見やすいように広げる。

 その写真には、時代劇にあるような偉い人が住む御屋敷を思わせる外観の低層木造建物が写っていた。由緒ある家というイメージだ。周りは塀で囲まれており、立派な門扉がついていた。航空写真を見るに、敷地はそれなりに広い。


「人数は15人。基本的に戦闘できる人間はいませン。毒の罠にさえ気をつければ問題ないでしょウ。可能な限り屋内には入らないようニ。攻撃は必ず避けるようニ」

「了解! んでも、変だね。戦えもしないのに喧嘩売ってくるなんて」

「えぇ。色々と理由があって分かってやっているのでしょウ。ただ、こちらがその理由を汲む必要はありませン。報復するだけでス」


 確かにアヤメが言うように、おかしな話だと思う。武力を持たないのに喧嘩を売るなど自殺行為だ。もしくは別組織に守られているなどあるのだろうか。


「他の組織の人間に守られているという可能性はないんですか?」


 ユミは気になり尋ねてみる。シュンレイの事だからその可能性は無いのだろうとは思う。だが気になってしまう。


「その可能性も考え調査しましタが、他の組織が絡んでいる様子はありませン。毒自体を使用したのは晩翠家ではありませン。晩翠家はあくまで作成し譲渡したのみ。従っテ譲渡先が晩翠家に入り込んで武力となっていル可能性を調べましタ。しかしその譲渡先の組織は、全く守る様子も援護する様子も無ク、晩翠家は無防備な状態のままと言えまス」

「なんか……。また怪しくない?」

「えぇ。怪しいでス。何か理由は必ずあルはずですが、この家を潰ス際には、その理由が障害にはならないと考えていまス」


 不可解さは残るものの、殲滅を行うのには問題ないとの判断らしい。


「この晩翠家で唯一戦う事が出来ルと見られているのが、このフクジュという男でス」


 シュンレイはフクジュという男の写真を複数枚テーブルに並べる。黒髪の短髪の男性だった。外見には特段特徴と呼べるものは無い。

 写真の隣に男のデータをまとめた資料も置かれる。毒を使用した戦闘ができるとの事。武器としては毒を仕込んだ小刀を使うようだ。他にも戦闘時に毒針や毒単体など使用した事が有るようだ。

 身体能力は非常に高く、SランクからSSランクで見積もられている。ランクに関わる仕事をしていないためランクはおおよその値らしい。


「警戒すべきはこの男のみでス。この男だけは可能な限りバラバラにしないよう二。特に頭部。死体を使うつもりでス」

「りょーかーい!」


 死体を使うとは……?


 死体には何か使い道があるのだろうか。ユミはよく分からず首を傾げる。


「ユミさん、こちらの界隈では、死体には使い道が沢山ありまス。特にプレイヤーの死体というのは価値がありまス。解剖し研究することで技術を盗むことが出来、特に脳は非常に多くの情報を持っているため、高値で取引されたり交渉の材料とされまス」

「成程……」


 色々と怖い世界だなと感じた。

 あまり脳から技術を盗めるというイメージが湧かない。一般人ではそもそも盗むべきものがなかったからそういった話を聞かなかっただけなのかもしれない。プレイヤーに見られる遺伝の情報や一族で受け継がれる技術などは脳に情報が集約されているのかもしれないなと想像した。


「私からの説明は以上でス。資料はお渡ししまス。分からなければ都度聞いてくださイ。明後日、8月16日を決行日としましょウ」

「はーい!」

「了解です!」


 ユミとアヤメは立ち上がる。シュンレイから依頼の資料を受け取り応接室を後にした。


 8月16日、明後日が決行日という事でかなり急だなと感じる。早い方が良いという事なのだろうか。

 ユミは毒を扱うプレイヤーと戦ったことは無い。初めての系統の敵になる。毒といえば、ザンゾーに捕まった際に使われた無臭の毒ガスがあったなと思い出す。あの時のように気が付いた時には盛られている可能性というのは恐ろしい。


 シュンレイが屋内に入らないようにというのは、こうした毒ガスへの対策故かもしれない。また、攻撃には触れないようにというのも毒が仕込まれている可能性を考慮してだろう。

 下手に弾いたり受け流すなどは良くないのかもしれない。避けることができるならば避ける方が無難なのだろうと推測する。


 とはいえ、毒にはどんなものがあり、どうやって戦闘に活かされるのかあまりピンとこない。毒といえば相手に接種させるものというイメージだ。資料にあったように毒針や武器に毒を塗る、そして毒ガスのようなもの以外だとさっぱり分からないというのが正直今のユミの状態だ。

 このような知識不足で乗り込んで問題がないのかと少し不安になる。


 ただ、戦闘できる人間がフクジュという男以外いないという事なので、それほど警戒するべきものはないという判断なのかなともとれる。

 ユミは、とりあえずはもらった資料を読み込んで、分からなければシュンレイに聞いてみようと考えた。


「ユミちゃん。今日の午後は予定ある?」

「いえ、特には」

「それじゃぁ、パンケーキ行かない?」

「行きます!!!」

 

 ユミは思わず大きな声で即答してしまった。

 昨日行くことができなかったパンケーキの新しいお店。楽しみ過ぎて胸が高鳴る。アヤメに改めて誘ってもらえて本当に嬉しい。


「それじゃぁ、13時半に雑貨店前に再集合で!」

「はい! 了解です!」


 二人はそれぞれ出かける準備をするため、自宅へと戻っていった。

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