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5章-7.突入(2) 2022.1.13

「よし! 行くよ!」

「OK!」

「はい!」


 アヤメの掛け声の瞬間。空に巨大な閃光が走り、周辺一体が光り輝いた。それと同時に大規模な停電が発生する。そして、遅れて落雷の轟音が鳴り響いた。辺り一体が一気に暗闇になる。街灯も信号機も何かもが消灯する。完全に予定通りだ。


 アヤメは一気に駆け出し、正面のガラスのオートドアをワイヤーで切り裂き破壊した。ユミとアイルもそれに続く。ガラスが崩れ落ちた際の激しく派手な衝撃音と共に、勢いを殺さずに建物内に侵入する。


「暴れるよっ!」


 アヤメは建物内に大量のワイヤーを張り巡らせた。ユミとアイルはワイヤーの広がりを確認しながら左右に別れる。建物エントランスには沢山の人間の気配がする。どの人間も暗転と突然崩れたエンジンドアのガラスによる衝撃音に驚きに固まっていたようだ。


「♪♪〜♪〜〜♪♪♪〜♪〜〜♪♪〜」


 ユミは鼻歌を奏でる。アヤメの足音、アイルの気配、それらを取り込む。今日のリズムは何だか賑やかで楽しい。


「あははははっ! 皆殺しだよっ!」


 ユミはチェーンソーのエンジン音を響かせながら駆け出し、フロアにいた人間に切りかかって行った。その瞬間ジリリリリと警報がフロアに鳴り響く。異変に気がついた人間が通報したようだ。


 1階フロアにいた人間は、どうやら受付や警備の人間だったようだ。戦闘要員では無いため、一方的な殺戮となった。メインエントランスの2層吹き抜け空間はアヤメが完全に支配し、ユミとアイルはバックヤード側に侵入して隠れていた人間を漏れなく処理した。

 例えバックヤードから逃げたとしても、メインエントランスにはアヤメが待ち構えている。裏口という裏口にはフクジュの毒の罠が設置されているため外部へ逃げることは出来ない。完全に袋のネズミだ。

 予定通り、特に問題もなくあっという間に処理が終わってしまった。これだけ派手に暴れたのだ。増援はそろそろだろう。ここからが本番だ。


 ユミとアイルはアヤメがいるメインエントランスに戻る。階段から大量の足音と気配がする。停電のためエレベーターからのルートは無い。敵がやって来るのはこの階段に限られている。南北の2箇所の階段室に面する扉前にそれぞれアイルとユミは待機する。


 しばらく待っていると勢いく扉が開き、屈強そうなスーツを着た男が複数人出てきた。


「んー。ちょっと期待外れかなー」


 ユミはそう呟きながら、一気に男たちに斬りかかった。敵は全部で10人いる。銃を携帯していたようだが、高ランクプレイヤーでは無い。せいぜいBかCランクだろう。このレベルでは、ユミの相手にはなり得ない。

 ユミは最後の一人の胴体を切断し、その男の心臓を抉り出した。そろそろおやつの時間だ。ユミはもぐもぐと食べながらエントランスホールへ戻る。


「ユミちゃん、マジで食べるんだ……」

「はい。凄く美味しいですよ?」


 ユミはアイルに笑顔で答えたが、アイルの笑顔は引きつっているようだ。


「むぅ……。お兄ちゃんにドン引きされた……。悲しい……。酷いよ……」

「ぐぅ……。ユミちゃん、その言い方は卑怯だ!」

「ちょっと。2人で何遊んでんの? そろそろプレイヤー来ると思うよ? 緊張感持って!」


 アヤメに怒られてしまった。


「えー。でも、アヤメさん。全然来そうにないよー?」

「確かに遅いね。というか、ユミちゃん。何でアイルをお兄ちゃんって呼んでるの?」

「えっと……。以前アイルさんにお兄ちゃんって呼んでってお願いされたので。呼ぶと喜んでくれるようなので」

「ふぅーん……」


 アヤメはジト目でアイルを見ている。アイルは目が泳いでいるようだ。


「ずるい! 私もお姉ちゃんって呼ばれたい!!」

「いや、そっち!? 俺は兄弟子だからお兄ちゃんなだけだよ? アヤメさんは師匠じゃん! お姉ちゃんにはならないんじゃない?」

「うぅぅぅぅ」


 アヤメはしおしおと萎れてしまった。そんなにお姉ちゃんと呼ばれたいのだろうか。喜んでくれるならお姉ちゃんと呼んでもいいかななどとユミは考える。しかし、ユミはそんな思考を振り払う。今はそんな事を考えている場合では無い。今は仕事中だ。さすがに緊張感が無さすぎるため、ユミは少し気持ちを引き締めた。


「あ。やっと来たみたいですよ。3人でしょうか。皆化け物化してますね」

「ほんとだ。事前データだと、元はAランクプレイヤーだね。化け物化してSランク位になってるかも」


 ユミ達は軽く武器を構える。やっと本命が来たとはいえ、こちらはこのメンバーだ。敵は明らかに格下となる。準備運動にはちょうど良さそうだ。


「さっさと片付けて、次のフェーズに行こう」


 アヤメのワイヤーが戦闘形態に展開されるのと同時にユミとアイルは切り込む。3人の化け物化したプレイヤーは全員男で、武器はそれぞれ銃、短刀、鉄拳だろうか。ユミに向かってくるのは、短刀の男だ。アイルの方には鉄拳の男が向かっている。銃を持った男は後方から援護射撃をしているようだ。

 ユミは飛んでくる弾丸を避けつつ、チェーンソーを振るう。しかし軽々と躱されてしまった。男はアヤメのワイヤーを避けながら攻撃を繰り出してくる。この時点で既にAランクレベルの動きではない。Sランクでも上位かもしれない。

 化け物化の精度が上がっているのだろうか。身体能力の向上幅が以前戦った化け物より大きい気がする。


 ユミは緩急を付けて攻撃を繰り出す。そして一気に男の左腕を切り落とした。しかし案の定、男は一切怯むことなく攻撃を繰り出してくる。ユミは男の攻撃を躱しながら全身を切りつけた。そして男がバランスを崩したところを蹴り飛ばし、アヤメのワイヤーの通り道に送り込んだ。

 いつも通り、男は綺麗にワイヤーで切断された。ユミがアイルやアヤメの方へ目をやると、そちらも問題なく既に片付いていた。ユミは念の為死体を細かく刻む。


「動くと嫌なので細かくしておきますね」

「はーい、ユミちゃんよろしく!」


 ついでに心臓を抉りだし、食べながら作業を行なう。化け物化した人間の臓器もなかなか美味しい。自分の血液が美味しくなさそうだったので、化け物化してしまうと食べられないかと思ったが、どうやらそうではないらしい。自分自身のみ食べられないのかもしれないと感じる。

 化け物化した人間の死体を細かく刻み終わると、ユミは周囲を見回す。動いている物は居ないようだ。チェーンソーに付いた肉塊を遠心力で振り払い、ユミはアヤメとアイルがいる所まで歩いていった。


「ユミちゃんありがとー。切断しても動くの気持ち悪くて……」

「いえいえ。私も動いているの見るの嫌なので、徹底的にやりたい派です」

「とりあえず、エントランスホールの第1陣は終わったね。ここからは別行動かぁ。アイル、ユミちゃん、気をつけてね。危なくなったら私のところに戻ってくるんだよ」

「はーい」

「頑張ってきます!」


 ここで、アヤメとアイルとはお別れだ。アヤメは引き続きこのエントランスホールに残り、外部からの援軍や逃げてきた人間の処理を1人で行う。番人の様な役割だ。一方でアイルは上階へ、ユミは地下階へと別れて攻め込む作戦だ。ユミは非常階段でアイルと分かれ、地下へと降りて行った。

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