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弓彦と異国のテロリストたち  作者: 廣瀬智久
8/12

ロケットランチャー

 話はさかのぼる。


 アフロ姿の山田刑事が同僚の佐川刑事と小倉駅のコインロッカーへ向かったのは早朝のことである。今朝早く、コインロッカーを管理しているJRの子会社の職員から、1つだけ鍵のかかったまま10日以上開かない大型荷物用のコインロッカーがある。不審物の可能性あり、という連絡を受けたためである。


「朝早くとはいえ面倒ですね」

 佐川があくびしながら話しかけてきた。

「仕方ないだろう」

 とアフロ山田が答える。

 

 時刻は朝八時。通勤客が大勢いる小倉駅である。

 その中をアフロ頭に妙に大きなサングラスをかけた大柄の男が歩いているのは何とも違和感を感じる。通勤客の数人が山田の格好を不思議そうに眺めていくが、本人は何とも感じていないし、佐川も慣れてしまったので格好に突っ込むことはしない。外見以外はいたって一般的な刑事なのだ。


「ここですか」

「ああ、ここだ」


 二人はコインロッカールームに入った。スーツケースが一つ余裕で入るくらいの大きなものが並んでいる。


「それにしても10日以上も開かないなんてさすがにまずいでしょう」

「不審物じゃなければいいな。ええと、2000って、なんかキリがいいな」

「そうですね」

「気を付けろよ」

「はい」


 佐川が大型ロッカーを開けると、中から1メートルほどの筒状の物体が現れた。先端がとがっている。


「何ですか。ってこれ見るからにやばくないですか」

「これは、昔4課にいた時見たことがあるぞ。連中が持っていた。ええと、RPG-7だ。爆弾処理班呼ぶぞ」

 山田は冷や汗をかいた。


 RPG-7は、携帯対戦車擲弾発射器のことであり、要はロケットランチャーである。RPGとはロシア語の頭文字をとっての名称であるが表記が複雑なので省略する。ロールプレイングゲームの略ではない。 


 この兵器は安価、簡便かつ効果的であるため、途上国の軍隊やゲリラ、民兵が好んで使用し、ベトナム戦争以降から現代に至るまで世界各地の武力紛争において広く用いられている。


 単純構造、取扱簡便、低製造単価で、発射機と弾頭を合わせ10キロ程度の重量で軽く、その割に高い威力を発揮する。この兵器によってゲリラやテロリストが容易に戦車をも破壊しうる火力を持った事が、いわゆる低強度紛争の活性化の要因の一つとなっている。


 主力戦車であっても、撃ち込まれた所が脆弱な部位であれば行動不能になる。だが、発射時の後方噴射≪バックブラスト≫が激しく、射手の位置が判明しやすいため、スーサイドウェポン≪自殺兵器≫と呼ばれることもある。撃った方も撃たれた方もかなりの損害を受ける、非常に危険な武器である。

 

 山田刑事は本部に連絡し、県警の爆弾処理班を要請した。その後、小倉駅は駅員から乗客・ビルのテナントの従業員から買い物客まですべての人が一時避難した。避難所が近くにある西日本総合展示場に設けられ、ホテルの従業員やJR職員などが一時避難。小倉駅周辺は一時騒然となった。


 昼過ぎ、ロケットランチャーに弾が入っておらず、運搬時に爆破するような危険がないことが確認され、避難命令は解除された。全国からテレビ局が集まり、騒然としていた小倉駅は次第に落ち着きを見せていた。


 ただ、ロケットランチャーの持ち主や、弾が発見されなかったことから、これを運んだのが何者なのかはわからないままだった。

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