( 7 )仮免とりました
本当は、年に1回だけの魔法使い試験。だけど、特別に仮免許を与える魔法試験所があった。
本試験所に併設して、毎日、受け付けている。
「君が受けるのなら、申し込み書を書いて。銅貨2枚が、試験料金だから。」
受け付けで、申し込み書に名前を書く。そして、簡単な試験を受けて合格のスタンプをもらえば「仮免許の魔法使い」だ。
魔法使いの試験は、14歳から。それまでに魔法使いの子供が取る仮免許。珍しい年齢のセレナは目立っていた。
「見て見て、魔法使いの仮免許よ!」
ジミーの子供たちは、喜んでくれた。ジミーは、独立する事を勧める。
「魔法使いではないから、大きな仕事を受けられないが。魔法使いたちが受けない小さな仕事なら出来る。報酬は小さいが、セレナさんなら腕がいいから稼げるようになるよ。」
「いいえ、ジミーさんと働きます!」
「私と?私は魔力が弱くて使い物にならない。お客様は、婆さんの顧客だけだし。」
「私が仕事して、ジミーさんが手数料を取って下さい。ジミーさんや、ジェニーや、ジェレミーと一緒に居たいんです。お願い!」
セレナは、一生懸命に頼んだ。ジミーの家族とは少し暮らしただけだけど、家族のように思っている。
そこを出たら、また、1人ぼっちになるのだ。
「分かった、泣かないで。セレナが、そう言うなら。一緒に仕事しよう。私も助かるよ。」
そして、仮免許魔法使いのセレナは正式なジミーの仕事のパートナーになったのでした。
早速、お客様です。依頼者は、絹の服を着た貴族でした。
「ここは、腕が良いと聞いて来ました。」
綺麗な顔をした若さま。威張ったりしない愛想の良い人で、お茶を出したセレナに礼を言う。
「ありがとう。ジミーさんのお弟子さんですか。僕は、フィリップス。君の名前は?」
ニコニコして聞かれると、お客様なので教えないわけにはいかない。
「私は、セレナです。フィリップスさま。」
「やめてほしいな、さまなんて。フィリップスさんで、お願いします。」
「さんですか?(貴族の人に?)」
「勿論!友達になってほしいな。この国に来たばかりなんだ。」
これは、貴族のナンパなのかしら。女の子だから、名前を呼んで友達になろうとしていたとか。この人も、オオカミだわ!
セレナは、ひきつりながら笑顔を造る。商売は、お客様が神さまです!
スタンレーの都の旅人の利用する店の趣向と傾向の調査。それが、フィリップスの仕事だった。
魔法とは関係ない市場調査。でも、「何でも屋ジミー」は何でもお仕事します。
「セレナちゃーん、お茶しようー。」
店を回って調査している処に、やってくるフィリップス。そんなに暇なら、自分でやればいいのにとセレナはイラッとする。
(こんな仕事より、魔法を使ってやりたいのに。せっかく、仮免許を取った意味が無いわ。)
付きまとわれてるのは、確か。だから、聞いてみた。
「フィリップスさんて、国に恋人がいるんでしょ?」
フィリップスは、嬉しそうにセレナに言うのだ。
「僕に興味を持ってるの?僕は、恋人は居ないんだ。」
「じゃ、どんな女の人が好き?」
「どんな?セレナみたいな人かな。」
「私ー?(口説いてる)」
「セレナは、お母さまに似てるから。」
「お母さま!(マザコンだわ)」
「そう、そっくりだよ。会いたくならない?」
「いえ、あのー、その気は無いです(公認なんて嫌!)」
「ええー、残念だな。」
口説いてるように見えるのに、変な目で見たり触ったりしない。本気じゃないみたいだ。
もしかして、からかってる?
「ね、もっとスイーツを食べて。セレナちゃん、痩せてるから。僕は、ぽっちゃりさんが好きだな。」
「私は、痩せててもいいの。ほっといて下さい!」
「怒ったら、ダメだよ。僕が、悲しくなるから。ね?」
青い瞳が、寂しそうにセレナを見つめる。飼い主に叱られたワンコみたいだ。そうなると、胸が痛む。仕方なく、おかわり。
「分かったってば、食べる。食べるわよ。」
「え、本当?嬉しいなあ。」
しょげてたのが、嘘みたい。笑顔全開で、喜びを表現。この若さまの手口だ。そう、分かっていても騙されてしまう。
「僕は、セレナちゃんに嫌われたくないんだ。好きだからね、本当だよ。」
え、好き?ドキッーとさせられる。男の子から、そんな事を言われたのは初めてだった。
(もう、知らない。絶対、本気にしないから!)
貴族が平民の娘になんか、恋なんかしない。身分が違いすぎる。それに、追放されたんだから二度と係わりたく無かった。
スイートポテトにスコーンとヤケ食いしました。代金は、お金持ちの若さまが払います。
一緒にミルク紅茶を何倍も飲んで、お腹が限界。満足そうに椅子に、そっくり返るセレナ。
そんな様子に、若さまは上機嫌。身の上話を、せがんでくる。
「セレナちゃんの子供の頃って、どんな?あ、僕に妹がいるから。妹みたいに思えて。」
「妹?良かった、口説いてるのかと思っちゃった。」
「口説く、何故?僕は、変な事をしましたか?おかしいな。」
「うふふ、してないけど(しつこかったけど)」
なんだ、妹みたいで構いたくなったんだ。安心した。
「じゃ、フィリップスさん。私を口説いてないんだったら、友達ね。ぃいでしょ?」
「友達?いいですよ。僕から逃げようとしないのなら。」
逃げる?変な事を言ってるけど、友達なら言いたい事も言えるわ。ホッとして、セレナは自分の育った場所を話し出した。




