( 5 )この人と結婚したい
アンジェリカ王女を追放したカカ国では、次期王となるジョセフイーヌ王女の婚約者選びが始まっていました。
「私の姫には、相応しい相手を選びます!」
ジョセフイーヌ王女の母親、現在の王の側女さん。自分の娘の夫となる相手には、高い条件を要求。
一国の王家の王子である、容姿端麗である、婿養子になれる人。魔力を備えている事。ついでに、お金持ち。
「お妃さま、近隣の王国へ招待状を送りました。美しいと噂の王子まま方へです。」
王家の執務官は、召使いに似顔絵を運び入れさせた。その、どれもが、評判通りの美王子たち。
ジョセフイーヌ王女は、1枚の似顔絵に見惚れる。
「私、この人がいいわ。お母様!」
それは、隣の国のスタンレー国の王子だった。母親は、その身上書に目を通す。
「名前は、カエルレウム。年齢が、21歳。身長は、188センチ。体重は、65キロ。スタンレー王家の第2王子?魔力も、少しは使えるのね。
ジョセフイーヌ、会ってからにしなさい。似顔絵は、悪くても良く書くわよ。」
「いいの、この人と結婚するの。決めたんだから。」
庭の向こう側にある建物には、王妃の部屋がある。聞こえてくる2人の声に、王妃は苛立ちを隠せない。
(もう、自分が王になったつもりなのかしら。)
王妃は、気分が悪くなってきた。そこへ、兵士が報告にやって来る。
「王妃さま。残念ながら、アンジェリカ王女さまの手がかりは有りませんでした。まるで、煙のように消えてしまっています。」
気落ちした王妃は、指示をした。それで、諦めるわけにはいかない。
「何度も探すように。付き添いも無く1人では、何があっても不思議ではない。5歳より修道院の生活をして、何も知らないのですから。」
探していたのは、王妃だったのか。
「はい、探しに行って参ります。気になる話を聞きました。」
「気になるとは?」
「私が行く前に、同じように尋ねた者が居ると。それも、同じカカ国の兵士の制服を着ていたそうです。」
「同じ・・制服ですって!」
王妃は、目眩がした。大変、どうにかしなくては。アンジェリカ王女が、危ない。誰が探させたのかは、聞かなくても分かる。
あぁ、神さま。お願いです、アンジェリカを魔の手から救って下さい。あの側女は、何をするか分かりません!
都の「なんでも屋ジミー」は、依頼された仕事をする為に出張します。では、準備。
家の庭に出された大きな古いボロ布。ジミーが広げるとテントになりました。セレナは、大喜び。
「テントなんて、久しぶり。キャンプみたいー。」
「セレナさん、これで行きますから。狭いけど、荷物入れて下さい。」
「え、これで?」
「婆さんの残した移動テントなんですよ。」
ジミーの亡くなった祖母は、腕の良い魔女だったらしい。今も使っている魔法道具は、その祖母が残した物だ。
古き魔法。今のように、見えない形では無く形のある物を利用していた。
「さあ、準備できたぞ。出発だ!」
ジミーは、テントに付けたエンジンにスイッチを入れる。小旅行に、子供たちやセレナは歓声を上げた。のだが?
ブンブンブン、ブン、ブン、プスンー。
ジミーは、青ざめる。
「なんてこった。修理して使ってきたのに、お前もか!」
魔力の強かった祖母に比べ魔力はすこしだけのジミー。祖母の持っていた魔法道具だけが頼り。
だけど、劣化していくのを止められない。次から次に壊れて使い物にならなくなるのだ。
「もう、行きますと通知したのに。仕事ができなきゃ、収入にならない。もう、だめだ!」
絶望的な声をあげる男。聞けば、双親は子供の時に亡くして結婚した妻も亡くしたばかり。
2人のの子供を育てなければならないのに、仕事もままならないようだ。セレナは、彼に言う。
「ジミーさん、大丈夫。私に、任せて。」
何を任せろと言うのだろう。意味が分からない。セレナは、ジミーの持っている破れかけた地図を手にした。
「ジミーさん、教え下さい。目的地を。」
言われるままに教えると、セレナは目を閉じる。
「ONー!私の、センス。テントを目的地に運べ!」
テントが、身震いをした。ブルッとしたかと思うと、飛び上がったのだ。ジミーも子供たちも、テントの支柱にしがみつく。
ゴゴゴゴゴゴーーー。
飛ぶ、飛ぶ、テント。そして、すぐに到着。
パッスーーン!
テントから出たジミーは、驚く。大変だ。着いたのはいいが、屋根の上ではないか。飛ばしたセレナは、お腹を抱えて笑っている。
笑ってる場合じゃない。依頼主は、この館だ。
「セレナさん、降ろす魔法は使えるのかい?ここは、第2王子の青の王子さまの館だから。早く、しないと。」
青の王子さま?それは、大変です。慌てて、セレナは、テントを庭に降ろした。そんな事、先に言って欲しかった。




