エピローグ
ゴーイングマイウェイ、我が道を行く。とっても魔力の強い聖女さま。カカ国の王家の開拓を始めた。
「テムプルム一族のアネモネ王女さまが、ご到着!」
カカ国の都の大通りを長い隊列が、ゆっくりと進んで行く。新しい王さまの花嫁が輿入れです。
通りに集まる町の人々に、お菓子や食べ物が投げられる。皆が、大喜び。
「皆に下さるなんて、何てお優しい王妃さまだ!」
王妃さまの評判は上がりました。待っていたフィリップスが、嬉しそうに花嫁を迎えた。
それを見守る母親の前王妃とアンジェリカ王女。
「セレナさん、思い切った事をするのですね。大丈夫なの?カカ国の蔵は、空だったのよ。」
「お母さま、安心して。神殿の宝の一部をアネモネの持参金にしたから。」
「あの嫁入り道具も、頑張ったのでしょう。」
「この国を良くする為よ。大した事ないわ。」
セレナが魔力で押さえつけても、国を建て直すのは簡単ではない。それは、分かっている。
商才のあるフィリップスと経営を知っているアネモネなら、やってくれるに違いない。
「おめでとうございます、聖女さま。」
城へ来たのは、魔法学校の理事をやりながらのカカ国王お抱えの魔法使いであるベリィ。セレナは、彼を見つめた。
「誰かに似てるんだけど。アグアニエベさんと親類かなんか?」
「聖女さまも、そう言うんですか?困ったなあ。」
言いたくなるくらいに、アグアニエベに似てきたベリィ。結んだ長い銀髪といい、細い長身といい見間違えそうなくらいに。
「血縁は、ありません。他人です。」
「そう。マルガリータ姫は、連れて来なかったの?」
「今日は、学校の代表の生徒を連れて来ました。マルガリータ姫は、婚約式の準備がありまして。」
「婚約式ね、相手が貴族だと大変よ。頑張って。」
ベリィがマルガリータ姫と婚約した。それは、セレナにはホッとできた出来事。
自分が、彼女の元婚約者と付き合っているからだ。
背中から抱き締めてくる逞しい腕。セレナの細い腰を抱いて所有権を示す彼。
「アネモネの花嫁姿は、綺麗だ。君の花嫁姿も見たいよ。婚約は、いつまで続けるつもりだい。大好きなセレナ?」
セレナは、結婚を急がないという条件で婚約したのだ。第2王子は、明日にでも結婚したいらしい。
「知ってるでしょ、カエルレウムさま。私、忙しくて。テムプルム神殿とカカ国に行ったり来たりだし。」
「私も、魔法を使えたならな。君と離れないで済む。」
「わっー!」
「何だ?」
「キスなんて止めて。見られたら、恥ずかしいの!」
魔法で抜け出してパタパタと逃げて行くウサギさん。食べそこねたオオカミは、空腹を我慢する。
さて、いつまで我慢できるのやら。
結婚のお祝いとして、城の中では舞踏会。庭では、人々に酒がふるまわれる。セレナは、母親の側へ行った。
「お母さま、ありがとう。王妃として働いてくれて助かりました。」
「いいのよ、これくらい。後は、アネモネさんがやってくれるわ。」
アネモネが嫁入りするまでの間、王さまが取り巻きの貴族と追い出されたので母親が主としてやってくれていたのだ。
「セレナ、見て。あなたの乳母よ!私が招待しましたの。」
杖をついているものの、白髪になった乳母のエミリィが歩いて来るではないか。セレナは、大喜び。駆けよった。
2人は抱き合い、再会の喜びを分かち合う。親しい人たちが揃った祝宴の夜。もう、セレナは1人では無かった。
「聖女さま。私と踊ってください。」
うやうやしく腰を折る美男子。スタンレー国の王子が王の代理として出席した第2王子カエルレウム。
「婆や、私の婚約者よ。王子さま、私の乳母です。」
紹介された婚約者に、乳母は感動して涙を流した。
「幼い頃に田舎の修道院に入れられた王女さまが、こんな素敵な方と結婚するなんて。神さまが守って下さったのですね。」
そうなの、私は幸運な女の子。何もかも奪われて追放されたのに、今では皆に愛されている。
今日の主役の花婿と花嫁のダンスが済むと、第2王子とセレナが踊り出した。聖女と隣国の王子に皆が注目。
「私には、君だけだ。愛しているよ、セレナ。石ころセレナは、私の物だ。」
今では、「石ころセレナ」と呼ばれても腹が立たない。そう、呼ぶのは彼だけ。セレナは、微笑んだ。
「私、幸せになります!」
心に誓った。大好きな人達と今まで寂しかった時の何倍も楽しく暮らすと。
カカ国の新しい王さまが結婚してから、暫く後にベビーが誕生しました。王子さまです。
洗礼式には、聖女も駆けつけました。浮かない顔のフィリップス王は、打ち明ける。
「やってくれたよ、セレナさん。お父さん(前国王)が反乱を起こした。魔力の無い王子は、王位につけないと。」
「大丈夫よ、私がお仕置きするから。」
「アネモネ王妃(妻)も、気にしてて。魔力の微力な私に王子が似てしまったから。」
「文句を言う人は、私が許さないわ。この国の王家は、お兄さんの子供が継いでくの。魔力の有る無しは関係ないもの。」
フィリップスは、空っぽだった蔵に今では沢山のお金を貯めていた。アネモネと2人で、貿易に力を入れ産業や農業を発展させている。
この国の人々の暮らしが良くなったのは、2人のおかげといって良い。
だが、「伝統」とか「しきたり」とかを掲げて貴族たちがけおとそうとしている。許せない事をだ。
「こんにちは、セレナおばちゃんですよ。」
揺りかごの中の小さなフィリップスの子供を覗き込むセレナ。あたりを見回して赤ちゃんに触れる。
「ちょっと重たいけど、許してね。入魂!」
セレナの手から赤ちゃんの身体に光が移った。途端に赤ちゃんが泣き出す。その声を聞いて乳母が飛んで来る。
「どうしたのかしら?」
セレナは、乳母があやすのを見ていた。準備は、整いました。
王家の者として認められる儀式である洗礼式。呼んでもないのに、前王がおしいって来るという騒ぎ。
追い出したとする兵士に、聖女は出席を赦してやるという寛大な行為。
「フィリップス王の誕生した子息を王子として認める!」
神官が、宣言した。すると、待っていた前王が手をあげて異議を訴える。
「カカ国の王子は、王家の者とはみなされない。それが、古き歴史に伝えられた掟なのだ。王女だけが、王家とみなされる!」
ざわめく参列者たち。前王に味方する為に集まった貴族が声を上げて喚き出す。泣きそうなアネモネ王妃をフィリップス王が抱き寄せた。
「でも、前王さまは王さまになれたでしょ?」
威厳のある女の声が、一瞬で制圧する。さすが、聖女さま。前王は、顔を真っ赤にして怒鳴る。
「わしは、兄弟の中で魔力が強かったからだ!特例だぞ!」
「だったら、特例にすればいいんでしょ。」
聖女は持っていた花を捕らして、風に舞わす。そして、王子へと飛んで行く。
「あ、あれは?」
「王子が魔法を使っておられるぞ!」
皆の目が釘付け。花びらが蝶に変わったのだ。揺りかごの中の幼い王子は、自分の上を飛んでいる花びらを操り出す。
何と、無いと思われていたのに有ります。魔力が。両親も驚く。そして、2人の目が聖女を見た。
「セレナさん。後で話があります!」
セレナは、兄の怖い顔に笑顔を向けた。私は、何も知りません。確かに余っている魔力は所持してますけど。
でも、これで、王家の揉め事も一段落。良い事は、やっておかないと。
「あ、前王さまが倒れられたぞ!」
バタンと前王が倒れる。フィリップスの王子に魔力が有るのを知って落胆したのたろう。貴族たちの嘆く声。
聖女さまは、上機嫌。めでたし、めでたし。
ーーーーーーーおわりーーーーーーー
「作者より」
最後まで、お付き合い下さって有難うございました。
m(__)m
2021,09,01,




