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( 28 )私が新しい王様です

王位継承者の第1位の座になった元指名手配のアンジェリカ王女(セレナ)。権力の座を奪われたジョセフィーヌ王女は部屋を追い出される。



「こちらが、次期王になられる方のお部屋でございます。」



豪華な惜しみなく金銀を使った装飾の広い部屋。セレナは、目がくらむ。この隅っこで充分ですけど。


城の執事に気になる事を聞いてみた。



「お母さまは。王妃さまのお部屋は、何処なのか教えてください。」



母親が、どんな暮らしをしていたのか気になる。執事は、テラスの扉を開いて差し示す。



「あちらが、王妃さまのお部屋でございます。今は、お留守ですが。」



ちょっと、驚き。庭に面した建物の一角にある部屋は、日も入りにくい目立たない窓ひとつの小さな部屋だったからだ。




「あの、執事さん?お母さまは、王妃ですよね。どうして、あんな処に。」

「王さまのご寵愛(ちょうあい)で城の中での順位が決まるしきたりですので。沢山の側女がいますと、あそこになりました。」

「寵愛・・ですって!何、それ?」




ここは、何処かの会社なのか。愛されてる順番で住む場所が変わるなんて、本妻の意味が無いじゃない。セレナはムカつく。


執事が、言いにくそうに話し出す。嫌な予感。それは、的中した。




「申し上げにくいのですが、次期継承者のアンジェリカ王女さま(セレナ)の為に部屋を改装する事ができません。このまま、ジョセフィーヌ王女さまの私物を使っていただく事に。」

「えっ?ジョセフィーヌのを、私が!」

「はい。ハッキリ言わせて頂きますと、費用がございませんので。」

「費用?王さまでしょ。」

「王さまの側女が2方、出産間近。新しい側女も、待機中。ジョセフィーヌ王女さまに至っては、毎日がパーティー。ホストたちを招待して。」

「もう、いいです。分かりましたから!」




何て人たち。父親が女好きなら、娘も男好き。似た者同士だわ。私は、そうはならないから。



(でも、結婚相手は女好きとか。あ、第2王子の顔が。どうして、結婚相手なのよ!)



思い出しただけで、顔が赤らむ。ドキドキしてくる心臓。おかしい、怖いのは嫌いなのに。


それとも、怖いのが好きになった?ウサギの心臓さんは。










スタンレー国のフィリップスのお店ではーー。



店に入って来た客を見たフィリップスは、驚く。客を掻き分けて駆けよった。



「お母さま、いらっしゃいませ!」



母親の王妃は、笑顔で息子を抱き締める。こうやって並べると、似ている母と子。その後から入って来た青年が挨拶した。


フィリップスがカカ国でお抱えにした魔法使いのベリィ。今は、テムプルム神殿に建設中の魔法学校の創設者だ。



「フィリップスさま。今日は、王妃さまをお連れいたしました。こちらへ行きたいと申されましたので。」



王妃は、見回した。誰かを探している。その人に会いに来たようだ。




「フィリップス、第2王子さまは何処に?」

「第2王子さまですか、どうして?」

「大事な娘の噂のお相手を見たくなったの。」

「お母さまは、心配症ですね。今日は、見えてませんよ。僕のお薦めのお茶を飲んで行って下さい。」




イソイソとお茶を入れる母親が大好きな王子。それを手伝う美少女。王妃が、声をかけた。




「アネモネさん、来てらしたのね?」

「こんにちは、王妃さま。セレナさんに頼まれてお店のお手伝いをしています。」




フィリップスは、笑顔で母親に報告する。



「アネモネさんは、凄腕ですよ。僕だけでは、貿易は難しいですから。助かっています。」



そこへ、話題の人が登場した。現れただけで、店に居た女性客たちの視線が集中する。女性に大人気だ。王妃は眉を上げた。




「フィリップスくん、セレナは?」

「こんにちは、セレナの母です!」




第2王子は、驚いて見る。美しい婦人は、セレナと面差しが似ていた。幸運だ、セレナの親に遭遇するとは。


第2王子は、腰をかがめて手を取り口つけた。とっておきのスマイルで自己紹介。



「お会いできて光栄です、セレナの母上。私はスタンレー国の第2王子カエルレウムと申します。以後、お見知りおきを。」



王妃の目が細まる。何しろ、女好きな王さまが夫ですから。これは、娘が苦労しますでしょう。諦めさせます、私。


そこへ、また、メインキャストの1人が登場しました。



「こんにちは。お兄さん、疲れてるからお茶を飲ませて。あら、お母さま?第2王子も?」



店に入って来たセレナは、居ると思わなかった母親と第2王子に驚く。その様に、母親は女の勘で気がついてしまった。



(あら、この子ったら。 この王子さまに恋してるのね。)



本人は気がついて無いけれど、第2王子を見た瞬間に目がキラキラして頬はホンノリと桜色。


これは、もう手遅れでしょう。セレナが第2王子の前に立って、ご挨拶。わざと、素っ気なく。


あなどれない敵。思いがけない行動をした。ひざまずいたのだ。皆が驚いた。



「セレナ・ストーン嬢。私の心は、あなたの物だ。生涯、私の妻になって一緒に居て欲しい。イエスと言ってくれる事を願います!」



公開プロポーズだった。オオカミは、狙った獲物は外さない。

お客様たちが、喜んで拍手。狙われたウサギのセレナは、呆然とするばかり。


きゃあー。どうしたら、いいの?誰か、教えてー!












フィリップスの店の外に出たベリィは、ふーと息を吐く。これから、ひと騒ぎになりそうだ。聖女と王子の結婚だから。



(王妃さまも大変だな。あれだけ、女性に人気のある王子だと。娘の婿としては心配の種だろうから。)



カカ国での城での王妃の扱いを知っているだけに、素直に喜べない話だった。



「こんにちは。お店に入られないのですか?」



声をかけたのは、第2王子の元婚約者ではないか。ベリィは、少々あわてた。店の中では、第2王子が求婚している。




「これは、マルガリータ姫さま。お買い物ですか?」

「はい、テムプルム神殿に立つ支度がありますので。」

「ああ、神殿の巫女になられるのでしたね。」

「カエルレウム王子さまが、聖女さまにお願いして下さいました。」




その時、風がベリィの帽子を飛ばした。目深に被っていたのにと、ベリィは戸惑う。日差しにキラッと輝く肩までの灰色の髪。


魔力で帽子を引き寄せたマルガリータ姫は、手渡しながら髪を見つめて言う。




「ベリィさんは、銀髪でしたか?」

「いえ、白髪のような物です。魔法学校を開設するのに苦労していまして。髪が真っ白になりそうで。」

「それに、背も高くなられて。」

「急に身長が伸び出しました。服が合わなくなって困ります。」




マルガリータ姫は、何ともいえない感情が沸き上がる。どうしてなのか、探し物を見つけたように思えてならない。




「よろしければ、お茶でも如何でしょう。フィリップスさまのお店は混んでいますので、別の店で。」

「はい、参ります。」




マルガリータ姫は、微笑んだ。ベリィも微笑む。そして、2人は腕を組んで歩き出すのだった。


店の中では、フィリップスが心配そうに妹のセレナを見ている。



「アンジェリカ王女。そうじゃない、セレナさん?第2王子は、出て行きましたよ。」



椅子に座っているセレナは、放心状態。予想もしていなかったプロポーズに、魂が抜けているよな様子。


我に返って、アタフタと見回した。




「あの人は?第2王子は?何処?」

「居ないから。お母さまが話をしたいと連れ出して行きました。」

「お母さまが?」

「セレナさんを気遣いされたんですよ。後でお礼を言って下さい。」




ホッとして、セレナは深い息を吐く。本当に何て人。付き合ってもないのに、いきなりのプロポーズ。


こっちは、生まれて初めての求婚よ!びっくりするわよー。



「で、どうするの?」



フィリップスの質問に、セレナはモジモジとした。フィリップスは、クスクスと笑う。




「あー、首まで真っ赤。嫌いじゃないんですね。うふふ。」

「酷いー、からかわないでよ。お兄さんだって、アネモネさんと結婚するの?」

「え、ええっ!何で知ってるんだい、私たちの事を?」




今度は、フィリップスが真っ赤になる番だった。フィリップスは、アネモネのもとへ走る。助けを求めに。


仕返しをしたセレナは、フィリップスをなだめているアネモネを眺めて考えた。



(私は、アネモネさんなら賛成よ。早く婚約すればいいのに。綺麗だし、頭もいいし。テムプルム王家の王女で家柄もあるんだから。)



セレナは、いいアイデアが浮かんだ。そうだ、これなら全部が解決だわ。嬉しそうに笑う。


それは、皆を驚かせる行動になったのだった。











王家が貴族と楽しく遊び暮らしていたカカ国のお城。召し使いの声が響く。



「アンジェリカ王女さま(セレナ)さまのお帰りーー!」



王様は、魔力の強い聖女となった我が姫を笑顔で迎える。どうにか仲良くして王家の存続をするつもりだ。


はっきり言って、子供の誰が後を継ごうが良いのだ。目の前のセレナは顔も名前も忘れていたのだから。


その他人のような娘は、父親を冷たい目で一瞥すると驚く事を宣言した。




「私が王の継承権を勝ち取りました。次期国王として、現国王の退位を求めます!(側女が沢山の王様なんかいらない)」

「何を言うんだ、アンジェリカ王女や(慌てる)」

「本気ですわ、お父さん(知らないオジサンとしか思えないけど)」

「お前は、礼儀を知らぬ。王の教育を受けよ、命令だぞ!(怖いぞ、私は)」



セレナは、並んでいる王の側女たちや義兄弟たちを見回した。それに、大臣や側臣たちを。



「私は、王位を望んでないの。新しい王さまは、兄のフィリップス王子に任せます。」

「フィリップスだと?この国の王位は、魔力が無ければなれない。わしの時は、わし以上の魔力を持つ兄弟が居なかっただけで。」

「うるさーーいっ!!」




セレナは、叫んだ。その途端に城が大きく揺れた。皆が慌てて逃げ出し、残ったのは王さまだけ。


何故、残ったのか。それは、セレナが王さまの腕を掴んで離さないからだ。この娘は、本気だ。何をやらかすか、分からない。



「お前、落ち着け。わしは、父親だぞ。わしを、怖い目に合わすと罰を与える。分かってるのか?な?」



精一杯の反撃。これまでは、王さまの一言で誰もが従った。なのに、突然やって来た小娘は鼻で笑う。



「そうなの、罰なのね。どんな罰かしら。私のより、怖いの?」



セレナが睨んだ途端に、お城が揺れ出す。



ガラガラ、ドドーーン!



雷の音が鳴り響き、稲光が走った。それも、城の中にだ。豪華な絨毯に火花が散って焦げ付く。王さま、腰砕けて動けません。


何で怖いんだ、この子は。わしに逆らった者は居ないんだぞ。この際、言いなりになろう。仕方ない。



「分かった、分かった。お前の好きにするがいいーー!」



王さま、勝負を投げました。長いものには巻かれます。


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