( 24 )招待されてないけど行きます
セレナがビリーを連れて来たので、家造りは進みました。ビリーも、家をもらって嬉しそうです。
神殿の再生の時にゴミ箱に入れられていたモンスターたちを、食料や報酬として配給。皆、大喜び。
「これを、町に売りに行かないとな。」
「これも、聖女さまのおかげだ!」
「そうだ。聖女さまが戻られたんだから、暮らしも楽になる。」
「モンスターも、近寄れないし。」
私は聖女じゃないの。なんて言い訳も通用しない。村の人達は、セレナを聖女として扱う。守り神だ。
「でも、どうしよう。魔法だけでは、養っていけないわ。」
先立つ物は、資金。ジャングルに何も無い。セレナに財産が有るわけでもなかった。すると、目の前に光の人が現れた。
『聖女さま。あなたに、譲る物が有ります。』
こちらも、聖女と呼ぶ。完全な後継者あつかいだ。セレナは、光の人が指差す方向を見た。
祭壇の下から、光が出ている。何が、光っているのだろう。
ガガガガガーーン!
祭壇が動き出し位置をずらすと、中から大きな手が出てくる。石で作られた巨人の手だ。光の人が説明してくれた。
『これは、宝物蔵の番人です。神殿の宝を長い間、守ってきました。聖女となられたら、あなた様の物。どうぞ、お使いください。』
祭壇の下は宝物蔵で、お宝が山のように眠っていたのだ。お金の心配が無くなりました。
何から始めようかと考えていたら、ベリィが話を持って来た。
「私は、魔法学校を作りたいと思っています。その場所を貸してくれませんか?」
聞けば、身分の違いが無い実力主義の学校にしたいという。それなら、賛成とセレナはジャングルの中に建てる事にした。
「私は男爵家の生まれですが、貧しい生活の中で、両親が都の魔法学校に入れてくれました。卒業したものの、地位の無い家の者は良い仕事は得られません。」
才能のある魔法使いが活躍できる場所を与えてやりたい。熱をこめて語るベリィ。
「フィリップスさまは、周りの反対を退けて私を採用してくださった恩人です。」
そんな事があったのかと、意外に男らしいフィリップスを知る。だから、聞いてみた。
「フィリップスさんは、本当に結婚したいの?」
「したいとかの問題では、ありません。」
「問題じゃない?」
「フィリップスさまは、子供の頃に買われたのです。」
「買われた?うそー!」
「フィリップスさまの父上には、何人も奥様がいらして。とても、兄弟が多いのです。家の相続は姫と決められている為に、早くから暮らしに困らないように結納金の多い相手に嫁ぎ先が決まります。」
成る程、お金ですか。要するに、養えないから養ってくれる金持ちに引き取らせると。
不幸なんだか、幸せなんだか。フィリップスが、可哀想!
ここは、カカ国の国境付近。空から、魔法使いが降りて来た。そして、連れが到着するのを待つ。
大きな魔力が近づいている。それは、あっという間に目の前に立った。
「ベリィさん、どうしたの?ここは、カカ国のお城じゃないわよ。」
「セレナさん、お疲れだと思いまして。」
「疲れる?私が?」
今日は、礼服姿のセレナだ。町の仕立て屋であつらえたばかりの白いレースのロングドレス。紫がかった紺色のケープ。
髪には、神殿のあるジャングルに咲いている白い蘭の花。聖女さまは、輝いて見える。
ベリィは、微笑んだ。セレナに落ち着かない様子が見てとれたから。
「大丈夫ですよ。私が付いています。」
「変な事、言わないで。私は、私は、平気よ!」
そうは言っても、本当は平気じゃないセレナ。だって、ここは、追い出された国だから。
あの時から数ヶ月が立っただけなんて思えない。もっと、長い時間が過ぎた気がする。二度と戻らないと考えていたのに。
「ううん、平気よ。今の私は、聖女だもん。強いんだから!」
ウサギの心臓は、バクバクしてる。でも、大丈夫。今から行く場所には、以前の私を知ってる人は居ない。
「ごめんなさい、ベリィさん。もう、平気だから。連れて行ってて頼んだのに、心配かけちゃって。行きましょう!」
決意も新たに唇を結んで、少女はベリィに謝った。ベリィは、その強がりに苦笑い。
どんな酷い目に会わされたのだろうか。カカ国へ旅立つ前から元気が無くなった。
(何かあったら、私が守りますから!)
そう決意して、ベリィは再び空へ飛び立つ。さて、2人は何処へ行こうとしているのか?
カカ王国の都に建つ館の庭園では、貴族が集うパーティーが行われていた。庭木にはリボンが飾り付けられ、何かを祝っている様子。
「フィリップス殿下、おめでとうございます!」
なんと、祝福されているのはフィリップスだった。主賓席に礼服姿のフィリップスが座り、客たちの挨拶を受けている。
「家督相続は女に限られている。だから、男に生まれたばかりに成人すると追い出される。相手かまわずにとは、哀れなものだ。」
「婚姻先を見つけてくれるだけ、ましでしてよ。財産が無くても、食べさせてもらえますから。持参金なしではね。」
「外見が良かったから、買い手がついたが、容姿が悪いと引き取り手も無い始末だ。」
「でも、あんなに年が離れていては・・。」
同情する声も囁かれる会場の中を、主賓席へ真っ直ぐに歩いて行く何者かの姿あり。それは、見知らぬ少女だった。
フィリップスは、気がつく。満面の笑顔で立ち上がった、両腕を広げて。
「セレナ、来てくれたんだ!」
「フィリップスさま。ご結婚、おめでとうございます。奥さま?」
フィリップスの隣に座っている花嫁衣装の新婦を見て、セレナは言葉に詰まった。それだけ、驚きが大きかったからだ。
(何、何?どうなってるの、おかしくない?)
自問自答を繰り返して、腹が決まった。こんな事、見過ごせないから。
「あなたは、どなたじゃ?」
しわがれた声で問いかける白髪の老婆に、セレナは膝を折って敬意を示した。そして、頭を上げると言い放つ。きっぱりと。
「奥さま、申し訳ありません。この人を買い取らせて頂きます!!」
花嫁だけでは無く、居合わせた誰もが驚いた。結婚の披露宴に現れて新郎を買うと宣言した少女。頭が、おかしくないか。
セレナは、小さな鞄を取り出した。その中から飛び出したのは、大きな金塊。
ドッスン、グシャグシャー。
置かれた金塊に、テーブルは重さで壊れてしまう。老婆は金塊に飛び付いた。そして、大声で喚く。
「かまわないよ、くれてやる。これは、わしの物じゃ。誰にも、やらんぞ!」
フィリップスは、ポカーンとしている。何が起こった。自分は、セレナに買われたのか?
「おやおや、新しい花嫁の登場か。あれだけの金塊とは金持ちだ。」
「次は、あの娘との披露宴だな。」
皆が新郎を略奪に来たと好奇心の目を向ける中、声が響いた。
「アンジェリカーー!」
自分を知る者が居ないと安心していたセレナは、青ざめて顔を向ける。走り寄って来る貴婦人の姿。
(お、お母様!何故、ここに?)
それは、1度だけ接見した実の母親。カカ国の第1王妃だった。




