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( 22 )止まらない気持ち

アグアニエベは、忙しい。町で呪いを掛けていた老婆を退治した後は、時間を戻してセレナの救出活動。



「オジサンのお友達の家で休みましょう。遠慮はいりませんよ。」



でも、歩くのは時間がかかる。安静の必要な少女を連れているので、アグアニエベは飛ぶ事にした。


なので、子供を怖がらせないように説明をする。オジサンは、優しいんです。




「実は、私は魔法が使えるんですよ。飛べるんです、凄いよねー。」

「へえー、そうなの?」

「セレナちゃんは、動けないから私の魔法で飛ぶ事にしましょう。」

「はーい。」




何とか、納得してもらえたようだ。その後、少し揉めましたが解決。

アグアニエベがセレナを連れて地下道から抜け出した後に、モンスターが出現。


神殿を取り巻いていた結界が失せたので、今まで眺めるしか無かったモンスターたちが集まって来る。


ウガー、ガガガー。ガー。ドスンドスン!


モンスターたちが、神殿の中に突入。ドドドーと巨体が遠慮なく入って来るので、神殿の壁や床が壊れた。


ガラガラと音を立てて崩れていく建物。空から眺めていたアグアニエベは、崩れる様に胸が痛んだ。




「始まった物は、何時かは終わる。まさに、それですね。新入社員も、何時かは定年になるんですから。」

「新入社員?定年?それ、何の事。オジサン?」




背中にセレナを背負ってるのをアグアニエベは、思い出す。感傷的になって忘れていたようです。


お姫様抱っこしたかったので、セレナを抱き上げようとしたら抵抗されてしまったのだ。おんぶより、抱っこの方が楽なのに。




「業界用語ですよ(あー、おんぶ、爺くさい!)」

「私に遺産をくれた人は、守り神なのよね。悲しいだろうな。守って来たのが壊されて。」

「じゃ、修理して下さい。結界も、お願いします。」

「ええー、修理?できないわ!」

「遺産をもらったでしょ。試し運転をしてみないと。何しろ、聖女さまですから。」

「私、聖女じゃないのよ。でも、やってみる。」




セレナは、身体の中のポケットに入れた遺産の力を取り出す。そして、放出した。



「力よ、命令する。神殿を再生せよ。神殿を守れーー!」



神殿が、光を放つ。そして、みるみるうちに光に包まれた。



ゴトゴト、ドン、バンバンドスドス、ポイポイ~~~。



あの、ポイポイは何なの。セレナは、足下から飛び上がって来るアグアニエベに気がついた。


あのオジサン、黒い羽根だわ。悪魔なの?それより、待って。私は、おんぶされてたんじゃ???




「きゃあー、私、浮いてる!!」

「ほら、バタバタしない。落ちますよ、平静心!」

「平静心たって、無理ーー。」

「はいはい、初心者ですからね。おめでとう、初飛行できましたか。」




手を離すなら、言ってよ。怖いんだから。心臓が、バクバクしてるじゃない!


でも、初飛行だって。嬉しい。出来るんだ、魔法で飛ぶ事。もう嬉しくて、悪魔でも気にしない。支えてくれる腕に抱き付く。




「モンスターが神殿から放り投げられていたので、ゴミ箱を設置しておきました。後で村の人に渡して下さい。」

「村の人?」

「視察しましたが、村は貧しい生活をしています。ここを出て行った人たちの子孫の蹴らしは、楽ではないようで。

神殿を受け継いだのですから、その人たちの世話をお願いしますよ。」




その人たちの世話。やる事が沢山。出来るんだろうか、私に。

聖女になるつもりなんて無いのに、聖女の役目を考えているセレナだった。





それから、半日ほど過ぎた頃ーー。





眠っていたセレナは、目を覚ました。見知らぬ家のソファーに寝ていたのに戸惑ったけど思い出す。



(そうだ。アグアニエベのオジサンの知り合いの家だった。静かだわ、誰も居ないの?)



ジャングルの中に家があるとは、知らなかった。小さな館には家具も入れられて、普通に暮らせるのだ。


気分は。少し良くなっていた。お腹もへっている。身体は、まだ痛い。痛みをこらえながら起き上がる。



「セレナさん、起きましたか。ご飯にしましょう。」



いい匂いのするワゴンを押して、アグアニエベが入って来た。テーブルに食事やデザートを並べていく。



「さあ、召し上がれ。好きな物だと、オジサンは嬉しいです。」

「あのー。」

「何でしょう?」

「この家の男の人、呼ばなくていいんですか。他人の家だし。」

「ああ、あの人。気にしないで、旅行に出かけたから。」




セレナの寝てる間に、出かけてしまったという。だから、好きに使っていいと。そして、驚く話をする。




「王子さまには、お話して来ました。マルガリータ姫を連れて町に戻られましたよ。」

「へえ、帰ったの。」

「寂しいですか?」

「寂しい?何でよ!」




変な事を言う。第2王子が帰ったと聞いて、どうして寂しいと思うの。疲れるのから、離れてくれてホッとするのに。


側に居るとゾゾッーと悪寒がするのよ。呪われてるみたいに。











数日、他人の家で寝ていたら良くなってました。それで、魔法使いのベリィに教わった空を飛ぶ魔法を試し運転。



「やだー、簡単じゃん!」



あっという間に、町へ戻ったセレナ。来た時は何日もかけたのが、バカらしくなる。魔法は、何て便利な力なのだろう。



「セレナさん、帰ったのか!」



雇い主であり、間借りの大家でもあるジミーさんが喜んで迎えてくれる。子供たちも、飛びついて来た。



「知らなかったばかりに、危ない仕事をさせて悪かった。後で、普通の旅人は寄り付かない場所だと教えられて心配してたんだ。」



自分の事を心配していたひとが居る。セレナは、それだけで嬉しかった。



「そうだ。フィリップスさんも心配していたから、知らせよう。」



町へ戻ったフィリップスがセレナの事を案じていた。深くは考えなかったセレナは、飛んで来たフィリップスに驚かされる。









セレナが戻ったという知らせに駆け付けたのは、この人。フィリップスさん。



「セレナちゃーーん!」



入って来るなり、セレナに飛びついて押し戻される。それでも、抱き付いて離れない。怒ったセレナに叩かれても。


わんわんと泣きながら、セレナの服は涙と鼻水まみれ。




「もう、止めて!(椅子で殴るわよ)」

「セレナちゃんが無事で良かった。お母さまに連れて行くって約束したのに、何かあったら困る。うわーん!」




また、お母さまだ。マザコン若様、顔は可愛いのに。



「あのですね、フィリップスさん。私は、あなたのお母さまに会いに行かないんですって。他の女の子を連れて行ってあげて下さい。」

「セレナちゃんが、いいんだ。お願い、お母さまに会いに行こう。」




交際相手でもないのに、母親に会わせたら変でしょう。誤解されますってば。



(あ、誤解したかも!)



家の入り口で、固まっている人が1名。目を見開いたまま、こちらを見ているのは、第2王子。


慌てて、セレナは駆け寄った。




「いらっしゃいませ、王子さま。違いますから。フィリップスさんは、知り合いをお母さまに紹介したいだけなんです。」

「ただの知り合いを、国の母親に会わせたいというのか?」

「そうなんですよ、ただの知り合いです。」

「石ころセレナに、男ができたのか。知らなかった。それは、おめでとう。」




第2王子は、クルリと身体を返して帰ってしまった。セレナは、腹を立てる。



「なーに、あれ?何よ、あれ!」



石ころセレナに男ができたら、悪いの?私の勝手じゃない。挨拶も無いんだから。


その後、怒ってしまったセレナにフィリップスは相手をしてもらえなかったのでした。










その日、第2王子はディクソン公爵家を訪れた。連れ帰ったマルガリータの見舞いの為だ。

マルガリータは、寝台に起き上がって礼を言う。




「王子さま、お気遣いをありがとうございます。」

「お元気のようで、ホッといたしました。帰りの馬車の中では、元気がありませんでしたから。」

「私、テムプルムの事が記憶にありませんの。眠っていたみたいに、ボンヤリとして。」




マルガリータは、何か大事な事を忘れているようで不安になる。でも、それを王子に言う事が出来なかった。


拐われた少女たちを無事に連れ戻した事で、町では第2王子を英雄扱いして騒いでいた。


ロマンチックに、救い出した王子とマルガリータが結ばれるだろうという噂さえある。公爵家では、期待しているようだ。



「青の王子は、マルガリータさんと結婚するのよ。セレナさん、知ってた?」



ジミーの娘のジェニーが、大人の口振りでセレナに教えてくれる。セレナは、驚いた。



「そうなの?じゃ、次に会った時にお祝いを言わなくちゃ。」



だって、「石ころセレナに、男ができたのか」なんて言われたんだもの。お返しよ。










お城に、マルガリータ救出の旅の出張料金を受け取りに行ったセレナ。会いたくない人に出くわす。




「こんにちは、さよーなら。」

「おい、待て。付き合え、石ころセレナ。」

「第2王子さま、忙しいんですよ。私は。」

「お前、私の名前を知ってるか?言ってみろ。」

「だって、舌を噛みそうなんだもの。」

「カエルレウムだ、言え。」

「カエルレウム・・さま。」




あなたの名前は、暗号ですか。復唱させるなんて、何様よ。




「もう、1度だ。」

「え、カエルレウムさま!(やけくそ)」




何故か、王子は楽しそうに笑った。




「じゃ、これで失礼します。」

「旨いチョコレートがあるんだ。茶に付き合え。」




帰ろうとするセレナを王子が腕を掴んで連れて行く。強引な男だ。嫌い!



ゾワッ、ゾクゾクー。



ほら、また。寒気がする。どうして、この

人と居ると悪寒がするの。帰りたい。


セレナが嫌がっているのを気がつかない第2王子。その顔は、笑っていた。嬉しそうに。









第2王子の部屋で、部屋付きの召し使いが用意したお茶を飲む。それは、特別な事なのだが。平民のセレナには分からない。


うやうやしく、置かれるティーカップ。出されたチョコレートの箱に手も出ない。居心地わるい。



「さあ、食べろ。旨いぞ。」



意地悪く笑っている王子(普通に笑顔でも悪く思われる人)。早く帰りたいセレナは焦って、話を切り出す。



「私、テムプルムに住む事にしたんです。ジミーさんも、引っ越して暮らす事になりました。」



お茶を飲んでいた王子の動きが止まる。



「ジミーさんの荷物まとめを手伝いしないといけないので、帰ります。」



立ち上がったセレナは、あっと思う間もなく倒れ込む。王子に抱き寄せられたからだ。次なんと、王子の膝の上に居た。




「ええっ?(ひいー!)」

「あの男と、行くのか?」

「関係ないでしょ。あなただって、マルガリータさんと結婚するじゃない!(なに、この人?)」

「答えろ、石ころセレナ。男と結婚する為に、行くのか?」

「いい加減にしてよ!(怒)」




第2王子の腕の中から、セレナの姿が消え失せた。セレナが魔法で移動したのだ。第2王子は、怒りのままにテーブルを拳で叩く。


ティーカップがテーブルから落ちて、音を立てて割れた。



「何故だ、何故なんだ!」



どうして、こんなに腹が立つ。押さえようの無い憤りは、本当に私の物なのか。まだ、子供じゃないか。


私の恋人は、皆、洗練された大人の女性ばかりだったぞ。




だから・・、扱いが分からないんだ。



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