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( 18 )ジャングルに入ります

その旅人は、若い青年だった。紺のフード付きのマント姿という軽装。



「僕は、魔法資材の採取に来ました。珍しい資材があるらしくて。でも、怖いので。途中まで一緒しても、いいですか。職業は、魔法使いです。」



ちょっと、人見知りの魔法使い。セレナは、仲良くなれそうだと思えた。だから、休憩の時は彼の側に行った。




「セレナさんの魔法は、出し惜しみですね。」

「出し惜しみ?ベリィさん、どういう事。」

「まとってる魔力より、出ていない魔力が重い。収納可能ですか?」




供も連れずに1人で旅をしてるのは、魔力が強いからか。セレナの魔力を計り取るなんて凄腕だ。見かけによらない。




「私、魔法学校にも行っていないの。我流なのよ。」

「成る程、使い方が分からないんですね。もったいない。」

「もったいない?」

「そのくらいの魔力なら、馬車に乗らなくてもいいから。飛ぶと簡単です。」




さすが、魔法使い。スキルが違う。教えてと頼むと、応じてくれた。



「使うのは、簡単です。あなたの魔力は、基礎が出来ていますから。」



と言っていたが、教えるのが上手で良い先生だった。基本のセッティングがされていたのだ。乳母が、してくれたらしい。


魔力を守る為と称して田舎へ追いやって、魔法を教える教師もいない。継承者争いをした妹姫は、専属教師が何人もいたのに。




(乳母に会いたいな。飛べるようになったら、会いに行ってみよう。)




何年、会ってないだろう。乳母とは14歳になると引き離された。そして、家庭教師が付けられたが何もしない教師で。


部屋に閉じ込めて、食事を運ぶ時以外は顔を出さなかった。おかげで外出自由。村の隠れ家での生活。


考え事をしていたセレナは、べリィに問いかけられる。




「あの、王子さまが睨んでますけど。いいんですか?」

「あ、さぼっちゃった。すみませんー。」




慌てて、離れた場所で会議をしている第2王子の側へ戻る。


ちょっとくらい、息抜きしたっていいじゃない。嫌み王子の相手は疲れるんだから。そうムカつきながらも、笑顔。




「会議には、必ず参加しろ。男と馴れ馴れしくするな。」

「仰せのままですわでゴメンですわ。」

「お前には、城務めは無理だ。普通の話し方をしろ。」

「ふああーい、です。」




ジロッと睨まれた。王子の付き人にも、睨まれた。セレナは、膨れる。見ていたアネモネは、ハラハラしていた。




(臨時の雇われ魔法使いなのに。態度が大きいけど、何者なの?)




王子を相手に遠慮なしに話すのは、できる事では無い。第2王子の放つ威圧感は、アネモネも従わずにはいられないのだ。











町の宿のベッドに寝ていたフィリップスは、侍従が客の訪問を知らせると跳ね起きた。




「リィー、どうだった。会えたかい?」

「フィリップスさま、安心されてください。お元気でしたよ。」




客は、第2王子の小隊に加わった旅の魔法使いであった。べリィは、セレナの様子や旅の話をくわしく聞かせる。


セレナの事が心配で夜も眠れずにいたフィリップスは、ホッとしたようだ。




「やはり、君に頼んで良かったよ。ありがとう、助かった!」




そう言いながら、フィリップスは涙をポロポロと流す。べリィは、慰めた。


あの娘なら、大丈夫。強い子で、気難しい第2王子にも負けてなかったから。第2王子も、お気に入りみたいだったし。










第2王子の小隊は、ジャングルの入り口に到着した。前に広がる緑の山。こんな場所で闘いをするのは初めての者ばかりだ。


第2王子は、セレナを呼んで命じる。




「セレナ、姫の存在を確認してくれ。この中に居るか?」

「仰せのままに 致します!」




敬語を使うセレナに第2王子の方眉が上がる。だが、何も言わない。お付きの者に言葉使いを注意された事は分かるからだ。




「マルガリータ姫は、何処に?」




簡単魔法、省略マイモード。セレナの前に現れたマルガリータ姫は、元気そうだ。

ふいに出現した2メートル四方の空間に吸い込まれてしまう。


見ていた兵士たちが、どよめく。



「何だ、あれは。地図じゃないか。何て魔法だ!」



2メートル四方の空間に現れた地図を数センチに縮められた姫が飛んで行く。そして、止まった。


魔法を使ったセレナ自身も驚く。勝手にバージョンアップしていくらしいの。私の魔法は。




「ここに、現在地と出ているからですですから。姫さまは、この止まったところに居るんじゃないかないかなかなと思うのよ。ですです。」

「石ころセレナ、聞き(つら)い。何時ものよに、相手を気にしない話し方をしろ。」

「相手を気にしない話し方、ですって!? ふわーい、します!(こいつをジャングルに閉じ込めてやりたい)」




説教された身にもなれっての。私を叱るなんて、乳母とカカ城の侍女たちぐらいよ。私だって、王女さまなのよ!


アネモネは、目を丸くして地図を見ていた。間違いない、このジャングルだ。この子は、凄腕の魔法使いに違いない。




(もしかしたら、この子なら助けてくれるかもしれないわ!)




アネモネは、望みを抱き始めていた。彼女の抱える問題は、1人だけでは解決出来そうにない。


冒険者が、注意を呼び掛けた。



「何かが、居るぞ。モンスターかもしれない!」



ジャングルの中を歩くだけなので退屈していた兵士と冒険者たち。皆、喜んで剣をかまえる。腕の見せ時だ。


セレナは、今まで皆が退治してくれてたので後ろで見物。トカゲか、猪かな。



「逃げろ、カバだぞ。鉄鋼カバだ!」



兵士たちは、王子を連れて逃げて行く。残されたセレナをアネモネが手を引いた。



「セレナさん、逃げましょう。鉄鋼カバは、剣が役に立たないのよ。金属みたいな皮膚だから!」



金属みたいな動物が、いるのか。聞いた事ない。おまけに、素早い。もう、目の前に居たからだ。小山くらいのカバが。



グワワワ、グワワワーー!



大きな口を開けたら、 牙は刃物みたいに光っている。あんなので噛まれたら、おしまいだ。セレナは、寒気がした。



(こ、こ、怖いーー!)



あの時のパーティーで行った採集場所で出会ったハイエナの群れの時も、怖かった。モンスターと戦ったのなんて、始めてだったから。


セレナが狙われて、アネモネが飛び出た。剣で突いて注意をひく。



「セレナさん、逃げるのよ。早く!」



カバは、アネモネの剣を頭で降り飛ばす。アネモネが危ない。何とかしなくちゃ、やらなくちゃ。怖いけど。



(私、怖いの嫌いなのに。心臓がウサギなのに。でも、私が私が!)



涙ぐみながら、強ばった口を動かす。




「私、強い・・んだから。ON、魔力解放!」




セレナの周囲に光が満ちる。アネモネは、眩しさに何も見えなくなった。



ドゴッーーン!グエエエエーー!



光の消えた後には、鉄鋼カバが口を開けてセレナを飲み込もうとしている姿が現れた。だけど、鉄鋼カバがふらつき出して倒れ込む。



ドッスーン、バンッーー!



上がる土埃、揺れる地面。それだけで、どれだけの大きなモンスターかが計り知れる。冒険者たちが、我先に飛び付いて行った。




「先着順だ、俺のだ!」

「何を言う、俺のだよ!」

「これは、魔カバだ。高価な値がつく。決闘しようぜ!」




呆れた。モンスターが退治されたら、皆で獲物を取り合っている。セレナは、苛立った。私は、必死で魔法を使ったのに。



「私の前で、喧嘩しないの!」



セレナの放った一撃は、彼等を打ち落とした。跳ね上げられただけで、怪我は無し。恐れをなして静かになりました。



「そんなに欲しいのなら、分けてあげるから。いいでしょ、王子さま?」



見ていた第2王子は、振り返ったセレナに頷く。

セレナが手を上げただけで、鉄鋼カバはバラバラに解体された。さすがと、皆で拍手喝采。


鉄鋼カバは斧でも切断できないのだ。大喜びの冒険者だけでなく、セレナは兵士にも受け取らせた。優しい子だ。王子は感心した。




(大きな魔力を持ちながら、おごり高ぶらず。まるで、王家の姫のよな精神だ。)




配下の者たちに、気をくばる事ができるとは。まだ、子供なのに。そう、子供なのだが。


第2王子は、モンスターの前に居たセレナの小さな身体に助けたい衝動にかられた。あんなに強いのに。


自分が守ってやりたいと、考えてしまった。おかしな話だ。


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