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( 14 )ラッキーとアンラッキーな出来事

舞踏会のダンスにはグループダンスとソロダンスが合わさっていた。楽団の奏でる音楽に合わせて変えていくのだ。


初めは緊張して警戒してたセレナは、次第に慣れていった。色々な相手と踊ると楽しい。




「失礼、私と踊っていただけませんか。」




誰かと踊っていても、気に入った相手に男性が声をかけてパートナーチェンジ。口説く相手もいるけど、笑顔であしらう。




「あの、セレナさん!」




呼ばれて振り返って、セレナは心臓が凍りつく。ニコニコしているマルガリータが、嫌な相手と立っていたからだ。




「マルガリータお嬢様(ギャアー心の声)」

「王子さまが、お話したいそうですの。お世話して頂いたから。」

「セレナさん。マルガリータ姫に優しくしてくれた事にお礼を言いたかったので。同じ名前の者を知っていますが?」

「よく、言われますわ。セレナは、ありふれた名前ですから(ヒーー心の声)」




どうやら、別人と思ってくれたらしい。今夜の姿は、胸パッドにお尻パッド。一緒に買った金髪のカツラに付け睫に化粧。




(ありがとう、リリーさん。今夜も備品を借りてたらバレバレだった。きっと!)




リリーが行きつけの店に連れて行ってくれてアドバイスしてくれたから助かった。今夜は、この前の私とは違うのよ。


マルガリータが、セレナを見つめる王子に問いかけた。




「王子さま。どうかされました?」

「いえ、知っているような感じがして。」




そんな、まさか。ありません、絶対に。思い出すな、忘れろ!と、喚きたい。それを、セレナは笑顔を繕って押さえ込んだ。


会いたくないと思えば、会うのが決まりなのか。


いや、違う。この場合、娘は避けているが。男は、会いたいと思っている。男は自身の気持ちに気がついていないのだけど。




「そこが、問題だね。頭のいい男が(おちい)る処だよ。オジサンには、分かるけどな。」




ヒョロリとした長い手足と肩に流した銀髪の美男子が、1人つぶやいている。誰も気がついていない。




「だけど、私は知っている。素敵だ、苦悩する王子の姿が見れるぞ。」




彼には、見えていた。青の王子カエルレウムには、黒い影が付いて離れない。あれは、女の猛執だ。


これから、様々な事が起こるだろう。目が離せないぞ。彼は、ほくそ笑む。










やっとの事で、ダンスに逃げ込んだセレナ。マルガリータは、純真で可愛いのだけど。連れが悪い。




「レディ、次は私と踊っていただけませんか?」




肩を叩いてパートナーチェンジ。嫌も応も無い。腰に手を当てられて手を握られてしまった。震えるー。




「どうしました、震えてませんか?」

「はい、武者震いです。王子さまがお相手ですから(嫌なんだもの!)」

「そんなに、緊張しないで。私は、他の男と変わりませんよ。」

「そうですの?(オオカミのくせに)」

「ええ、羊のように大人しい。」

「まあ、面白い(嘘つき!)」




王子の話は、マルガリータの侍女になってくれないかという誘いであった。定職があるからと、丁重にお断りしてダンスを終える。




「気が変わったら、訪ねて来てください。」




そう言われて、握らされた銀貨ジス1枚(レート:1万円)。今度は、胸に入れられずに済んだ。













朝になって、帰ってきたセレナは疲れきっていた。あの嫌な奴のおかげで。だが、驚く事が起こっていたのだ。


明け方の町を歩いて帰宅するのを、ジミーが家の前で待っていた。




「まだ、嫁入り前の女の子だから。心配で。」

「大丈夫です。世間知らずじゃないから。」

「君のお父さんも、心配したと思うよ。可愛い娘だから。」

「お父さんは、心配しません。腹違いの女姉妹が居るから。」

「腹違い?お母さんは、亡くなったのかい?」

「いいえ、元気です。お父さんが、何人も奥さんが居るから。その姉妹とケンカして(試合)出て来ただけです。」

「何人も、奥さん!酷い話だな。セレナちゃんは、苦労したんだな。」




優しい言葉をかけられると、泣きそうのなる。他人は、こんなに優しいのに。どうして、実の親は・・・。




「セレナちゃんが出かけた後に、ギルド協会の人が来てたんだ。魔法検定を受けてみるかい?」




魔法検定?どうして、ジミーはギルドに関係した事を勧めてくるのだろう。あんなに、反対していたのに。




「どうしたんですか?嫌がってたのに。」

「まあ、君の実力を知ってしまうと反対も出来ない。才能は、生かすべきだ。これからの事も考えて。魔力は、増やすのは難しいからね。」

「魔力、ですか?」

「ギルドの採取で、セレナちゃんが退治したハイエナなんだけど。」




ハイエナ?賞金は、受け取りましたけど。まさか、返せとか。胸パッドとお尻パッドに使ってしまったのに。




「回収して処理場へ持って行ってみたら、魔ハイエナだと分かったそうだ。」

「魔ハイエナ?」

「分からないだろ、私もだよ。初めて聞いた、ハイエナにも、「魔物」があるのを。」

「魔物だったんですか、あの群れ!」

「だから、賞金が倍以上になるらしくて。受け取りに来て欲しいそうだ。」




ジミーは、ギルド協会の人が教えてくれた話をセレナには話さなかった。


魔ハイエナは、最近になって出て来た魔物で。退治するのには、ハイスペックな魔力を持つ魔法使いでないと難しい事を。




ギルド協会の人。

『仮免許魔法使いてもんじゃないぞ。凄い魔力て事になれば、王様に雇ってもらえる。大出世だよ!」




帰る家の無い女の子に、自分は何もしてやれない。危ないからとか、言える立場じゃないのだ。












明くる日、賞金を受け取りに出かけたセレナ。待ち構えていたギルド協会の魔法使いに魔力検定をされてしまう。強引に。




「魔力レベル80?そんなはずは、無い。100は越えていないと!」




セレナは、知らぬふりをした。大きな魔力を持っている事が分かったら、面倒だから。追っ手もいる事だし。目立ちたくない。


懸命に、成り立ての素人魔法使いとして演技する。




「わあ、凄いー。魔力が、80だなんて。嬉しいー。レベル15だったのに(隠してるけど)」

「あ、下がった?レベル15だと?」




魔法使いの前で、落下した魔力。その後、何回も計り直したが上がったり下がったりと安定しない。


不安定魔法という事に、なりました。




「凄い逸材(いつざい)だと、喜んだのに残念だ。運が良ければ、一発逆転の不安定体質。と、報告しておくか・・・。」




未練たらしく嘆く魔法使いを横に、セレナは胸を撫で下ろす。これで、何とか誤魔化せたみたいです。


ジミーは、セレナの高魔力が確定してスカウトされると考えていたから驚く。




「いいのかい、出世しなくて?」

「私、仮免許魔法使いですから。出来る範囲でやります。そうだ、賞金を使って下さい。」

「セレナちゃん、ダメだ。言っただろ、使えないって。君のお金だ。」

「凄いんですよ、銀貨ジス50枚(レート:50万円)もあるの!」

「えっ、銀貨ジス50枚(レート:50万円)!?」

「新種だから、賞金が高いらしくて。勿論、あげません。貸すんです、利子つけて。」




利子を払うという話し合いは、思ったよりスンナリと合意に持ち込んだ。これで、ジミーは新しい機械を買える。


それは、リリーが教えてくれたジミー攻略法だった。



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