( 10 )石ころと呼ばれています
指定した日の約束した時間に、美男子王子はやって来た。
「用意は、いいか。出発する。」
気が進まなくて眠れなかったセレナは、造り笑顔で挨拶。素通りされたけど。表情が分からないように俯いて、悪態つく。
「うちの従業員を、宜しくお願いします。セレナさん、気をつけて行くんだよ。」
まるで、父親のようなジミーの口ぶり。優しい人だから、セレナの口元が緩む。私が頑張らないと。
(気にしないようにしよう。ロバと一緒だと思えばいいのよ。)
人間だと思うから、嫌になる。動物と思えば、平気。言葉を喋るけど。
第2王子の馬車に乗せられる。馬車の中には、王子の侍従も居て乗客は3人。気詰まりな空気は避けられそうだ。
「あ、セレナちゃん。間に合って、良かった!」
馬車の外から呼び掛ける声。なんと、フィリップスがお見送り。
「気をつけて、行ってね。怪我しないでね!」
心配そうに手を振る姿に子供じゃあるまいしと笑う。だけど、嬉しかった。
「なんだ、石ころセレナの男友達か?」
ほっこりした気分を台無しにする言葉。ムッとしたセレナは、第2王子を見据えて聞いた。
「その、「石ころ」って何ですか。教えてください。」
顔色も変えず、眉ひとつ動かさずに答えてくる。
「ジミーの渡した資料によると、仮免許魔法使いのセレナ・ストーンとある。ストーンは、「石」だろ。違うか?」
「だからって、「石ころ」は無いと思います。」
「私は、依頼主だ。私の好きにする。」
セレナは、腹が立った。王子を睨みつけて顔を背ける。
やっぱり、嫌いだ。こいつーー!
依頼された宝石探し。馬車で少しばかりの時間を走ったかと思うと、都の外にある村へ到着。
王家の縁者という老人が、小さな屋敷で待ち受けていた。
「叔父上、手伝いを連れて来ました。その召し使いの部屋へ案内して下さい。」
古い屋敷の中を歩いて、セレナは王子と共に召し使いの部屋へ行く。
話というより、指示を馬車の中で出されている。その合理主義的なやり方に、王子という者を知らされたセレナ。
(そうでしょうよ。石ころセレナは、金で雇った「何でも屋」だから。やれば、いいのよね!)
「石ころ」なんて、女の子に付ける呼び方じゃない。ココ国でも、失礼な侍女がお城にいた。
そんな人に、私は成らないから。と、セレナは怒っていた。
「ここが、そうですか。では、始めてくれ。」
偉そうに命令する王子。顔で笑って返事して、使用人の部屋を見回す。
知ってるのよ。あなた、魔法が使えるのよね。自分が出来るから、私の実力を試してる。やってやるわよ!
「はい、王子さま。すぐに。」
お仕事です。ジミーさんに迷惑かけないように、喧嘩は我慢。
部屋の中をクルリと回る。ウルサイのが小馬鹿にした。
「呪文は、使えないのか。我流だな。」
「はい、学校で勉強、し、て、ま、せ、ん、から。ウフフーのフッ。」
皮肉くらい、許して。この失礼な奴は、分からないから。
頭の中に馬車の中で見せられた宝石のスケッチを思い浮かべる。宝石が置かれていた場所が光った。宝石の魔力の痕跡だ。
「やはり、この使用人に間違いないか。」
「はーい、そうですね(知ってたくせに)」
直ぐに部屋を出て行く王子。セレナは、居なくなると魔力を引き出した。
「教えて、宝石は何処にあるの?」
ボコッ、ボコボコ、ボッコーン!
庭から物音。地震か、庭だけが揺れ動く。何かが庭の花壇から飛び出した。窓がバンッと開く。
「いい子ね。もう、見つけたの?」
セレナは微笑み、片手を差し伸べる。庭から飛んで来た包みが、その手の上にポトリと落ちる。
「何ごとだーー?」
駆け戻って来た王子は、部屋の中に立つ少女を見据える。セレナが何かをやったと思ったのだろう。
セレナは、ゆっくりと身体を向けて手の上の物を見せた。
「どうしたんでしょう、飛んで来ました。王子さま?」
皆、呆気にとられる。こんな事が有るだろうか。今から盗人を探して盗難品を取り返しに行くところなのに。
それが、王子が連れて来た町娘の手に乗っているではないか。盗られた宝石は、庭に隠して埋めていたらしい。捕まらないように。
予定よりも早く帰宅したセレナに、ジミーは驚く。捜索は、夜中まで続くだろうと思っていたからだ。
「ジミーさん、代金は受けとりました。仕事が早く終わったので、オマケしてます。」
「そうなんだね。いいんだよ、セレナさんの仕事だから。」
ジミーには、盗難された宝石が盗難されてなかったと報告する。
(あの顔ったら、見つけるとは思って無かったのね。フフフ、フッー♪)
セレナは、ご機嫌。楽しくて仕方ない。ちょっとだけ、仕返ししました。




