プロローグ
他サイトで書いていた作品です。楽しんでくれると、いいなー(。^。^。)作者
それは、カカという王国での出来事。城の広場では、王様と王妃様の前で試合が行われようとしていた。兵士が高らかに宣言する。
「これより、アンジェリカ王女とジョセフイーヌ王女との王位継承権を得る為の公式試合が行われる!」
集まった貴族達が、広場の中央に現れた2人の王女を見つめた。今の王家には、強い魔力を持っているのは2人だけなのだ。兄弟の王子たちには、魔力が無い。
「正妃(本妻)と側女(愛人)の姫たちが争うとは、皮肉ですわね。」
「仕方あるまい。王家のしきたりだ、魔力の無い王子たちは除外されておる。」
「どちらに、賭けます?私は、側女のジョセフイーヌ姫に。」
「それは、ズルい。大方が、ジョセフイーヌ姫だぞ。アンジェリカ姫は、修道院にて花嫁修業をしていたとか。魔法使いたちに指導を受けていたジョセフイーヌ姫を相手では、話にならん。」
殆どが、勝ち気そうなジョセフイーヌ王女の勝利を確信していた。ほっそりとした小柄な身体のアンジェリカ王女が勝つとは、誰も思って無かったのだ。
「では、はじめーー!」
2人は、向かい合う。その瞬間、吹き飛ばされたのはアンジェリカ王女。その後も、城の壁に叩きつけられる。圧倒的なジョセフイーヌ王女の勝利だった。
「これで、私、ジョセフイーヌが次の王よ!」
ジョセフイーヌ王女は、歓声を上げる貴族たちに満面の笑顔で手を振るのだった。巻き起こる祝福の声と拍手。
この日、次期王位に着くのは勝者のジョセフイーヌ王女と決まった。敗者となったアンジェリカ王女は、しきたり通りに追放となるのだ。
それから、1週間の時が過ぎた後ーー。
国境で、馬車が止まります。馬車から降りたのは、少女が1人。粗末な衣服と靴に肩までの黒い髪。
「ここから、隣りの国へ行けば遠距離の馬車乗り場があるから。気をつけて行くんだよ。」
御者の言葉に、少女は頷いた。
「はい、分かりました。送ってくれて、ありがとうございます。」
走り去って行く馬車を見送ると、少女は手提げ鞄を手に歩き出す。そして、隣りの国へ足を踏み入れた。
「ジャンプーー!」
ピョンと飛んでみる。ニッコリと笑う。元気を出そう、負けない。
「アンジェ、あんたは自由よー!」
大きな声で叫んだ。あんなとこ、誰が居るもんか。喜んで出て行ってやる!
「あ、痛っー。忘れてた、傷の事。」
地面に座り込み、痛みが治まるのを待つ。頑張って、アンジェリカ。こんな事、何でも無い。御前試合で大怪我しても、誰も見舞いにも来なかった。
「いいの。追放される王女になんて、近寄りたくないもんね。でも、宝石も何もかも取り上げられちゃった。魔力も。」
恨めしそうに、追い出された国を横目で見る。親なのに、王様も王妃様も見送ってもくれなかった。
5才から乳母と修道院に入れられてたから、どんな人かも知らない。
いいんだ、忘れちゃう。嫌な事、全部ー。
「そうだ、名前。今日から、私はセレナになるわ。アンジェリカじゃないの。王女でも無い。普通の女の子よ!」
これから、精一杯、好きに生きてくから。
本当は怖がりで、乳母に「ウサギさん」と言われてたくらいだけど。試合なんて、恐怖だったけど。
ウサギの心臓で、頑張ってく!
私は、セレナでっす。本名は別にあるけど、言いたくないから。年は、17歳。故郷は、お日様が上がる方向(内緒)。
「あー、ヤバい!こんなんじゃ、家出あつかいされる。考えなきゃ。」
大人が一緒じゃない理由。考えたいけど、頭が痛くなってきた。まだ、身体が言うこと聞かない。治癒魔法を使って治してはくれたけど。
魔力を絞り取った傷口も痛む。手加減しないから。長かった髪も、囚人みたいにバッサリと切られてしまった。
「歩くのも疲れるう。あれ、戻しといた方がいいのかも。」
立ち止まったセレナ(アンジェリカ)。伸ばした左手をグーチョキパー。それ、グーチョキパッパ。そして、ぶつぶつと呟き出した。魔法の呪文だ。
「我が名は、アンジェリカ王女。契約の名の元に命じる。有りのままの姿に戻れ!」
左手の指から浮き上がる古文。絵文字のような緑色の文章は、少女の身体中に浮き上がった。見えないように掛けられていた魔法だ。
遠い場所に居る乳母の声が聞こえる。
『お嬢様の魔力は、強すぎます。お城なんて、簡単に吹き飛ばすかもしれませんから。今は、隠しておきましょう。』
幼い王女の身を案じて、王様に内緒で魔力を外した乳母。知られたら打ち首覚悟の呪文だ。城の魔法使いたちは、魔力を奪ったと思っているだろうが大した事はない。
取られたのは、ごく1部の魔力だけだった。
「ありがとう、私の乳母。魔力が強いと分かったら、殺されてたかも。分かってたのね。」
何しろ、御前試合の前に毒をもって痺れさせたくらいだから。怖い人達。セレナは、身震いした。身体に溢れる魔力。それを使って、傷の痛みを癒す。
暫く歩いて、辿り着いた馬車乗り場。
キョロキョロー。
セレナは、目ざとく見つけた。仕事紹介所を。手持ちのお金は、少しだけ。当座の生活費と交通費。
お城からは、田舎に住む王家の縁戚の家で暮らすように指示されている。そんなの、気にしない。
(少し働いて、お金を貯めよう。)
少女は仕事紹介所へ飛び込むと、壁に貼られた求人の紙を見て回る。すると、隣りに立った婦人が話かけてくるではないか。
「いい仕事があるんだけど、どう?」
それは、時給の良い仕事だった。でも、身元引き受け人が必要。セレナには、無理だ。
「じゃあ、私が身元引き受け人になるわ。家は、どこ?え、無いって。家出!」
「家出じゃないんです、働きに来ました。信じて下さい!」
「なんか、事情ありそうねえ。いいわ、間借り人を募集してる知り合いがいるの。紹介してあげる。」
一石二鳥、幸運だった。その人の世話で、仕事も住む部屋も簡単に見つけられたからだ。
セレナは、働くのは慣れている。修道院に居る間、色々な仕事を体験したからだ。とても、王女とは遠い生活だった。




