第八十四話 ラファ受験1日目なのである
カルア天鱗学園
学生街南部に位置し、その『領区』は王城と中央教会に次いで広く、人口も附属中等教育学校の生徒や職員を合わせると学生街では最も多い。
領区内には天鱗学園、附属中等教育学校、学生寮の他に、カルア闘技場があるため、学生街の中では一般人の入区が最も多い領区でもある。
王城からフェリヌア領まで続く『響鐘の道』を南下し、商人街を抜け、凱旋門を潜るととその領区が見えてくる。
響鐘の道を覆い被さるように建設された『カルア大橋』が目印で、東側を見ると白亜色で統一された城型の天鱗学園校舎と、一際目立つ円形の巨大建造物『カルア闘技場』が並び建ち、響鐘の道を挟んで西側には、東側に比べると近代的な建築様式をとられた、附属中等教育学校と学生寮が併設されている。
カルア大橋の麓は路面電車の駅も兼ねた検問所となっていて、学生証や教員証を持たない人が自動的に検出される特殊な魔術具が設置されている。
五学院合同祭や入学試験、創立祭等の特殊な行事のタイミング以外では一般人の入区は禁止されており、魔術具に引っかかたものは王都騎士団によって身柄を拘束される。
また行事の際にも入区規制は厳しく、行事の都度発行される入区証が無ければ、これもまた王都騎士団によって身柄を拘束されることとなる。
――天暦2544年12月13日
カルア天鱗学園附属中等教育学校入学試験初日。
各初等教育学校から推薦を受けた生徒のみが受験案内と入区証を受け取る。受験をできる生徒はその段階で絞られているのだが、それでも二千を超える受験生が入区証を握りしめて列に並ぶ。
その横にはそれぞれの保護者が同伴し、検問所は瞬間的に王国で最も人口密度の高い場所となっていた。
緊張と興奮が入り混じった受験生達からは独特の熱が立ち込め、暖房器具などない野外なのに冬を忘れさせるほどに気温が上昇している。
受験生は防寒具を脱ごうとし、体が冷えることを懸念した保護者がそれを止める。中には寒暖差と緊張で体調を崩して倒れる受験生もいた。
ハレア家はもう間も無く入区する番となる。
無言で地面を見つめ続けるラファ、それを見つめつつ声をかけるか悩んであたふたしているアーニャ、落ち着かない様子で辺りを見まわし続けるトリシア。
アーニャとトリシアはラファ以上に緊張し、並んでいる2時間終始無言であった。
ハレア家は、どの家も緊張している中でも周囲から浮くほど、一際緊張していた。それを見て緊張が解れた受験生も少なくないだろう。
「次の方」
無愛想な騎士の声に従ってラファが検問へ向かう。
カルア大橋と同じ煉瓦造りの検問所には、人がすれ違えない幅の門が4つあり、それぞれに騎士がついている。
列に並んだ受験生達は呼ばれた門へと順に進んでいく。
ラファが呼ばれたのは1番右手側、待機列から最も遠い入場門。
「…じゃ、行ってくる」
入区証を持った右手を上げ、ラファは2人の顔を見ることなく歩き出す。
親族が受験生に声をかけられる最後のタイミングにも、アーニャとトリシアは声を出すことができない。
待機列から離れると人口密度は一転し、ラファの周りからは誰もいなくなる。
冷たい風が剥き出しの頬にあたり、吐き気を催すほどの緊張が襲う。地面を踏み締める感覚すら失い、ラファはふわふわと宙に浮いているような気がしていた。
「出身初学校と名前を」
入区証を両手で騎士に差し出すと、無機質な声がかけられる。
静かでいて、はっきりと聞こえてくる高圧的な声。
11歳の少女が怯えるには十分だった。
「ら、ラファ・ハレア、です。…あ、ナスフォ初等教育学校です……」
うまく答えられなかったと、尻すぼみになっていくラファの声。受験が始まっているわけではないのに、絶望が広がっていく。
「ナスフォ初学校、ラファ・ハレアだな」
騎士がラファの顔を見る。
ただ見られただけのはずが、ラファには睨まれたように感じた。
秒数にしては5秒も経っていないだろう。
それなのに『もし入試手続きがうまくできてなかったら?』『もし今の失敗で不合格が決まったら?』などと一瞬で思考が回る。
姉と母と過ごした無言の2時間よりも長く感じた。
「よし。入れ」
騎士が入区証に判を付きラファに片手で返す。
それを受け取ろうとした両手は震え、地面に落としてしまった。
「…ぁ」
しゃがんで拾おうとするも上手く掴めない。
焦るほどに体は震え、視界すらおぼろになってくる。
普段ならしないようなミスの連続に、ラファの心は壊れかけていた。
堪えきれない涙が溢れそうになった時、目の前の入区証は大きな手に拾われ、ラファの鞄の中にしまわれた。
「出る時も必要だから無くさないように。…そんな緊張しなくても大丈夫。一回深呼吸して落ち着いてから会場に行きなさい」
大きな手はそのまま優しくラファの頭に下ろされた。
声の方へ顔を向ける。
怖いと思い込んでいた騎士は、父よりもずっと優しく微笑む男だった。
「あ、ありがとうございます……」
激しい緊張からの緩和で涙が溢れる。
泣きたくなんてないのに自然と溢れる涙を袖で拭う。
姉が用意したコートは、首元と袖にファーがついた受験には向いていないものだったと思い出し、急に恥ずかしくなった。
下げっぱなしだった顔を空に向け大きく息を吸う。
12月の冷たい空気が肺に満ちて、気持ちがリフレッシュされる。大きく吸った空気を全て吐き出した頃には、体の震えもおさまっていた。
「…よし」
小声で気合いを入れ直し受験案内に書かれた会場へと向かう。顔を上げて見れば、同じ会場へ向かう受験生達の姿がよく見えた。さっきまでの自分のように緊張している姿を見て、また一安心をする。
入学試験の会場はカルア天鱗学園の高等部。
門の向こうには夢にまで見た白亜の城が広がっていた。
門から続く道はレンガで整備され、街灯は最新式のものだが、景観を損なわないようにレトロな外見をしている。
噴水こそ止まっているものの、広場には青々とした芝が広がり、広場を囲うように植えられたマシルの木は綺麗に紫色の花を咲かせている。
冬でも満開なのは、この学院に優れた光魔術師が多いことを示している。
広場を抜け35段ある大階段を登れば、カルア天鱗学園の玄関『闘神大扉』がある。木製の巨大な扉は左右両側開けっぱなしにされ、天鱗学園の在校生が見張をしている。
闘神大扉の先はエントランス。
ナスフォ初学校の校庭ほどはあろうかというだだっ広い空間。天井からはシャンデリアがぶら下がり、上下左右どこを向いても赤と金を基調とした絢爛豪華な装飾がされている。
正面には食堂へと向かう廊下があり、その左右から弧を描くように2階への階段が設置されている。
受験生が向かうのは食堂でも2階でもなく大講堂。
エントランスに入って左側に向かい、廊下を直進する。右手に誰もいない教室を見ながら進み続けると大講堂へと繋がる渡り廊下に出る。
廊下には受験生が列をなしていた。
ラファがその最後尾に着くと後ろから声をかけられる。
「君は旅行気分か何かなのかい?」
挑発的な少年の声をラファは無視する。
少年はそれが気に食わなかったようで、ラファの肩を掴んで振り向かせる。
「ふざけたコート、ふざけた態度。君はこの学校に相応しくないようだ。さ、帰りたまえ」
「うるさいんで黙っててくれませんか?」
振り向いた先には、柔らかめのオールバックをした少年がいた。その綺麗なブロンドを見てラファは相手が貴族であることを確信した。
だが貴族相手だからといって怯むラファではない。
掴まれた手を払い除けて前を向く。
すると、また肩を掴んで振り向かせられた。
「田舎者は地位の差がわからないようだ。僕の名前はライト・パドリクス。当代王剣レオニア・ヨン・パドリクスの弟にして次代王剣となる男だ。さ、帰りたまえ」
「兄に憧れるのは自由ですが、無駄な努力をしても意味がないので帰ったらどうですか?」
「…名乗っても態度を改めないとは余程の愚物だな」
「名前だけで失礼が許されると思ってるなんて、第一貴族様の汚点ですね」
不穏な空気を察した周囲がざわつき始める。
「ふん。こんな愚物の為に騒ぎになるのは不本意だ。失礼には目を瞑ってやるからさっさと戻れ」
お前が振り向かせたんだろ。
と喉まで出かかったのを堪えてラファは前を向く。
くだらないやり取りをしている間に列は進んでいた。
少し早歩きで前に追いつく。
列に着くと今度は前の少女が声をかけてきた。
「…ライトのことは気にしない方がいいですよ。国立初学校の人はみんなそうしてます…」
淡い桃色の髪が特徴的な小柄な少女。
来ているのは王国立初等教育学校の制服と、貴族の家紋が入った紺色のコート。
「大丈夫、全く気にしていませんから。ありがとうございます」
「ど、どういたしまして…あの、コート、おしゃれでかわいいと思います…お姉様が好きそう…」
「あれ、姉さんの知り合いですか?」
「い、いえ!私のお姉様が好きそうってことです…」
「そういうことですか。このコート私の姉さんの趣味なんです。私はお洒落とかに疎いので」
「でもとっても似合ってて……お姉様みたいに背が高くて……かっこいい……」
「ありがとうございます。お互いがんばりましょうね」
前が進んでいることに気がついていない少女に指を刺して教える。気がつくと少女はぺこりと頭を下げて、ぱたぱたと可愛らしく駆け出した。
自分と同い年とは思えない幼い少女。
受験のライバルではあるが、ラファは彼女も合格してくれれば良いのにと思った。
少女が大講堂の中へ入っていくと、廊下の列はラファが先頭となった。
渡り廊下から大講堂を覗くと、10ヶ所くらいに別れて1日目の入学試験を行っていた。
カーテンなどを使った仕切りもなく、各教員の下にそれぞれ受験生が列をなし、1人ずつ面接と一次実技試験を行っている。
「次の受験生、③と書かれたヤミア先生の列に並んでください」
入り口に立った在校生の指示に従って、左手側に見える③の看板へ向かう。
③の列に並ぶ生徒は皆帯剣している。
そこが剣士用の受験列であることは誰の目から見ても明らかであった。
剣のグリップを確認したり、メモを読んでいる受験生もいる中、程よく緊張がほぐれているラファは前の生徒達を見ていた。
面接の受け答えはどうでもよいが、同じく天鱗学園を目指す同世代の子の剣術には興味があった。
――大したことない。
2人、3人と見てラファの緊張は完全になくなった。
確かにナスフォ初学校の生徒よりは優れている。同じクラスにいる誰よりも遥かに剣の才能がある。
だがラファには遠く及ばない。
才能は勿論、努力量が桁違い。
ここにいる誰よりも剣をうまく振れるし、向上心があると自信を持って断言できる。
そんな子達の中にも合格者がいた。
1日目試験の合否はその場で言い渡される。
ラファが見ていた5人のうち2人が合格していた。
――これなら絶対に受かる。
ラファのそれは慢心ではなかった。
幼い頃から努力を続けてきたが故の確信。
誰よりも積み上げてきた事実はラファに完全な自信を取り戻させた。
「次の方」
いよいよラファの番がやってきた。
木の床を踏み締めて前に出る。浮遊感なんてもうどこにも残っていなかった。
「ナスフォ初等教育学校から来ましたラファ・ハレアです」
ラファはヤミアの紫紺の瞳を見つめて答えた。
2人が見つめあったまま時間だけがながれる。
「合格です。受験案内をこちらへ」
ラファは前へ進んで受験案内を両手で渡す。
なんの問答もなかったことに疑問はなかった。
見つめあった数十秒で自分の実力が正しく伝わったと、ラファは理解していた。
なぜならラファにもヤミアの実力が伝わったから。
姉やタイグドとも違う、自分の延長線にある高み。
この人なら自分のことを理解してくれると理解した。
ヤミアは受験案内に判子を押すと、両手でそれをラファに返す。
「エントランスに戻って右手側の廊下を進んで、2つめの教室でこれを先生に渡してください。明日の案内と入区証を受け取れます」
「はい。ありがとうございました」
余計な言葉はいらない。
ヤミアと話をしたいことはいくらでもあるが、それは入学したらできることと割り切った。
入ってきたのと別の出入り口から大講堂を出る。
散策がてら校内を回る。
順当にいってもここに来れるのはまだ先の話。
天気もいいしラファは食堂へ向かうことにした。
大講堂から右回りで食堂へ向かう。
道沿いには石像があったり、池があったり、空の青さに浸る暇すら与えないほど校内は何かしらかで埋め尽くされている。
ラファは芸術家でもなんでもないので、そのひとつひとつの良さは分からないが、今までの人生で味わったことのない高級感と、1日目が終わった高揚感でハイになっていた。
下手くそな鼻歌を歌いながら散歩を続けていると目的地である食堂に着いた。
食堂は円形の2階建てで、小さい闘技場のような見た目をしている。その横には中庭があり、白いテーブルと椅子が置かれていた。
「あれー!?受験生だ!どしたの迷子!?コートめっちゃかわいいね!てか、そんなコート受験に来てくるのめっっちゃ勇気あるね!私達?私達はねー受験の手伝いで学校来たんだけどうるさいからって先生に返されたの!せっかく妹に会えるかなーって思ってたのに!あ、私の妹いなかった?ちっちゃくて弱そうな子!!」
快活な声が響きわたる。
綺麗な声をしているが、小鳥の囀りと形容するにはあまりに喧しい。
ほとんどが空席の中、お茶会をしている生徒が2人。
騒がしい桃髪の方は新聞を片手にコーヒーを、ラファの方をちらりとも見ない銀髪の方は本を読みながら紅茶を飲んでいる。
「もしかして、先輩より淡い桃色の髪をした国立初学校の子だったりしますか?」
「え!?そうそうそうそう!!ねねね聞いた!?運命じゃない!この子ミラに会ったんだって!!あのね、その子ミラっていうの!多分受かると思うから入学したら仲良くしてあげてね!!あんまり喋んないけど良い子だから!あ、あんまり喋んないって言ってもこの子よりは喋るよ!!あぁ!!そうだそうだ!聞いたら驚くよ!この子の名前はねーーなんでしょう!!ヒントは『ス』!!」
先ほどの少女と髪色以外は似ても似つかない女子生徒は手をバタバタと騒がしく動かしながら喋り続ける。
「…す」
「ねねね、お名前は何ていうのー?どこからきたの?てか、コートもだけど髪型も靴もかわいいね!!おしゃれ好きなんだ!!てか顔がまず優勝!!めっっっっちゃ美人!!」
「カレン」
「あ、迷子だったんだっけ!ごめんごめん!いいよ、お姉さんに何でも聞いて!天鱗学園のことなら何でもわかるんだから!!まだ中等部だけどねっ!!」
「カレン」
「だから入学したら直属の後輩になるね!!部活何入りたいとか決めてるの?私のオススメは新聞部!いろんな研究室とか領に取材という名の旅行に行けるからオススメだよ!何とそこには私達が所属してます!!いぇーーーいっ!!」
「カレン!」
「!あれ、どしたのゆきぴょんそんな大声出して。受験生ちゃんびっくりしちゃうよ!」
「あなたに言われたくありません!あなたに!」
半永久的に喋り続けるカレンと呼ばれた桃髪の女子生徒を、ヒントが『ス』の銀髪の女子生徒が止める。
「はぁ…騒がしくてごめんなさい。初めましてスノウ・カルモンテです。何かお困りですか?」
銀髪の女子生徒は『スノウ・カルモンテ』と名乗った。
王国で知らない人間はいない。歴代最高の魔術師。
「……いえ、せっかくなので散策していただけです」
ラファは動揺したら失礼だと思い、必死で平静を装って答える。
目を合わせて初めて気がつく圧倒的な存在感。
陶磁器のような肌、上部が尖った耳、魔石より透き通った青い瞳。風に靡く銀髪は冬空より冷たく、陽の光より眩しい。
ラファが初めて見る精霊人は、今日見たどんな芸術品より美しかった。
「そうでs」
「なーんだ!よかった!!てかゆきぴょん勝手にネタバラシしないでよ!クイズだったのにー!!」
「ちょっと、人が話をしてる時に割り込まないでください!!」
スノウがカレンを睨む。
絶対的な美人の睨んだ顔は鬼より怖い。もともと気のきつそうな顔をしていることもあって、ラファからするとスノウのその顔は呼吸が止まるほど怖かった。
「えーどうしたのゆきぴょん!人と話そうとするなんて珍しい!!」
「…別に普通に在校生として当然のコミュニケーションくらい取ります」
「うそだぁー!?いつもなら私を止めるだけ止めて自分は話しないじゃん!!」
「…なんかちょっと知り合いに似てた気がしたからじゃないですか。知らないですけど多分そんな感じです」
「えぇー?こんなかわいい子いたっけ?いやかわいい子はいっぱいいるんだけどさ、初めて見るタイプの子な気がする…。んーわかんないや!!あ!そうだ名前教えてよ!!」
だがカレンは怯む様子なく喋り続ける。
関心はするが、あまりラファの得意なタイプではない。
「ラファ・ハレアです。ナスフォ初等教育学校から来ました。あと、服や髪は姉の趣味なので私はよくわかりません」
スノウに緊張してぶっきらぼうな返事になる。
ラファは本日2度めの緊張を覚えていた。
「!ナスフォ!ナスフォ…ナスフォ?あれ、なんかで話したよね、何だっけ?ゆきぴょんわかる?」
「戦奏姫のとこですね」
「ああそれだそれ!へー、ナスフォから来たんだ!!よろしくねラファちゃん!私のことはカレン先輩でいいよ!学校に入ったら身分とか関係ないし!この子のこともスノウでいいよ!カルモンテとか長いし!」
「別に言うほど長くありません。まあスノウでいいです。家名で呼ばれるのあまり好きではありませんし」
「えへへへそういうこと!!あ、引き止めてごめんね!明日明後日も受験で大変だと思うけど頑張って!入学したらまたよろしくねっ!新聞部で待ってるから!!」
カレンがばいばーい。と口に出しながら両手を振る。
スノウは本に視線を戻して右手だけをそっと挙げる。
あまりにも怒涛の展開にラファは呆然としていたが、ふと我に帰ってエントランスへ向かう。
受験に受かったことより何よりも先に、スノウ・カルモンテに会ったことを母と姉に自慢したかった。
くぅ。とかわいらしい音がラファのお腹から鳴る。
昨日は緊張してほとんど王都を味わえなかった。
夜ご飯も気がついたら食べ終わっていて、何を食べたかすら覚えていない。
時刻はまだ10時半。
昼ご飯には少し早いが、2人と合流したら何か食べに行こうと決める。
いつか、手合わせしてみたいな。
食堂へ向かっていた時よりさらに上機嫌でエントラスへ戻る。大階段には今から大講堂に向かう受験生がまだまだ沢山いた。
場違いなお洒落をした女子生徒が2日目の案内を受け取りに行く姿は注目の的で、これから受験する生徒や落ちてしまった生徒からは強い非難の眼差しを向けられる。
上機嫌なラファはそんなの全く気にならなかった。




