表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕は完璧でありたいのである  作者: いとう
第一章 僕爆誕
9/116

第六話 うんちくなのである



 実はこの世界の、いや『トールマリス王国』の冬は寒かったのである。



 正確にいうと12月はフェリヌアの月なので、ざっくり分ければ秋なのだがそんなことはどうでもいいのだ。

 僕の感覚では12月は冬だし、冬と呼ぶに相応しい寒さなのである。


 夏がそんなに熱くなかったことと、去年は意識がなかったこと、意識が芽生えた後も家から出ていなかったことがあって、僕は完全に気候の変化はそれほどないのだと思い込んでいた。



 家の中が寒くない理由は簡単だ。この世界にも『暖房』があるからである。


 この世界は科学技術は発展していないが、魔術が発展しているおかげでなかなか便利なのだ。


 簡単な魔術であれば、魔術師がいなくても『魔術具』に魔力のこもった『魔法石』をセットするだけで発動させることができるのだ。


 『魔法石』というのは電池みたいなもので、その辺の店で買える、中に魔力を貯蓄することができる石だ。



 『暖房』は部屋を暖める程度の熱を発する魔術が組み込まれた魔術具で、この世界で『冷蔵庫』と並ぶ最もポピュラーな魔術具である。


 つまり僕は暖房の効いたぬくぬくした部屋にいたので冬の寒さに気がつかなかったということだ。恥ずかしい限りである。



 余談だがお風呂を沸かす魔術具も存在する。

 しかし大量の水を沸騰させる魔術具となると、やはりそれ相応の値段がするらしい。

 幸いうちはパパが炎の魔術を使えるため、買わなくて済んでいる。

 セドルド家は買ったらしい。




――――――――――――――――――――――――――




「うぅー…今日も寒いわねー」


「まま、だいじょうぶ?」


「大丈夫よー。 心配してくれてありがとね」


 こんなに寒い朝に外に出るのは体に負担がかかるんじゃないかと、僕は毎日心配なのである。


 ママのお腹はもうかなりの大きさである。

 出産予定日は3月らしいが、僕から見ると明日にでも生まれるんじゃないかというような大きなお腹である。


 僕はもう普通に歩けるので、お見送りも散歩もカラさんとトゥリーと3人でできる。

 だからママは休んでいていいのである。休んでいてほしいのである。



 パパも毎日のように休んでていいよーと言っているのに、ママは聞く様子がないから仕方ないのである。


 カラさんとセドルドさんは心配し過ぎだと言ってくる。

 人の心がないのだ。




 そういえばトゥリーも歩くようになった。


 そしてトゥリーはセドルドさん(ぱぱ)よりもカラさん(まま)よりも先に僕の名前を呼んだのである。

 よくできた弟子だ。




――――――――――――――――――――――――――




 散歩が終わればいつも通りにセドルド家で遊ぶのだが。最近は積み木しかしていない。トゥリーが大ハマりなので付き合ってあげるのである。


「あにゃ」


「あい」


 僕はトゥリーが置けない高さになったら、変わりに置いてあげるのだ。

 身長はほとんど変わらないが、僕は積み木程度の軽いものなら2m近く浮かせる事ができるから高いところもちょちょいのちょいなのだ。


「あにゃ」


「あい」


 残念ながらトゥリーはまだ積み木を浮かせることも動かすこともできない。

 これは感覚論なので、どうやって教えたらいいのか僕はわからないので困っているのだ。


「あにゃ」


「あい」


 まあいずれトゥリーもできるようになるはずだ。

 魔石(水晶玉の素材)を動かすことはこの世界では常識なのだ。たぶん。

 パパもママもカラさんとセドルドさんも普通に動かせるし、たぶんおおむね間違いないだろう。



「おー」



 トゥリー作のなにかが完成した。なにかはわからないが。

 散々僕をこき使ったくせに完成品は毎回よくわからないものなのである。ふざけやがって。




「あにゃ、あいあとう」


「…あい」



 ……憎めないのである。




――――――――――――――――――――――――――




 さて、家に帰れば勉強の時間だ。

 

 基本的に僕はずっと黒猫のぬいぐるみを連れて歩いている。


 名前は「ねこ」である。


 これがめんどくさい話なのだが、トールマリス語で猫のことは「Taoyan」という。


 そして黒猫のぬいぐるみの名前は「Neko」なのである。こっちの世界の人達からすればどういう意味なのかわからないだろうが、僕からしたら黒猫のねこなのである。


 そんなねこを放し飼いにさせて置いて僕は本を読むのだ。



 「ねこ」が勝手に動き回る原理は簡単だ。



――――《以下うだうだ理論話》――――



 『魔力』というものは体の中の『核』から生成される。


 『核』は臓器的なものではなく、胸の中心あたりにあるエネルギーの塊のことである。

 核にあるエネルギーこそが『魔力』であり、その総量は生まれた時点で決まっている。

 使用して減ったエネルギーは時間で回復するが、その総量以上になることはないのである。


 

 魔力の使い方には『魔導』と『魔術』2種類がある。



 『魔導』というのは核から魔力を、自分の体や魔石、魔鋼といった魔力のよく通るものに流すことで、強化や操作をすることである。


 自分の体に流せば身体能力を向上させられる。魔力で皮膚を鉄のように硬くすることだってできる。

 魔石や魔鋼に流せば、強化することは勿論、自分の魔導による魔力操作が可能な範囲で好きなように操作することができる。


 魔導による強化や操作を前提として、魔石や魔鋼で作られた道具は『魔導具』と呼ばれる。


 つまり、水晶玉やねこを動かしていたのは『魔導』で、ねこは『魔道具』なのである。



 一方『魔術』というのは魔力をエネルギー源とし、正確な術式を用いて引き起こす事象のことである。


 簡単に言えば電気が魔力、扇風機が術式、出てくる風が魔術である。


 術式があればどんな魔術でも使えるわけではない。

 

 魔力を術式に流す過程で、その人の体というフィルターを通ることになるのだが、そのフィルターに個性があるのだ。

 ある人は炎、ある人は水、ある人は風の術式に適した、といったように、そこで対応する属性が変わるのだ。


 そして多くの人はどの属性にも対応しておらず、魔術を使うことができない。


 『魔術具』には簡単な魔術の術式と魔力を術式に変換するフィルターが組み込まれている。そこに魔力を流すことによって魔術が発動するのだ。


 魔術具を用いない魔術は基本的に詠唱によって行われる。

 詠唱とはいってもわざわざ口に出す必要はなく、魔術を行使する本人が頭の中で処理できれば問題ない。



 で、なぜねこが勝手に動き回るかというと、僕が魔導円環術式を組み込んだからである。


 円環術式というのは最も簡単な術式の一つで、要するに同じことを何回も繰り返させるというものである。


 この手の術式により起こることはあくまでも『魔導』であり、なんの属性も持たないため、正確には『魔術』と呼ばない。


 本を読む前にねこを魔導で動かしてパターンを作り、それを円環させているのだ。僕の魔力が届く限り3分1セットくらいの動きを無限に続ける。


 見ていてなごむものだ。




――――《うだうだ理論話終》――――




「ただいまー!」


「「おかえりなさーい」」


「アーニャー今日もいい子にしてたかー?」


「あい」


「パパ今日すごく汚れちゃったからご飯の前にお風呂入ってもいいか?」


「あい」


「今日何かあったの?」


「ん?いや1年の終わりだからって頭から酒をぶっかけられただけだよ」


「へー、そんなこと初めてじゃない?」


「いつもはセドルドがやられるんだけど、あいつ腹壊して早退したから俺だったんだよ」


「ありゃ。明日のパーティー大丈夫かしら?」


「まあ大丈夫だろ。あいつが2日寝込んだのなんて見たことない」


「それもそうね」




 あ、今日大晦日??


トゥリーが初めて意味のある単語を喋ったのは、積み木を積んで貰うためにアーニャを呼ぼうとしたときです。

アーニャはうんちのためトイレに行ってました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ