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僕は完璧でありたいのである  作者: いとう
第一章 僕爆誕
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閑話 ごめんなさい



 ―出会いなんて求めていない私にとって、春なんて季節は何もいい事がありません―



 東城雪(わたし)は自他ともに認める美人です。


 別に自慢でもなんでもなくて、これは本当に誰もが認める事実なのです。


 透き通る程真っ白な肌、枝毛一つない滑らかな黒髪、長いまつ毛に飾られた少し垂れ気味の大きな目、その中に光る黒瞳、すらりと通った鼻筋、ほんのりピンクに色づいた唇、どこをとっても綺麗ですし、全て合わせたバランスも完璧なんです。



 ただ、私にはこの外側に相応しい中身がありません。



 小さい頃から人と話す事が上手に出来ず、本ばかり読んでいました。

 私は別に1人が好きというタイプではなく、人と遊びたかったですし、友達が欲しいと思っていたのですが、自分から話しかける勇気はありませんでした。そんな私でしたが、美人なおかげでいろんな子が私に話しかけてくれました。

 …それなのに結局、私はその子達に上手く返事が出来ず、友達と呼べる子は出来ませんでした。



 中学校に入ると、そんな私は当然、女子生徒からイジメのターゲットにされました。

 見下してるんだろとか、生意気だとか、調子に乗っているとか、男に媚びているとか、有る事無い事言われ続けました。

 周囲と馴染めない自分が悪いとは分かっていても、謂れのない悪口を言われ続ける事は私を苦しめました。


 男子生徒からはイジメられることはありませんでしたが、散々性的な目で見られ、体操服の匂いを嗅がれたり、リコーダーを舐められたり、そんな犯罪紛いの事をしている人達に告白されたりしました。自分に対する悪意ではなく好意なのに、悪意よりも気持ち悪くて、辛くて、男性に見つめられるだけで吐きそうになりました。



 だから私は顔を隠す事にしました。



 どうせこんなに綺麗な顔があっても私は上手に使う事なんて出来ないのだから隠してしまった方が良いと、変人だと思われて避けられる方が良いと考えたのです。


 いじめを両親に相談して転校した私は、新しい学校では自作のグルグル眼鏡と花粉用のマスクを一年中着けて過ごす事にしました。グルグル眼鏡の視界は絶望的でしたが、逆に周囲の視線を気にしないで済むので一石二鳥でした。


 転校したばかりの頃は、男子生徒も女子生徒も散々笑ったり不思議に思ったりして揶揄って来ましたが、私が全て無視していると興味を失って離れていきました。

 反応がないと判断されると、彼らにとって『イジメても面白くない対象』になるので、イジメられることは意外と無いのです。


 3年生になりクラス替えをすると、また私に興味を示す人達が揶揄ってきます。それも彼らが飽きるまで無視して耐えます。


 高校に入学しても同じことです。

 少し偏差値が高い高校に行ったところで、人なんてものは大して変わらないのです。




 ―そして、また私の大嫌いな春が来ました―




 春休みはずーっと新学期のことを考え続けて憂鬱でしたが、終わったら終わったで新学期が始まってしまうので苦しくてたまりません。

 母も父も学校なんて行かなくて良いとは言ってくれるのですが、私はそれを許す事が出来ない性格なのです。こんな性格だからイジメられるのでしょうね。


 学校に向かう迄の長い長い道は、執行までの猶予期間のようで頭がふらふらしてきます。

 長い信号は一生変わらなければ良いのになんて、そんな風に考えてしまいます。



「へくしょん!!」



 花粉のせいで私の汚いくしゃみの音が信号を待っている人達全員に聞こえてしまいました。




 ―出会いなんて求めていない私にとって、春なんて季節は何もいい事がありません―




――――――――――――――――――――――――――




「その眼鏡、実に羨ましいですな!どこで購入なされたのですか!私大変気になりますゾ!」




 唐突に話しかけられて驚いてしまい、私は何とか言葉を返しはしましたが、そこからの事をあまり覚えていません。


 気がつくと私は彼(彼女?)と一緒に登校していました。


 彼は男子生徒の制服の上に白衣を着ていますし、髪型も古典的な七三分けなので男性のようですが、スタイルや顔立ちを見るととても可愛らしい女性のように思えてきます。なりよりも、男性に対して抱く嫌悪感が彼に対してはありません。


 いったいどちらなのでしょうか?


 ただ一つ言える事があるとしたら彼はこんな私でも凄く話しやすい人です。きっと彼が色々気遣ってくれているのでしょうが、私は彼との時間を気がつけば楽しんでいます。


「それで、先輩。私もその眼鏡がとても欲しいのですが、作ってもらえないでしょうか?もちろん対価は支払いますぞ!」


 なるほど。彼はこの眼鏡が欲しかったんですね。

 彼の独特なファッションセンスに引っかかったのでしょう。


「あ、別に大丈夫ですよ…それに対価なんていらないですよ。」


 対価なんていりませんよ。他の人相手ならどうか分かりませんが、私は少なくとも貴方にそれを求めません。


「いやぁ!ありがとうございます!でも対価は支払わせてください!私が満足できないでござるよ!」


「っ、えとでも、そんな大層なものではないので…」



 本当に対価なんていりませんよ。



 …あ、でも、その、あの、も、もし宜しければ……サイズとか、引渡しとか、そう言った話もしたいですし…れ、連絡先とか…なんて…なーんて…あ、あはは…




「先輩ッッ!!!」













 ――春なんて嫌いだ。出会いなんてあっても、結局私は上手くいかないんです――





 ごめんなさい。綾さん。



 私なんかに話かけてくれたせいで…

 私なんかが貴方との会話を楽しんでしまったせいで…

 私なんかが学校にいつまでも通っていたせいで…

 私なんかが生きていたせいで…



 ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…。





 …ごめんなさい…それでも私は、貴方に会えて嬉しかったと思ってしまうのです。


雪は自分のことを卑下していますが、それ以上に周りの人達を無意識に軽蔑しています。

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