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僕は完璧でありたいのである  作者: いとう
第二章 ガポル村の天才幼女
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三十四話 喧嘩なのである




「…ラファ、またお姉ちゃんと喧嘩したの?」



 夜の素振りを終えてお風呂に入ろうとしたら、ママが話しかけてきた。最近はこんなことがよくある。


 どうせまたあの人がママになんか言ったのだろう。私に何か言いたいのなら私に直接言えばいいのに、あの人は絶対に私と面と向かって喧嘩をしようとはしない。臆病者なのだ。


 我が姉ながら親に甘えっぱなしで情けなくなってくる。


「別に私は事実を言っただけだよ。お姉ちゃんまたママに泣きついてきたの?」


「泣いてはいなかったけど…ちょっと怒ってはいたわよ?」


「ふーん。ほっといていいよ、いつものことだから」


「…もう。アーニャが夏休みに入ってから2人とも一気に仲が悪くなっちゃって…どうしちゃったのよ?」



 そもそも仲が良かったつもりなんてない。


 もともと私はあの人の適当な性格が好きではなかった。

 好きではなかったけど、尊敬はしていたし、あの人の言うことを聞くことが自分のためになるから話をしていた。


「お姉ちゃんが変わっただけだよ。ちょっと一緒に訓練しない間に随分とくだらない人になってたってだけの話」


 昔はなんでもいろんなことを教えてくれたし、私やトゥリーよりもずっとすごいことをしていた。その背中に私は憧れていたし、あの人と一緒に訓練しない日もいつもあの人のことを考えていた。



 それなのに久しぶりに長い時間一緒にいてみたら、あの人はもう剣術にも魔術にもなんの興味も持っていなかった。



 私は毎日あの人に追いつくために努力をしていたはずなのに、追いかけていた背中はいつのまにか無くなっていた。


 毎日しつこく将来のためだと語りながら、私とトゥリーにいろんな訓練をさせてきたのに、あの人自身はもう自分を磨くことをしなくなっていた。


 友達と遊ぶことが1番で、将来のことなんて全く考えてない。その辺の普通の子供と同じだ。あんなのが私が憧れた姉だなんて信じられない。



「ラファ!いくら喧嘩をしているとはいってもそういう言い方はないでしょ!!?」


「なにが?――ママとお姉ちゃんって本当にそっくりだよね、私はただ事実を言ってるだけなのにすぐ怒る。めんどくさいからほっといてくれないかな?」


 ママはいつもお姉ちゃんの味方だ。


 私は自分の姉が堕落したことを許せないが、ママとしては自分の娘が普通の子供でいることになんの嫌悪感もないのだ。

 ママは昔からお姉ちゃんとべったりだし、お姉ちゃんが悪く言われることをすごく嫌がる。ママにとってみれば理想の娘なのだから当たり前と言えば当たり前だ。


 だからママからしたら一方的に私が悪者なのだ。



「っ!どうしてそういう言い方をするの、事実ならなんでも言っていいわけじゃないでしょ!?――後でパパにも言いつけるからね」


「ほらやっぱりそっくりじゃん。すぐ人に頼るところとか、ほんと情けなくて女々しいって感じ。――私、そういう女大っ嫌い」


「――え?」



 母親も姉も大嫌いだ。


 昔はこんなんじゃなかったのに、私が勉強して賢くなるたびに嫌いになる。


 姉が学校に通うようになってから、私も毎日剣術以外にもちゃんと勉強をするようになったからいろいろなことが理解できるようになった。

 ママも姉も、男に媚びて生きるような情けない女の典型だ。ママは元からそうだったのだろうが、姉は学校に入ってから変わってしまった。





 まったく、いい歳した大人が5歳の娘に嫌いと言われたくらいで泣かないで欲しい。そういうところが嫌いだっていうのがなんでわからないのだろうか?



「じゃあ、私お風呂入ってくるから。――泣くのは別にいいけど、庭で泣いてて風邪をひかれても困るから中で泣いてくれない?」


 パパは姉と喧嘩しても怒らないけど、流石にママを泣かせてしまったから今日は怒られるかもしれない。




 ――こんな家早く出て行きたい。


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