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僕は完璧でありたいのである  作者: いとう
第二章 ガポル村の天才幼女
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第三十一話 寝落ちなのである



「ただいま。途中でロンドたちと会ったから一緒に帰ってきたよ。食事はもう出せるのかな?」


 人生ゲームの余韻に浸りながらお茶を飲んでいたら、割とすぐに街長が帰ってきた。楽しい時間が経つのは本当に早いのである。

 街長たちが帰ってきたら食事という予定だったので、リビングの机の上をメイドさんに片付けてもらい、ダイニングの方へ移動する。リビングと違ってダイニングの装飾は花束が飾られている程度に抑えられているのである。



「それにしてもすごい飾り付けだな!玄関入ったら熊がいたもんだからびっくりしたよ!!――あ!ティアちゃんお誕生日おめでとう!!プレゼントはまたご飯の後でな!」


 パパとセドルドさんは一度家に帰り、着替えてからきたのだろう。普段はあまり着ない小綺麗な服装をしている。


 ドルモンド様たちとの食事会の時や、入学式の時ほどきっちりかっちりしているわけではないのだが、逆にその感じの方が新鮮で見慣れないのである。


 こうして見ると、2人ともやっぱり見た目がいい。


 女の子として生きることに対して、いまさら不満があるわけではないのだが、男性用の洒落た服装とかイケメンに対しての未練がまだ残っているというか、ちょっとだけ羨ましく思ってしまうのである。



「熊よりもリビングの飾りつけに驚いたな。こんな空間は生まれて初めてだ。俺みたいな田舎者には、魔物の森よりも不思議な空間に感じるよ」


「いや!あははは!田舎だとかそんなことは関係ないですよ、僕も不思議な感じがずっとしているんです!やっと共感できる人がいました!トゥリーは普通にしているから僕がおかしいのかと不安だったんですよ!!」


 ヨモンドとセドルドさんには、この『かわいい』空間は非常に居辛いものなのであろう。その感覚が普通だと思う。


 トゥリーは置いておくとして、パパとか街長みたいに普通にしている方がおかしいのである。


 そもそも街長は自分の財布からこの飾り付けの資金が出ていることをわかっているはずなのに、まったくの無反応というのはどういうことなのだろうか?

 部屋の飾りつけなんかに気がつかないほど鈍い人なのか、はたまたこのくらいの飾りつけになることを最初から予想できていたのか。

 いずれにしても、普通の感覚ではないのである。



「旦那様、食事の準備はできております。いかがいたしましょうか?」


 僕たちのお茶の片付けをしてくれたメイドさんがキッチンから戻ってくると、街長のもとに報告をしに行った。多分この家にいるメイドの中で1番偉い人なのであろう。


「じゃあ頂くとしようか。食事の後にもやることがあるし、あんまり遅くなるといけないだろう」


「かしこまりました」


「よし、それじゃあみんな席についてもらえるかな?席順は自由で構わないよ――ああ、ティアは主役なんだから真ん中においで」


 街長の指示に従ってみんなが席につく。

 こんなに人数の多い食事は入学式ぶりなのである。




――――




 食事はみんなで食べたほうが美味しいというのは、個人の感覚によるところでもあるが、概ね正しいと考えている。


 人数が多いほうが楽しいから美味しく感じるというような単純な理由もあると思うが、もっとこうなんか、化学的に美味しく感じる根拠があるんじゃないだろうか。


 例えば、人数が多い方が食事中に得られる情報量が多いから美味しく感じるなんてのはありそうだと思っている。

 よくいう『コクがある』なんてのはそのまま『情報量が多い』という意味だし、味の質に情報量が関係しているということを否定する人はいないだろう。


 情報量が多ければなんでもいいというわけではないけれど、多いほうが深みを感じて、誤差程度には美味しく感じるということはあると思う。


 つまりコクがあるということは、美味しいということなのである。

 余談だが僕はカレーが嫌いである。理由はそれほどないがなんとなく嫌いである。


 まあ、そんなこと言ってもカレーパンを嫌いな理由にはならない。カレーパンは割と好きだし、ケーキはもっと好きだ。


 ケーキは美味しいのである。




――――




「すっごいおいしかったねー!あーにゃ、はじめてあんななあまいふるーつたべたかも!あはは!」



「……アーニャにお酒を飲ませたの…だれ?」


 なんか、ママが怒っているのである。


 頭がふわふわすると思ったら僕はどうやらお酒を飲んでいたようだ。そりゃ頭も舌もよく回らないのである。


 舌が回らないというのは、滑舌がうまく回らないということであって、決してうまく話ができないということではない。むしろそういう意味では舌がよく回るというか、話していて気持ちよくなる程度にはよく回る舌なのである。らりるれろ。



「今日くらいいいだろ!アーニャだってもう6歳だし、大切な友達の誕生日くらい飲んだっていいはずだ!トリシアは厳しすぎる!!おれは6歳の頃には毎日のように酒を飲んでたぞ!!」


 どこに6歳から酒が飲んでいい世界があるんだ。

 トールマリス王国でも法律で決まっているわけではないが基本的には15になるまで飲ませちゃいけないと慣習的に決まっているのである。パパも酔っ払っているから訳がわからないことを平気な顔をして言っているのである。



「そうですわねー。とりしあさんはちょっときびしすぎますわよー。わたくしもせどるどさんのいうとーりだとおもいますわー」


 リシアたんはグデグデでなんて言ってるのかよくわからないのである。酒癖はどうやらあまりよろしくないようなのである。


 今日の食事では大人たちはみんなお酒を飲んでいたように見えたのだが、酔っ払っているのはリシアたんとパパとセドルドさんとリシアたんと…リシアたんと…?あれ?どこまで行ったかよくわからなくなってきたのである。

 本格的に頭が回らなくなってきたのねある。僕は前世から通してはじめて酒を飲んだのだから許してほしい。


 ようするに、その…あーと…なにを考えていたんだっけか?あれ、どこに行くのであったのだろうか。…行く…いく…いく?


 ――あ、そうそう。リシアたんとパパとセドルドさんと…いや、その3人くらいしか酔っ払っている人はいないのである。まあ大体イメージ通りといった感じなのである。



「おれは…りしあ……には……あした…。…あー…?」


 パパが何をいってるかよく聞こえないのである。

 聞く気がないともいうのである。


 どこまで行ったのだろうパパは…




 行く…いく?あれ? 何を考えていたんだっけか。




 いく……行く…逝く?…いく…





 …………………

眠たい時に英語の長文問題を解いているあの感じ、私は結構好きでした。

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