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僕は完璧でありたいのである  作者: いとう
第二章 ガポル村の天才幼女
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第二十九話 ティア誕生日会なのである①



「もうほんとにすぐくるよ!!ちゃんと全員クラッカー持った!?」



 現在ティアたちは、2つ隣の家を通過したところだ。

 もうほんとにすぐというのは、もう本当にすぐなのである。ここまで入念に準備したのに、失敗なんて絶対にしたくはないのである。


「私たちは大丈夫だけど、トゥリーとヨモンドくんにはちゃんと言ってあるの?扉を開けるのがヨモンドくんだったらなんとも言えない空気になるわよ?」


 カラさんのいうことはもっともであるが、勿論対策はしてあるので問題ない。いや、対策というよりも普通にトゥリーにはこちらの話が聞こえているから問題ないという感じだ。

 ヨモンドには言ってようが、言ってなかろうがそれほど関係ない。トゥリーがうまくやるので大丈夫なのである。


 カチュアもぐっすり寝ているし、もう何も問題はないだろう。あとは本当に扉が開くのを待つだけなのである。



 足音が玄関の前で止まった。

 みんなに軽く合図を出す。 


「くるよ!」


 



 ――ガチャ



「ただいま帰りました!」




 ――いまだ!!!





「「「「ティア!お誕生日おめでとーー!!!!」」」」





 ぱんぱかぱーん!!!!



 クラッカーは全員分問題なくはじけているし、なによりもティアの表情が1番はじけているので、サプライズ大成功なのである。



 後ろでヨモンドが驚いているのも面白いので、ヨモンドに黙っていた甲斐もあったのである。




――――――――――――――――――――――――――




「すごいです!これ、アーニャが用意してくれたんですか!?とってもかわいいです!!!!」


「んーまあ、いろいろ計画したのはアーニャだけど、用意したのはみんなだよ。それにお会計はアガヨ様持ちだから、アーニャの貢献度はそれほど高くないかな」



 僕はあくまでも企画者というだけなのであって、ここまで盛大にできたのはみんなの協力があってなのである。

 

 企画者が最も重要であることは間違いないし、僕が用意したと言っても誰も否定はしないだろうが、それはなんとなく僕のプライドが許さないのである。


 そんなことよりも今一番大切な問題は、この飾りつけが本当にティアの趣味にあっているかどうなのかということである。正直僕の好みによる部分が大きくなってしまった感がが否めないので、ちょっとだけ心配なのである。まあ、多分気に入ってくれると思っているので、それほど心配ではない。



「そんなことありません!!飾りつけもとってもかわいいですし、アーニャが私のためにこうやって準備をしてくれていたということが1番嬉しいです!!!――先生に黙って早退したことはよくないと思いますが…明日ちゃんとお話をして一緒に謝りましょう!」


「えへへへ…!アーニャの好きなように飾りつけしちゃったから少しだけ心配だったんだけど、ティアに喜んでもらえてよかったよ!!」


 それほど心配ではなかったけど、ちゃんと口に出してかわいいって言ってもらえると安心するのである。


 誕生日サプライズが自己満足に終わるなんていうのは1番センスがない話なので、絶対にしてはいけないのだ。僕とてそのプレッシャーを感じていなかったと言えば嘘になる。なんだかやっと一息つけた気分なのである。



 ちなみにだが、エノーラちゃんに謝る必要なんてない。

 だってうちの学校に『早退はしてはいけない』とか『早退するなら担任に言うこと』なんてルールはないのである。


 そもそも、学校側が生徒に対して授業を受けるように強制するなんてことはできない。

 あくまでも、生徒側にあるのは授業を受ける権利なのであって、授業を受ける義務はないのだ。生徒側にある義務は授業料を支払うことだけなのである。


 だから帰りたいなら勝手に帰っても良いのだ。



「あれは何ですか?ボードゲームのようですが…見たことないです」



 あ、そういえばそんなものもあったな。


 ティアが見つけたのは僕自作の人生ゲームである。


 言わなければまさか僕が自作したなんてバレないでほどに、ルールも見た目もクオリティが高いのである。

 僕が作ったと知られてしまうと、たとえつまらないものでも『おもしろーい』と言われてしまいそうなので、誰にも自作だと教えていない。


「パパたちが来るまで遊んでおくようのゲームだよ。せっかくだからやろうか」



 僕が人生ゲームの準備を始めると、ヘロンさんが興味深そうに覗き込んでくる。顔が近いのである。


 これほどまでに接近して初めてわかったのだが、リシアたんと違ってヘロンさんはあまり香水の匂いがしない。もしかすると、それほどおしゃれとかが好きなタイプじゃないのかもしれない。それこそ、ボードゲームとかの方が興味あるのだろうか。


「私、準備している時からそれがずっと気になっていました。アガヨとリシアと昔はよくボードゲームをやっていたのですが……それは初めて見ましたわ」


 まあ、そりゃ当たり前である。


「私も変わってるのがあるなーって思って選びました。ちょっとだけルールが複雑ですので説明しますね。そんなに難しくないから大丈夫ですよ、ちゃんと今日までに予習しといた私がいうので間違いないです」



 さて、ここからが僕の第二の緊張ポイントなのである。

 

 これだけ張り切って用意したゲームがアホほど場を白けさせたらどうしようか?


 とりあえず、そうなった時に僕が作ったと言うことを墓場まで隠し通す覚悟はすでにできている。

 みんなが楽しんでくれることが1番なのだが、楽しんでもらえなかったら『酷いものを買わされたなー!』とみんなで笑い話にしてしまうつもりなのである。





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