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僕は完璧でありたいのである  作者: いとう
第二章 ガポル村の天才幼女
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第二十四話 結局暇なのである



 初等教育学校の授業は登校2日目からすぐに始まった。


 ただ、2度目の初等教育の僕からすれば、何ひとつとして学ぶことのない、ただただ退屈な時間に過ぎないのである。


 別にそれについて先生や、学校に対して文句があるわけではない。むしろ退屈の原因は僕にあるのだから、あからさまに退屈そうな態度をとられているエノーラちゃんは被害者とまで言えるだろう。


 …いや。生徒になめられることや、授業を面白くできないことは、エノーラちゃんに非があるのだから、一方的な被害者などではない。

 僕だって担任がヨスナイア先生だったらどんな退屈な授業だったとしても真摯に取り組んでいたのである。


 初等教育学校では担任の教師がすべての授業を行うので、僕がこんなにも退屈なことと、それに伴う素行不良についての全責任はエノーラちゃんにあるといえる。



 四十路おふざけポンコツ教師め。許せないのである。




ー---




 そういえば、本当にそういえばの話なのだが、この世界にも『曜日』のような概念は存在する。


 1日目から7日目までそれぞれにちゃんと名前があるのだが、各単語の意味がよくわからないので、普通に日から土曜日と訳して考えている。

 どこからスタートなのかもわからないが、初等教育学校は5日登校2日休みの繰り返しではあるので、『曜日』に当てはめても何ら問題はないのである。



 そんな僕の1週間のスケジュールはこんな感じだ。


 日 公園で修業。

 月 1教養 2算数 3国語 昼休み 4体育 下校

 火 1教養 2歴史 3理科 下校 ティアと遊ぶ

 水 1教養 2国語 3図工 下校 ティアと遊ぶ

 木 1教養 2歴史 3国語 昼休み 4体育 下校

 金 1教養 2算数 3音楽 昼休み 4体育 下校

 土 宿題at街長家withティア&トゥリー


 金曜日に一週間の授業内容の宿題をまとめて出されるので、土曜日は登校こそしないが、一番勉強をさせられる日なのである。



 教養は道徳+マナーみたいなもんなので退屈だ。

 面白雑学が聞けるなんてことはなく、ひたすらに当たり前の常識を教えられるのである。

 たまに知らなかったことも教えてもらえるが、基本的には今まで生きてきたら誰でも知っているようなことなので、ほとんど受ける意味がないのである。


 体育は『魔道』なしで体力づくりや、武術の練習だ。

 僕としては魔道を使わないで運動をするというのが気持ち悪くて仕方がない。ペアを組んでいるアラネーが運動音痴なのをいいことに、それに合わせてあげる風にしてめちゃくちゃさぼっているのである。

 受ける意味があるとは思えない。せめてペアを自由に組ませてほしかったのである。


 図工はそのまんま図工だ。

 受ける意味はないが、それなりに楽しいので別にいい。


 音楽は歌だけだ。

 図工と同じで受ける意味はないが、別にいい。


 算数はそのまんま算数なので退屈だ。

 いまさら1+1とか言われてもって話だ。

 受ける意味は勿論ない。


 国語はただの読み書きの練習だ。

 僕はすでに読めるし書けるので練習もくそもない。

 受ける意味はない。


 理科とは名ばかりの『魔力』についてのただの説明だ。

 受ける意味はない。


 歴史はガキンチョにもわかるような大雑把なことしか教えてくれない。

 受ける意味はない。いや、あるかもしれない。




――――




 ティアとは買い物に行くか、リシアのガーデニングを手伝うか、リートの練習をして遊ぶ。


 『リート』というのはバイオリンに似た弦楽器である。


 魔樹と魔鉱だけで作られていて、専用の弓を用いて弾く楽器なのだが、魔力のおかげで4弦だけなのに高音から低音まで出せることがポイントだ。

 僕はもともと魔力の扱い方も上手だし、バイオリンを多少さわっていたこともあって、自分でいうのもなんだがあっという間に上達した。


 しかしそんな僕よりもティアははるかに上手なのである。


 技術面に関しては、生まれたときからやっていたからというのがあるのだろうが、ティアの上手さは技術力ではなく、表現力にあると思う。

 僕みたいになんでもそつなくこなす、上っ面の安っぽい『上手』ではなくて、ちゃんと人を惹きつける魅力がティアの演奏にはあるのだ。


 昔から芸術面に関して、自分は技術がある以上の『上手』にはなれないとは自覚していたので、別にショックはない。ショックはなくても、本物の才能を見ると少しばかりは悔しく思うものだ。


 だから凡才の僕は、せめて技術だけでもティアに負けないようにと、家に帰ってからも練習をしているのである。




――――――――――――――――――――――――――




「…アーニャちゃん???いい加減にしないと流石に先生もおこっちゃいますよー???」


「いまエノーラちゃんにかまってあげられるほど暇じゃないの。ごめんね?」


「アーニャちゃーーん???先生おこってますよー???」


 新しい魔術の開発中だというのに、やかましくエノーラちゃんが話しかけてくる。


 理科の時間に魔術の開発をして何が悪いんと言うんだ?

 魔術をすでに使えるのに、「魔力をつかえば魔術だって使えます!!むははは!」みたいな話を聞いて何になるんだ?

 まったく、学校の意味を今一度考えて欲しいものだ。マニュアルだけが全てだと思っているおばさんには困ったものなのである。


「まったく…怒りたいのはアーニャの方だよ」


「あ!ぷっちーん!!先生もう流石に許しません!!アーニャちゃんは廊下に立っててください!!やっぱり嘘です!!アーニャちゃんは廊下に立ってても反省しないので…ど、どうしましょう!?」


 どうしようもないのでほっといて欲しいのである。

 こうやって僕にかまっている時間が無駄だということがなぜわからないのであろうか?僕以外の生徒は目に入っているのだろうか?

 まだ学校が始まって1ヶ月程度しか経っていないが、僕の中でエノーラちゃんの評価はガタ落ちなのである。


「アーニャ、ちゃんと謝ってください。今回はアーニャが悪いですよ。授業を聞かないのはまだ良いとしても、猫ちゃんをそんなに動かされてはみんな気になってしまいます」


「…ごめんねみんな。今度から気をつけるよ」


「アーニャ」


 …トゥリーが僕の名前を呼ぶだけでなにかを訴えかけてくる。そして名前を呼ばれただけなのに圧力を感じてしまう。

 僕も心のどこかに、自分が悪いと自覚があったのだろう。トゥリーとティアに詰められて弱ってしまった。


「エノーラちゃんもごめんなさい。でも私はエノーラちゃんも悪いと思います」


「!? え!?なんでよ!?」


 はーあ。それがわからないから二流なんだよ君は…痛っ!


 僕があからさまにため息をついたらトゥリーに頭を叩かれたのである。あの泣き虫トゥリーが本当にたくましく育ったものだ。しかしトゥリー、暴力は良くないぞ。


 全く誰に似たんだか。




エノーラは四十路じゃありません。

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