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僕は完璧でありたいのである  作者: いとう
第二章 ガポル村の天才幼女
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第十八話 偏見は良くないのである

2月2日は猫の日らしいですね。

アーニャは猫派のコーヒー派で、ラファは犬派の紅茶派です。



 スープ→ソーセージ→サラダ→メイン一品目のハンバーグまで食べ終えた時点で僕の胃袋は限界であった。

 最後の品まで食べられるよう、序盤からパパに半分ずつくらい食べてもらっていたにもかかわらず、僕はもうこれ以上食べられないのだ。


「パパ、アーニャもう食べられない」


 僕の胃袋事情なんてお構いなしに、メイン二品目はステーキが出てきたのである。もう一口も手をつける気にはならないので、丸ごとパパに食べてもらうことにする。


「んー、パパも流石に丸ごとは厳しいなー。アガヨ、悪いんだがアーニャの分のステーキを食べてもらえないか?」


 パパも流石に厳しかったようなのだが、僕としては僕の分を街長に食べてもらうというのは少し気が引ける。

 子供用のものは大人用より少し量が少ないとはいえ、女の子には厳しい量だ。ティアもそろそろ食べきれなくなるだろうし、街長も僕の分まで食べるというのは無理なはずだ。


 そういえばラファは全部食べきっているし、ステーキも全部食べ切りそうである。なかなかに大食いなのである。



「アーニャ、お前の分は僕が食べてやろう。父上はティアの分を食べてあげてください」


 ヨモンドの胃袋にはまだ余裕があるようだ。

 借りができるようで気持ち悪いのだが、ここはヨモンドにお願いすることしよう。


「ありがとヨモンド。ごめんね」


「なに、僕はステーキが好きだし気にする必要はない」



 こいつ、ちょっとだけいいやつなのである。




――――




 ステーキを食べ終えた後はデザートが出てきた。


 デザートはチョコレートケーキみたいなやつだったのだが、僕はそれももう胃袋に入らないのでヨモンドに食べてもらったのである。


 ヨモンドはあまり甘いものが好きではないらしいが、胃袋には余裕があるということで食べてくれた。

 いくら下心が丸見えとはいえ、ここまでしてもらったら何か恩返しをしたくなってくる。学校に入ったらいくらでも機会があるだろうし、何かをしてあげようと思う。


 世の中の男子諸君、意中の女性を狙うときにはとにかく優しくすることが大切だ。意外とそういった細かいことの積み重ねは効果があるものなのである。



 食事自体は全て終わり、所定の時間までお茶やコーヒーを飲みながら、仲良く歓談といった形になった。


 基本的に食事の感想や、学校ついての話であった。

 ドルモンドはポルメイウス市(パークス家のある市であり、領地一の大都市)の学校に通うことになるらしい。


 ドルモンドに「せっかく友達になれたのに違う学校なのは寂しいね」と言ったら、お互いの学校の友達を紹介しあえば一緒の学校に通うよりも友達がたくさんできるし、悪いことばかりじゃないよみたいな感じのことを言われた。

 なんというか、なんというかである。



 妾が空気を悪くしないかだけが気がかりだったが、そんなことはなく平和に食事会は終わったのである。




――――




「今日は本当に楽しかった。またいつか全員で集まろう」


 カドルテ様は見送りはいらないといって席を立つと、ドルモンドとヘレナ様をつれ、颯爽と帰っていった。



「それじゃあ解散にしようか」


「そうだな。カチュアも寝ているし今のうちにお別れをしてしまおう」


 赤ちゃんが寝ている隙に帰るということは大切である。

 チビ妹はラファに懐いていたし、きっと起きていたらお別れを悲しんで泣き叫ぶだろう。


「…でも、私はおわかれちゃんとしたかったな…」


 ただ、そうなるとラファとしては納得がいかないものだ。

 ラファは少し大人っぽく見えるがまだ4歳なのだし、どうやら初めてできた妹分とのお別れが相当寂しいようで泣きそうになっている。


「ラファさん、今日は本当にありがとうございました。家も近いのですし、良ければ会いに来てください。きっとカチュアも喜びますわ」


 ヘロンさんが優しくラファを抱きしめ、慰めてくれる。


 ヘロンさんは最初に誤解していたことが本当に申し訳なくなるほど優しくて穏やかな人で、僕たちのことを田舎者だなんて言うような人ではなかった。

 僕は心の中でヘロンさんに謝罪をしておくのである。



「次会う時は学校だな。制服姿も楽しみにしてる」


「またね」


 ヨモンドには本当にお世話になった。


 相変わらず下心が丸見えだが、だんだんそれを隠さなくなってきたので逆に気持ち悪さは軽減されている。

 それでも多少気持ち悪いのだが、それを抜きにすればヨモンドはいいやつだし、きっとトゥリーともいい友人になれるはずだ。



「アーニャさん…これをうけとってくれませんか…?」


「え?」


 ティアの髪を束ねていたワインレッドのリボンを解くと、僕にそれを渡してきた。

 え?これくれるの?


「あなたにひどいことを言ってしまったので…それに…」


「ああ、そのことか。もう友達なんだからあんなこと気にしなくていいよ」


 どうやらティアはずっと僕に失礼なことをしたんじゃないかと気にしていたようだ。

 失礼には失礼であったが僕はもう気にしていないし、こんなに高そうなリボンを受け取るのも申し訳なく感じる。



「っ…そ、それに!私は家に同じものを持っているので、お揃いでつけてもらえたら嬉しいです!」



 ティアは僕の手にリボンを握らせると、解いた長い髪を夜風に靡かせ、僕を見つめてくる。


 …なるほど。ティアという名前は派手だからという理由だけで妾につけられたわけじゃなかったようだ。


 ベージュブロンドの髪と涙で潤んだ橙色の瞳は、街灯の光に照らされて煌めき、夜だというのにティアだけが太陽の下にいるようである。


 ありきたりな名前とバカにしていたことも謝らないといけない。こんなに『Tia』という名前が似合う女の子はきっとティアの他にいないだろう。



「…っ…だめ…ですか…?」


 僕からの返事がなかなか帰ってこなかったので、ティアは不安で泣いてしまった。

 早く何か返事をしてあげなければいけないのだが、ティアに見惚れてしまって中々言葉が出てこない。

 僕はいつからロリコンになってしまったのだろうか?


「っだ、ダメなんかじゃないよ!ごめん、ティアに見惚れちゃってうまく言葉が出てこなかったの! リボンありがと!すっごく嬉しい!学校につけて行くから!!」



 ま、まずい!


 僕は6歳児に恋をしてしまったのかも知れない。

 ドキドキが止まらないのである。


 僕の必死の返答を聞いたティアは安心したように微笑むと、恥ずかしくなったのか街長の後ろに隠れてしまった。

 かわいいのである。



 あれほど第一印象が最悪だったナシアール一家だったというのに、いつのまにか悪い印象なんてなくなっていた。

 偏見を持ってしまうのは僕の悪い癖なのだろう。これから少しずつでも直していく必要がある。



「それでは、さようなら」



 妾が早く帰りたそうに適当に挨拶をして馬車に乗り込む。

 こいつだけはまじでクソ女なのである。


 妾に続いてナシアール一家はみんな馬車に乗り込み、家の方へ帰っていった。

 僕たちも馬車に乗り込み、我らが田舎村に帰るのである。




――――




「…アーニャあの妾だけは嫌い」


「!? アーニャ、どこでそんな言葉を覚えたんだ!?そんな言葉使っちゃだめだぞ!! それから、リシアさんは正式な第二婦人だから妾じゃない!!」


「…ママもあの人にがて。何か私とアーニャすごく嫌われてたわよねー…」


「? アガヨさんのお嫁さんはヘロンさんじゃないの?」


「ラファ、金持ちの男の人は奥さんの他にも好きな女の人を持っているんだよ」


「ラファに変なことを教えるな!!」



 ママがくたくたなので今日はもうやりたい放題である。



ティアの性格が悪いことに変わりはありません。ただアーニャとは仲良くなったってだけです。

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