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僕は完璧でありたいのである  作者: いとう
第二章 ガポル村の天才幼女
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第十四話 猛省なのである



 おれはただのこどもじゃない。

 おれは村のほかの子とはちがう。

 おれはもう『けんし』なのだ。




――――




 今日は4月1日。


 いつものようにおれは『こうえん』にいく。

 今日はアーニャはおじさんと出かけてるらしいからラファとおれだけで『しゅぎょう』をする。


 今日のラファはプンスカしていた。


 おれは女の子がプンスカしていたらそっとしておくようにしている。アーニャに昔からそうおしえられてきたからだ。


 パパもママがプンスカしていたらそっとしている。

 おじさんはおばさんがプンスカしていたらよけいなことをいってもっとプンスカさせる。


 『しゅぎょう』は『じゅんびたいそう』からはじめる。

 いきなりはげしく動いたらけがするからだ。

 アーニャが昔からそうやっていってたからおれもラファも、ぜったいに『じゅんびたいそう』をきちんとする。

 ラファはプンスカしていても体そうをしている。


 体をほぐしながら『まりょく』を全体にながす。

 これはしゅぎょうのいっかんでもある。らしい。



「……お姉ちゃんね、きょうパパと森にいってるの」



 2人でならんで体そうをしていたら、ずっとだまっていたラファが口をひらいた。

 女の子がプンスカしていたらそっとしておいてあげるが、女の子が話をしてきたらゆっくりきいてあげる。

 女の子の話をきくときのポイント①は、こっちからはぐいぐい『しつもん』しないことだ。



「へー、しんぱいだな」


「…べつに、お姉ちゃんならしんぱいないよ」



 おれはふぁーすとこんたくとにしっぱいした。

 ラファがいいたいのはそういうことじゃなかったらしい。


 …でも森にいくってなったらいくらアーニャでもおれはしんぱいなんだけど…。


 だが、ここでそんなことをいってはいけない。

 ポイント②は女の子の考えが自分とはちがっても、女の子の考えにあわせてあげるということだ。



「まあ、アーニャならだいじょうぶか」


「……トゥリーはいいの?」



 ………。



 …………?



 ??????????



「やっぱりしんぱいだな」


「は?」



 ?????????????????????????



 ?



 …………??????



「…ラファはどうしたいんだ?」



 こまったときはこれだ。

 『〜はどうしたいんだ?』これをきけばまずまちがいない。と、アーニャがおしえてくれた。

 おれはこれをつかってしっぱいをしたことは1回もない。



「……お姉ちゃんだけずるい。ラファとトゥリーをすてて1人で森にいくんだもん。トゥリーもくやしいでしょ?」



 よし、今回もせいこうだ。

 やっぱりアーニャのいうことにまちがいはない。

 なるほど、ラファはそういうことをいいたかったのか。


 …べつに、おれはくやしくないんだけどな……。


 アーニャがおれやラファよりもすごいことなんてのはだれでもわかる。

 それにおれはともかくラファは年下だ。

 アーニャだって今日までつれていってもらえなかったのにラファがつれていってもらえるはずがない。


 だが、ここでそんなことをいってはいけない。

 ポイント②は女の子の考えが自分とはちがっても、女の子の考えにあわせてあげるということだ。



「アーニャだけずるいな」


「ずるいよね!いつも3人で『しゅぎょう』してるのに1人でいっちゃうんだもん!!わたしもトゥリーもいきたかったのにね!」


「そうだな、そうだな」



 ラファは体そうを止めておれのほうにちかよってくる。


 ここからは、女の子のプンスカがおさまるまでてきとうにあいずちをうつのだ。

 時間がたてばかってにおさまるので、あとはまつだけだ。




――――




 ポイント③はプンスカがおさまったら自分の考えをつたえることだ。


 女の子のプンスカはその子がわるいときもある。そんなときはプンスカがおさまってからやさしく『してき』してあげるのだ。

 女の子も自分がわるいことをほんとうはわかっているのでちゃんときいてくれる。



「おれもおいてかれてくやしいけどさ、やっぱりアーニャはおれやラファよりもすごいから、しかたないとも思うよ」


「……でも、お姉ちゃんよりラファのほうがいい子だもん」



 ポイント②はこのふぇーずでもじゅうようだ。

 女の子のことを『ひてい』してはいけない。



「ラファはいい子だからさ、来年はつれてってもらてるよ。アーニャも4さいのときはつれてってもらえなかった」


「……お姉ちゃんだけずるい」


「おれはさ、よわいしラファみたいないい子でもないから5さいなのにおるすばんだ。くやいしからさ、来年はいっしょにいこうな」


「………トゥリーはよわくないし、わるい子でもないよ」



 ここまできたらあとはもう少しだ。

 ラファのプンスカはもうなくなったといっていいはずだ。

 あとは、アーニャがかえってきたときにケンカしないようにするための『あとかたづけ』だ。



「ははは、ありがとな。でもやっぱりアーニャみたいにはつよくないからおいていかれないように『しゅぎょう』するんだ。ラファもほら、いっしょにがんばろう」


「……うん」


「アーニャがかえってきたら話をきこうよ。アーニャはお姉ちゃんだし友だちだけど、おれらの先生だからさ、来年にむけておしえてもらおうよ」


「うん。…ありがと、トゥリー」


「どういたしまして」



 女の子がありがとうといってくれたなら、『どういたしまして』とかえす。

 『たいしたことしてないよ』とかのけんそん?はぎゃくによくないことがあるってアーニャがいっていた。



 やれやれ、男はたいへんだ。




――――――――――――――――――――――――――




 アーニャは、おれとラファがおべんとうを食べてるときにかえってきた。

 どこにもけがもしてないしひとあんしんだ。



「おかえり、ぶじでよかったよ。どうだった?」


「ただいま。んーまあ、期待外れといえば期待外れかな」



 !? そういうことはラファの前でいっちゃだめだろ!?


 アーニャはわりとぬけているところがある。


 おれはあせってラファのほうをみる。



「おかえりー。ねえ、もっとくわしくおしえてよ」


「んー、何から話せばいいかなー。とりあえずご飯を食べながら話そっか。アーニャお腹すいちゃったや」



 ラファは気にしていなかった。

 よかった。ふたあんしんだ。




――――




 アーニャとラファはけっこうにてる。


 2人ともおじさんとおなじ黒いかみを長くのばしていて、おばさんとおなじぎん色の目をしている。



 でも、けっこうちがうところもある。


 アーニャのかみはふわふわしていて、ラファのかみはサラサラしているし、アーニャの目はパッチリしていて、ラファの目はキリッとしている。


 アーニャはおばさんににていて、ふんわりでかわいい。

 ラファはおじさんににていて、キリッとかっこいい。


 2人とも村のみんなからかわいいかわいいいわれているし、おれもかわいいとおもっている。

 おれはかわいいしまいといっしょにごはんをたべられてしあわせものだ。と、アーニャにいわれる。



「まあこんな感じかな。思っていたよりも危なくもないし、すごいとこでもなかったよ。来年は3人でいこうね」



 アーニャは森での話をくわしくしてくれた。

 なんだかんだいろいろもんくをいってたけど、たのしかったということはつたわった。



「あ、そうだ。2人にお土産もってきた」


「! え!おみやげ!? やた!なにくれるの!?」



 さすがはアーニャ。ラファがつれていってもらえなくてプンスカしていることをよそうしてたいさくをねっていたのだ。たぶん。

 アーニャはもっていったリュックをごそごそすると、ぎん色の花と、白い塊をとりだした。



「えとね、ほい。ラファには魔樹からむしりとった花」


「わぁー!!きれい!ありがとお姉ちゃん!」


「いえいえ。たぶんそんなに長持ちはしないけど、可愛がってあげてね」


「うん!かれるまえにおし花にする!」


「そうだね。それがいいかも」



 ラファはさっきまでプンスカしていたのがうそみたいにうれしそうにしている。

 おれからしたら花のどこがいいのかわかんないけど、女の子はこういうのがすきなのだろう。



「トゥリーには鋭黒狼の牙。まあ大した魔物の素材じゃないけど、かっこいいしいいかなって」


「おーかっこいいな!ありがと!」



 アーニャはさすがだ。

 女の子なのに男がよろこぶものもわかっている。

 かえったらママにみせてストラップにしてもらおう。



「それじゃ修行に戻ろうか。今日はアーニャも疲れたし2時になったら家に帰るから、それまで3人で組手でもしよう」


「うん!」


「おう!」




――――




「トゥリーかえるわよー」


「ラファも帰ろうねー。……アーニャも今日は帰るわよー。帰ったら話があるから、ね?」



 ママたちがきたら今日の『しゅぎょう』はおわりだ。

 アーニャはなにをしたんだろうか?おばさんはプンスカしている。


 まあ、アーニャがおばさんにおこられるのなんていつものことだ。

 おれはおみやげのおれいにすこしだけかばってあげる。



「ママ、おばさん、みて。アーニャがおみやげにくれた。アーニャはいいこだよ」


「! わたしだっておはなもらったもん!」



 ラファはなにかかんちがいしておれにはりあってきたけど、いいえんごしゃげき?だ。



「魔物の牙と魔樹の花かあ!2人とも今度私に貸してくれる?長持ちするようにストラップにしてあげる!」


「…はぁ、別にアーニャが悪い子だなんて思ってないけど、ママの気持ちも考えて欲しいのよ…」



 よし、プンスカはすこしだけおさまった。

 あとは自分でがんばれよアーニャ。





「あ、ごめん。ママもお土産欲しかった?」





 !? ぜったいそういうことじゃない!!!




――――――――――――――――――――――――――




 家までの帰り道、ママは一度も僕と目を合わせてくれなかった。なにかとてつもなく怒らせてしまったようだ。


 家に着くと案の定、ママはラファに子供部屋で待っているように伝え、リビングで説教が始まった。




「なんでママが怒ってるかわかる?」




 ……わかりません。




 いったい僕はなにをしてしまったんだろうか?


 ママがなんで怒ってるのかが本気でわからない。

 わからないけど激怒していることは確かだ。トゥリーの援護がなければもっと大変なことになっていただろう。



 あいつもいつの間にか頼れる男になったものだ。



 帰ってきたらラファは機嫌悪いんだろうなーって思ってたのにそんなこともなかった。

 が、あの疲れ切ったトゥリーの顔を見たらわかる。あいつが何とかしてくれたんだろう。

 今度ちゃんとお礼をしてあげよう。



 …なんて、現実逃避している場合じゃない。


 なんでママは怒っているんだろうか?



「…ごめんなさい」



 困った時はとりあえず謝る。これに限る。

 可愛い僕が同情を誘うような顔でしょんぼり謝れば、それなりに有耶無耶にできるというものである。



「ねえ、適当に謝って終わらせようとしないで?なんでママが怒ってるかわかるかってきいてるの」



 ダメだったのである。



「…わかりません…っ…ごめんなさい……」



 こうなりゃ奥の手嘘泣きである。

 ママはあまあまのあママなので泣けばなんとかなる。


 案の定ママは怒った顔から困った顔になった。

 それから僕の目線に合わせるようにしゃがむと、肩を掴んでじっと僕の目を見つめてくる。



「…あのね、アーニャ。アーニャが魔物の森に行ってる間、ママが心配だったのはわかる?」


「…う、うん…」


「ママはね、アーニャが帰ってくるまでずーっと心配なの。パパも帰ってくる時間が何時になるのかは状況次第だって言ってたし、もしかしたら夜までいるかもとも言ってたし、ママは心配だけどずっと家で待ってたの」


「ぅ…っ……ひっ…」


「……アーニャはさ、ママが心配してることはわかってたでしょ?公園に行く前にやることがあったんじゃないの?」



 ……なるほど。



「…ひぐっ……ごめんなさい…」


「…もう…。次からはママのとこに一度帰ってきてから遊びに行くこと。いい?約束よ?」


「…っはい……」


「……うぐっ! ご、ごめんねアーニャ、そこまで怖がらせるつもりなかったの! ほ、ほら!一緒にお風呂入りましょっか!疲れたでしょ?」


「…うん」



 盲点だった。

 今度からはしっかり気をつけよう。僕はママに心配をかけたくはないのである。



「ラファー!お待たせ、お風呂入りましょっか」


「うん! …お姉ちゃん、なんで泣いてるの?」


「な、なんでもないよ!」


「…お姉ちゃんも反省してるから、そっとしておいてあげて、ね?」



 妹に泣いてるところ見られてしまった。




 ――まったく、僕としたことが大反省の日である。

アーニャはくそがきです。

ちなみに途中からトリシアに心配をかけてしまった自分が情けなくなってガチ泣きしてます。

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