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僕は完璧でありたいのである  作者: いとう
第二章 ガポル村の天才幼女
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第十一話 みんなのアイドルなのである



 トールマリス王国の教育制度は日本と非常に似ている。



 ―ので、逆に違う点が目立つ。


 1つ目は『義務教育』という制度がない点である。


 まあそもそも、戸籍制度がしっかりしていないので、義務という制度を確立することができない。



 トールマリスの人民管理は基本的に土地ごとに、各領主が行っている。

 土地の面積や場所によって税額が決定され、その占有者に納税を求めることになる。頭数や収入によって納税額が変わることはないのである。

 つまり、公的書類として登録されているのは、各土地ごとに対応した納税者だけなのである。



 ただ『義務教育』がないことの理由は別にできないからというわけでもない。


 文化レベルがそこまで発展していないこの国では、子供に教育を受けさせるよりも重要だと思われていることなんていくらでもある。

 子供達自身もまた、教育を受けるよりもやりたいことはいくらでもあるのだ。



 二つ目は、幼稚園や保育園といった幼児向けの施設がないことである。


 これは純粋にその発想がないからだろう。

 学校というものはあくまでも子供が勉強をするためだけのものであって、そこに、働いている親の代わりに子供の面倒を見るという役割は全くない。


 トールマリス王国で子供を学校に入れられる家庭というのは、金銭面に余裕がある家庭である。

 つまり、どうしても子供の面倒を見させたいのであれば各家庭でメイドを雇うという話だ。



 まあ、『差』はこの程度のものだ。

 教育内容の差なんてあって当たり前なので特質するべきようなことではない。



 

――――




 満6歳の誕生日を迎えた後、最初の4月1日に初等教育学校に入学できる。


 初等教育学校では6年かけて、常識、マナー、歴史、算数、魔導、魔術、武器術、狩エトセトラが満遍なく教えられる。


 あ、要注意なのは満6歳の誕生日を迎えた後という点だ。4月1日生まれの子は丸1年待たされるのである。

 むしろなんで日本は4月1日まで含まれたんだろうか。



 初等教育学校の卒業証書を持っている人に限り、中等教育学校に入学できる。

 初等教育学校と違って何歳になっても入ることができるところがポイントだ。


 中等教育学校はその学校ごとに教えられる科目に差がある。何を学びたいかによって、入る学校を決められるということだ。


 とは言ってもほとんどの人は、初等教育学校に隣接した、地域の中学校に行くことになる。



 中等教育学校の卒業証書を持っている人に限り、高等教育学校に入学できる。

 高等教育学校の教育は文字通り高等なもので、入学する人は本当に限られている。


 高等教育学校は大まかに分けて[①戦いが好きな人向け ②魔術が好きな人向け]の2種類である。


 ②に行くのは余程の変態だ。

 基本的に実用魔術なのであれば①なのだ。

 魔術理論とか、魔術の真髄とか言い出す奴らが②に行く。

 変態貴族のオタク坊ちゃんばかりと予想している。



 大学なんてものはない。

 ①に行った人は大体ハンターになるか、騎士団に入る。

 ②に行った人はそのまま親の金で研究し続ける。



 以上がこの国の教育制度である。





 僕とトゥリーは丁度1年後に初等教育学校に入る。

 

 学校で鮮烈なデビューを飾るため、これから1年は修行にラストスパートをかけるのである。




――――――――――――――――――――――――――



 

 ―天暦2537年4月1日―


 僕は今日、最高にワクワクしていた。


「それじゃ、行ってくるよ」


「いってきまーす!」


「ま、まって!わたしもいく!」


「今日は危ないから、ラファはママとお留守番よー」



――――



 僕とトゥリーは5歳、ラファは4歳になっている。



 最近の日課は、パパとセドルドさんを見送ったあと1度家に帰ってから、子供3人でお弁当を持って公園に遊びに(修行に)行くのだ。



 公園では基本的に魔導と剣の練習をしている。

 本当は魔術もずっと練習していたいのだが、トゥリーもラファも魔術は何も使えないから気を使って僕も練習していないのである。



 昼ごろになると他の子供達も公園に来る。



 この村の同じ年代の子供は僕たちを入れて8人しかいないので、もうみんな顔見知りである。


 とは言っても毎日毎日修行しているのなんて僕らくらいのものだから、それほど仲が良いとは言えない。


 

 2時過ぎになるとトゥリーとラファは昼寝の時間になるので、ママとカラさんが回収しにくる。

 その後が僕の魔術の練習の時間となる。


 僕はパパとセドルドさんが迎えにくるまでずっと公園にいるのだ。

 この村は全員知り合いなので夜まで五歳児が1人でいても危なくない。通りすがった人はみんな、お菓子やお小遣いをくれたりする。


 アーニャちゃんは、村のアイドルなのだ。

 


――――



 昨日からずっと、今日はお留守番と言い聞かせてあったのに、ラファは意地でもついてこようとする。

 そんなラファはママに抱き抱えられ、無理矢理家の中に入れられてしまった。



「なんで!? わたしもいきたいもん!!」


「今日はダメなのー。ラファも来年になったら連れてってもらえるから、今日はママとお買い物に行きましょ?」


「お姉ちゃんだけずるい! ラファの方がいい子だもん!」


「ダメなものはダメなの」


「なんで!? なんで?! わたしもいくもん!!」



 …可哀想になってくるのである。



「…可哀想になってきたなあ。でもこればっかりは仕方ないからなぁ…本当はアーニャだって危ないんだぞ?」


「ね。アーニャも心が痛い」




 とは言っても今日は本当に連れていくわけにはいかない。



 だって、今日は魔物の森にいくのだから。




「まあでも、わくわくだね!」


「…やっぱりアーニャも置いていくか」



 パパは急に足を止めると、握っていた僕の手を離して約束破棄宣言をしてきた。

 絶対に冗談だとはわかっているけど、堂々と約束破棄宣言をされたことに腹が立ったので脅してみる。



「二度とパパと約束なんてしない。だいっきらい」


「…じょ、冗談だよ!? ずっと約束してたもんな!」



 パパは慌てて僕の手を繋ぎ直してくる。


 はっ! この程度でビビるくせに僕に脅しをかけるとは!




「ほら、ナロードさんのお弟子さんが待ってるんだから早くいくよ」


「アーニャ、ドロリッチ君な。名前を覚えてあげなさい」


「ドルリッチ君だよ」


「え!? あ、アーニャがちゃんと覚えてるか試しただけだよ!?」



 誰だよドロリッチ君って。

 美味しそうな名前しやがって。


アーニャとトゥリーのお友達?はおいおい出てきます。

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