プロローグ
8月14日、今日は修学旅行。桜樹高校の二年生130名は15日に仙台、16日に東京、17日に大阪と京都へ行く。
そこへ自主研修や進学校なので合格祈願、あとはテーマパークへ行ったりする。先生が思春期の生徒を考慮し、男女問わず班を作ることが可能だ。この修学旅行でカップルはできるだろうか。
俺の名前は梶彰。インキャの小学6年間、太陽のような中学3年間を過ごしたあと、大学進学のために高校へ。
9年の経験を経て、俺は陰キャにも陽キャにもなれる器用な男になれたと思う。
「ねぇ、俺のバッグ知らん?」
「え?なくしたの?新幹線の中だぞおい」
俺は人の名前をあまり呼ばない。小学生の頃に友達の名前を呼び間違えた。そして、それが嫌いな人の名前だったので、俺は友達を一人失った。
「あ、あったわ。ごめんごめん」
時間が解決してくれる。それは嘘ではない。実際、全く呼べないわけではなく、今はちょっと躊躇うくらい。女子の名前を呼ぶのはちょっと恥ずかしいのであまり言いませんが。
「トイレ行ってくるわー」
そう言って席を立ち、トイレのある車両へ向かう。この車両にもあるが、そっちの方が遠いので近い方へ行く。
「選ばれし勇者よ、私達をお救い下さい...」
トイレを済ませた彰は戻ろうとする。この車両は盛り上がっている。他校の生徒のようだ。横を通るのはちょっと緊張...
「あれ…?」
気づいたらそこにいた。
目の前に広がるのはバカでかい神殿のような場所。所々にある柱とステンドグラス?が神殿というか、教会というか。そういうものを想起させる。
「あなた達は選ばれし勇者...! 私達を魔王からお救い下さい」
中世感あふれる景色に、中世感あふれる服装。
俺の人生は一瞬で変わった。
この異世界転移で。
そして周りにいたのは総勢302名の修学旅行生と教師だった。