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風を感じるために生まれた  作者: 新井 逢心 (あらい あいみ)
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見えない糸が繋ぐのは②

まだ夜が開けきらぬ早朝に姫島漁港を出港した健康観察船‘あおなみ’は、途中、本島の港に寄港し、南雲、涼風、風真を乗せた後、瀬戸内海を挟んだ隣県の母港へと向かっている。


昨夜西崎は南雲に、数日の間、健康観察船の船内に光生を匿ってはもらえないだろうかと持ち掛けていた。

数日あれば弓削代議士の秘書、長井や二神弁護士からの情報も出揃うはずだし、前橋会長の弁護士も動いている事から事態の好転も見込める。そして何よりわずかな間でも医師が側にいてくれる安心感が欲しい。これがこの場の総意であっただろう。


西崎の話を聞き終えた南雲が考え込んでいるように見えるたのが、風真には少し意外だった。てっきり二つ返事でOKするのかと思っていたのに、


しばし空を見つめていた南雲は、不安そうに見守る一同に今気がついたというように目を見張ると、ニッと口角だけを上げた。


「それをやるにはちょっと問題があるのよね。」

そして右手の指先でこめかみの辺りをトントンと叩いた。


「基本、あの船は出張先の島に停泊したままにはできないのね。埠頭の使用許可とかあるし、職員は基本日勤だし、それだと光生かれを夜間一人にしてしまう事になるわ。

もちろん会社にどうにか理由を付けて、私が船に泊まり込む事もやぶさかではないわ。でもそうする代わりに同僚に事情を説明しなければならなくなる。もし黙ってそれを実行するのなら...」


シュッ、

口走りながら南雲は、古典的な首切りの仕草をして見せた。


「やっぱそっかぁ...」

風真は項垂れた。


しかしなぜか周りは、熱心に南雲を見つめている。戸惑いながらそれに倣うと、南雲がウインクを送ってきた。


「でも、ところが、しかし...

今夜、‘あおなみ’は姫島漁港に泊まっているそれはなぜか、」

もったいぶった言い回しながら、一同はじっと続きを待っている。


「‘あおなみ’には、画像診断装置が二つあって、普通のレントゲンとCTスキャンなんだけど、CTの調子が悪くなって、しばらくしてレントゲンも動かなくなって。二つも無いとなるともうお手上げなの。CTはまだいいのよ。あの船のは可動式だから。でもレントゲンは釘付けになってて移動できないから...」


「取り替えができる会社なり港なりまで船を移動させるしかない?」

俊葵が言った。


「そうなの。‘あおなみ’の母港は瀬戸内の対岸にあるんだけど、そこまで持って行ってもらう予定なの。その操縦士さんがなんと姫島在住でね、」


「なるほど。対岸には本島よりこっちが近いですね。」

と、俊葵。


「だから、ついでに母港まで光生君を運ぶのはどうかなと思ってるんだけど。母港の近くには会社の提携病院があるわ。そこには特別室もある...」


「なるほど。南雲先生が仰りたい事はよくわかりました。」

西崎が頷くと、

「いいじゃないか。」

伯方が言った。

その側で下重も頷く。

驚いて画面を見つめた西崎だったが、目を合わせた二人に既視感を覚え、すぐに頬を緩めた。


「ええ。そうですね。」


































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