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風を感じるために生まれた  作者: 新井 逢心 (あらい あいみ)
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万華鏡レンズ

「風真、これ、並べてくれ。」

俊葵は、キャンプ用品の大きなプラスチックケースの中から、人数分のレンズホルダーを取り出した。


「あ、これ、先週一緒に作ったやつだね。」


それは、針金ハンガーを解いて作った、手作りレンズを自立させるための三脚のようなものだ。

レンズの口径に合わせて一々捻って作った。中々骨の折れた作業を思い出す。


「そ、あとこれ切るの、頼むな。」

四角いガラスの鏡が、10枚風磨の前に積まれた。


「うっ、」

呻いた風磨を見て、

ニヤッとした俊葵は、レイアウトにもこだわったお手製レジュメを広げる。


「今回作るのは、これだ。」

「万華鏡、カメラ?」


「そ、これの中にな、」

ガサガサ、パコンと妙な音がして、プリングルスの空き筒が飛び出し、カランカランと転がり落ちた。


「おおっと、」

慌てて風磨も拾い上げる。


「これの中にな、細く切ったこの鏡を、こう、三角に組み合わせて入れて、」

と言いながら、カバンの中から、俊葵が試作したらしい黄色いプリングルスの中を見せてくれる。


「このホルダーにこう立てて、」

ホルダーは、テーブルの面から、2、3㎝浮いた状態で固定された。


「この下に被写体を入れるんだ。これで良し!さ、見てみな。」


そう言って俊葵は、風磨の後ろに回り、両肩を掴むようにしてレンズの前に誘う。


「わ、わぁ〜」


目の前には、緑、青、ピンク黄色の幾何学模様が広がった。

被写体が見たくなって、覗き穴から顔を離す。

以外にも、 そこにあったのは観葉植物の水耕栽培の鉢に沈められているようななんの変哲も無いガラスの玉。


「す、すごいよ。これ。」

風磨は、ガラスの位置を動かして覗いてみた。また違った模様が浮かび上がる。


「大袈裟だなぁ〜。お前、万華鏡見た事無いのかよ。」

と言いつつも、俊葵は嬉しそうに頭をかいている。


「あるけどさ、閉じ込められた空間を覗いて楽しむって、何だか窮屈な感じして、あんま好きになれなかった。」


「なんだそりゃ!でも、その表現、風真らしいな。」

俊葵がまた頭を撫でた。


「あ、そうだ。」

ポケットからアイフォンを取り出し、レンズ同士を合わせてシャッターボタンを押し、モニターを確認する。


「ぁ、うーん。イマイチだなぁ〜」


もうすでに夕方で、部屋も蛍光灯を付けようかという明るさだ。


「そうなんだ。室内で撮影するならライトテーブルが要る。今回は、校庭で撮影会をしようと思ってるんだ。」


廊下のあたりがざわざわしてきた。すぐにドアが開く。


「戒田先生!あ、風真君もこんにちは。明日は晴れるんだってね。」

その声は、“ひかりあそび”受講者最年長の矢野だ。


まるで今までの会話を聞いていたかのようなセリフに、二人は目を合わせて笑い出した。






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