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風を感じるために生まれた  作者: 新井 逢心 (あらい あいみ)
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ペイフォワード㉕

ペイフォワード㉕


「まず、

南雲先生。お忙しいところ、お時間をいただきましてありがとうございます。」

俊葵は頭を下げた。


「いえいえ。どういたしまして。」

南雲は、目をキョロキョロと、おどけた様子で頭を下げ返す。


「南雲先生に同席願ったという事は...太郎さん?」

俊葵が話を向けると、太郎と西崎が同時に頷いた。


「涼風さんの許可もいただいています。」


「ね?涼風さん。」

「ねー。」

太郎が言うと、まるでJKのような返事が返ってきた。この後天的コミュニケーションの天才は早速、涼風の信頼も勝ち取ってしまったようだ。


「それならよかった。では南雲先生は、この話。どこまで聞いてますか?」


「主人の話はしたよ。」

と、涼風。


「畠山君の周辺の話は全て。」

と、西崎。


疑うのではないが、西崎が話しても良いと判断したのなら、南雲の身辺調査はある程度行ってのことだろう。俊葵は頷いた。


「分かりました。では、まず始めに風真。昨日から今日にかけて何があったか聞かせてくれるか?」


「うん。

あの、僕が川東に連れてかれたのまでは聞いてるんだよね?良太から、」


「ああ、正確には、お前のiPhoneを受け取った下重さんからだけどな。お前、何で川東先生に付いて行ったんだ?」


「うん。僕、学校終わりに忘れ物して、玄関に良太待たせて教室戻ったんだ。そこで見ちゃったんだ。川東が黒板の下のコンセント外してるの。」


「コンセント?」

涼風だ。

「うん。修理じゃないよ。盗聴器の回収さ。」


「盗聴器ぃ!」

涼風が素っ頓狂な声を出した。


「もう、大きな声出さないでよ。」

風真が耳を摩っている。


「どうして、そこで逃げなかった?」

俊葵の声のトーンが一段下がった。


「えー、逃げられなかったんだよー。」

風真が拗ねたような声を出した。


「いや。コンセントを外しているのを見られただけなら、相手も逆上したりはしない。お前が指摘しない限りはな。」


戒田邸に集う視線が風真に集中した。


「ゔー、

分かったよー、僕が川東に言った。『それ、盗聴器ですよね。』って、」


「何で!」

涼風が叫んだ。


だってぇ、

川東は、学校に警察官が来た話をした時から、僕が光生君の行方を知ってるって決めて掛かってて、

なのに、僕を直接問い詰める代わりに、クラスの女の子に詰めるように、それをわざわざ教室でやるように仕向けて、でもすっごくモヤモヤするっていうか、だって川東本人はその場にいない訳だし、」


続けて風真は、あの日3B教室であった出来事を皆に話して聞かせた。


「コンセントいじってる川東を見て、全部腑に落ちたって言うか、

今度は、川東が光生君の行方を知りたい理由を知りたいと思った。」


「担任の先生として、畠山君の身を案じているのとは違うと思ったんだね?」

西崎が言うと、

「はい。」風真は頷いた。


「iPhoneを白石 良太に預けて、明日の朝って期限付けたのはなぜだ?」


「時間が欲しかったんだ。お母さんのラインは見たから、一晩家に帰らなくてもバレない。でも、川東の本当の目的がわからない以上、一晩以上一緒にいるのは危険だと思ったから...」


最後、風真の語尾がだんだん小さくなったが、それには気づかない俊葵は質問を続けた。


「なぜ畠山の寮に行く流れになった?」


「うーん。僕が質問攻めにしたのが面倒くさかったんだと思う。僕も光生君の行方は知らないって言い張ったから、じゃあ行き先の手掛かりを一緒に探そう言われた。」


「分からん...」

俊葵は緩く首を振った。

「なら、どうして外側から鍵を取り付けた...」


昨日、たまたま職員室にいた体育教師と用務員を連れ、青海寮に赴いた湯竹校長の話によると、光生の自室のドアには、掛け金と打ち掛けに錠前とが外から取り付けられていたという。

同じ階の生徒によると、そこに鍵が取り付けられているのには気が付かなかったそうだ。


「何か飲み物を買ってくるって、川東が出てって、そう言えばドアの向こうでゴソゴソ音がしてるなとは思ったけど、その内僕眠っちゃって、気がついた時には遅くて、閉じ込められちゃってた...」

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