表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
風を感じるために生まれた  作者: 新井 逢心 (あらい あいみ)
64/76

ペイフォワード⑳

「至急、伯方さんに連絡を取らないと、」

スマホを取り出し出した俊葵は、

「そう言えば俺、伯方さんの電話番号俺知らないんだった...」

と呆けたように二人を見た。

クスッ、

「それは私が、」

下重は胸ポケットからストラップを引っ張り出し操作を始めた。

「で、何と言いましょう?」


「じゃ、こうお願いします。風真は、青海寮の畠山の部屋に監禁されている模様です。と校長に伝えて下さいと、」


下重は目を見開くが、早速伯方が出たようで、すぐに話し始めた。


「伯方さん、まだ学校から出てないといいが、」

俊葵が祈るように呟くと、一通り話し終えた下重は、人差し指と親指でOKサインをしてくれ、電話を代われと携帯電話を指差した。

俊葵は頷いた。

「代わりました俊葵です。はい。風真のスマホのメールにそう書いてあって。いや。俺も何でかは分からないですけど、ガセネタではないと思います。もちろんこっちから助けに行くことも可能ですけど、どっから誰が見てるか分からないし..」

そう言って涼風をチラリと見ると、涼風は悲しそうに眉を下げた。


「...そうですね。外から鍵が掛かっているようだと書いてきてます。俺は寮の場所も畠山の部屋がどこかも知りませんし、午前中を最後にメールも途絶えてますしで、はいはい。それが一番良いかと、よろしくお願いします。」


俊葵はパタリと携帯を閉じると、下重に手渡した。

「ありがとうございました。校長に救出を引き受けていただけました。」


ほぅ、

涼風は安堵に息を吐き、誰に向けるともなく手を合わせる。


「それにしても青海寮とは...予め生徒がいなくなるのを狙ってという事なのか、」

下重が呟く。


俊葵は小さく頷きつつ首を傾げた。

「明日から三連休ですからね。それに、風真から聞いていた話では、今日まで定期試験のはずなんですよね。」

俊葵が目を遣ると、

涼風も頷いた。

「三連休プラス二日の試験休み、合計五日。そんぐらいの連休になると、寮生には帰省する子もいるって聞いてる。」


「でもですよ。帰省は全員じゃないだろうし、第一今日はテストがあったんだ。最初から風真を捕まえるつもりだったにしても、高三生の試験を一日放棄させるってのはあまりにも目立ち過ぎます。」


「捕まえるのが一日早過ぎるって?」

涼風が聞き返すと、

いささかデリカシーに欠けたかと、俊葵は青褪めた。

「すみません...」


涼風は頭を振る。

「ううん。俊葵さん続けて。こうやって考えてる方が、まだ気が紛れるからさ。」


俊葵はさらに項垂れた。

「すみません...やっぱり、風真に自動車のリストを調べさせたのは不味かったのかも、それで川東が警戒して...」


「俊葵さん。母親の涼風さんが前向きに考えようって言ってるんですよ。いじけるのはなしです。」

下重が微笑む。

俊葵がチラっと見ると涼風はウインクを返してきた。

「俊葵さんにはどう見えてるのか知らないけど、風真アイツ、結構しぶといよ。て言うか、このメールだって...」

言っている途中から俯き、風真のiPhoneを持った手が震え出したので、

「涼風さん...」

俊葵はオロオロとしてしまった。


プハっ、

水面から上がる様に息を継ぐと、涼風は顔を上げた。目尻には涙が浮かんでいる。


「ごめんごめん。なんて言うかさ、アイツがあまりも父親に似てるもんで、」


「そう。お父さんに、」

下重は微笑み。涼風にティッシュを二、三枚手渡した。

涼風は小さく頭を下げ、ティッシュを受け取るとブーと鼻を噛んだ。下重は伯方の執務机の下のゴミ箱を涼風の方に押し出してやりながら、徐に口を開いた。


「涼風さん。つかぬ事を聞きますが、ご主人の山城さんは、以前この島の駐在所に配属されていませんでしたか?」








































評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ