ペイフォワード⑲
「はぁ、」
涼風はため息を吐いた。
SNSのチェックは、時間がかかった割に大した成果を上げていない。
風真は今時の高校生らしく、ありとあらゆるSNSを網羅していたが、ほとんどのアプリで発信はしていなかった。フォローは、青海のクラスメートと思しきアカウントばかりだった。ただインスタグラムだけは例外で、タイトルなしの写真の投稿はかなりの数に登った。その中には光生に向けた電話の写メも含まれている。
「ったく、どんだけアカウント持ってんだよ...」
さすがの涼風も弱音を吐くほどだ。
ずっと握りしめていたiPhoneをテーブルの上に置いた。
「ちょっと見てもいいです?」
俊葵は断って、iPhoneを手に取った。もしかしたら地図アプリに何か残してはいないかと探してみたが、そんな推理ドラマ的ヒントなど残されているはずもなく、横スクロールをしてはアイコンを開くを機械的に繰り返していった。アプリライブラリーまで辿り着くと、思いついたように検索窓に何やら打ち込み始める。
「何?何してんの?」
涼風が覗き込んできた。
「このアプリライブラリーって、ダウンロード済みの、だけどトップ画面には見せてないアプリを探すのにも使えるじゃないですか。」
「え、知らない。そんなもんがあるの?てか、ダウンロードしてんのに何で隠す必要?」
俊葵は苦笑いした。さっき見たところ、涼風が使っているのも同じiPhoneだ。
「ありますよ。見せてないアプリの探し方に関しては、アプリストアを見るって方法もありますよね。けど一つだけ、風真がなぜ隠したのか気になるアプリがあって、」
と言って俊葵は、画面にメールアプリのアイコンを表示させた。
アイコンの右上には、着信がこれだけ溜まっていますよという意味の数字が出ている。
「キャリアメールぅ〜?」
涼風が素っ頓狂な声を上げた。
「言っちゃ悪いけど、存在すら忘れてたわ。スマホにしてからは全然使ってないし、」
「俺もそうですよ。俺も使っているのはフリーメールだし、ま、専らラインですかね。」
と言っている間に、横からiPhoneを掻っ攫われた。涼風がものすごいスピードで画面をスクロールさせ始める。
俊葵は負けじと画面を覗き込んだ。
「涼風さん。誰か知ってるんですか?この発信者。山城 栄太って、」
「山城...」
それまで黙ってやり取りを聞いていた下重が呟いた。俊葵が反応したのを見ると、苦笑いを浮かべる。
涼風はそれにも応えようともせず、一心不乱に画面に目を通し続けている。そうかと思えば次の瞬間弾けたように笑い出した。
驚いた俊葵と下重はギョッと顔を見合わせる。
「はあーぁ、可笑しい。」
一頻り笑った後、涼風は目尻に浮かんだ涙を拭いながら、iPhoneを俊葵に押し付けた。
画面に目を落とすと、メールの日付は昨日の夕方から今日早朝にかけて。合計5通となっている。これ以外の履歴はない。
「山城 栄太はウチの旦那。」
「え、」
俊葵はガバッと顔を上げた。
下重とも目が合ったが、彼もまた驚いているようだ。
「もちろん、死んだのは確かよ。お葬式出したのはあたしだし、それは間違いない...って、それより、このメールの内容の方を先にどうにかした方が良くない?」
「あ、」
コクコク、
俊葵は忙しく頷いた。




