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風を感じるために生まれた  作者: 新井 逢心 (あらい あいみ)
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ペイフォワード⑮

俊葵は伯方の書斎を辞して廊下に出た。

「こっちも連絡待ちか...」

一人そう言って、長井から何か連絡は来ていないかと、デニムのポケットに手をやる。


「あ、部屋か、」

スマホを、俊葵に当てがわれている客間に忘れてきたことに気がついた。

客間に戻るべく中庭に面した廊下を歩いていると、窓越しに涼風すずかが中庭に向かって立っているのが見えた。手で合図をすると、涼風も振り返してきた。

涼風の立っている廊下には、客間が三つ並びで面している。その一つを俊葵、光生。もう一つは昨夜光生が高熱を出したため、急遽泊まり込むことになった涼風が使っているのだが、


「んもう!なにやってんの。アイツは...」

俊葵が廊下を曲がると、すぐにブツブツ呟く声が聞こえてきた。


誰と話しているのか分からないが、耳に入ったものを無視する訳にもいかず、俊葵が曖昧に笑いながらドアに鍵を差すと、涼風が自身のスマホを睨みつけながら話しかけてきた。


「俊葵さんのとこには電話来てない?」


「電話って、風真?いいや。でも、俺スマホ忘れてて、いま取りにきたところなんですよ。」

そう言うと俊葵はドアを開け、窓際に寄せられた小さな机の上からスマホを取り上げ、

画面を見るなり、ドアから首を突っ込んでこっちを見ている涼風にかぶりを振った。


「そう...」

涼風の声のトーンが下がる。

「どっかで夜遊びでもしてんのかな...」


「そんな訳ないじゃないですか。風真に限って、とにかく涼風さん中入って。光生アイツに聞こえる。」


「あ、」

涼風がドアを閉めると、

俊葵は囁き声で言った。

「いつから?」


「昨日...登校するのを見送ったのが最後。昨夜はほら、」


コクコク、

俊葵は頷いた。

昨日夕刻の検温で、光生が発熱していることが分かり、急遽涼風は泊まり込むことになったのだった。


「一応、夕飯の事とかライン送ったんだけど、既読になってなくて、」


「え、」

俊葵は青褪めた。

俊葵も風真にラインを送ってはいたが、

昨夜、光生の熱は高く、指示を仰いだ深見に、もしも明日まで高熱が続くようであれば、緊急搬送の要請も考えるべきだと言われ、ついその事に気が向いてしまい、既読が付かなくても、もう寝てしまったのだろうと思うくらいでそれ以上気にしていなかったからだ。


「とにかく、家に...いや。涼風さん寝てないから車は危ないな。俺が港まで送るんで...あ、学校に連絡は?」

多少とっ散らかりながら俊葵が言うと、涼風が首を横に振った。


「学校にはまだ。でも、俊葵さんに送ってもらうのは良くないよ。港には目があるでしょ。」


さすが看護師と言うべきか涼風は冷静だ。それに引き換え自分は、

「そう...ですね、」

俊葵は肩を落とした。

涼風はその肩をポンと叩き、

「取り敢えず学校に連絡して、港にはここんの誰かに送ってもらう。まずはそれからだね。」

俊葵を慰めるようにニッと笑った。



















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