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風を感じるために生まれた  作者: 新井 逢心 (あらい あいみ)
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武勇伝

文科省の特別カリキュラム実施校というと聞こえはいい。この学校の生徒は一人残らず、別の高校に入学してから、この青海学園に転校してきている。

つまり、皆な、入学した高校にいられなくなった、()()()()


そんな生徒達は大きく二種類に分けることができる。

前の学校にいられなくなった理由を喋りたがる奴と、喋りたがらない奴。

風磨は完全に後者だ。

前者はさらに、他の生徒の理由を知りたがる奴と知りたがらない奴に分かれる。しかしなぜか、圧倒的に知りたがる奴ばかり。


喋りたがらない奴が県内の出身だと結構悲惨で、知りたがる奴が塾やSNSで聞き回り、学校内でそれを暴露したりする。そこで起こる揉め事を風磨はこれまで何度も目にしてきた。


風磨は県内の出身で、学校のある姫島に本島からフェリーで通っている。二年生になるまで、いつ自分が噂の的になるかと、ヒヤヒヤしていた。


ある日、

「風真はさ、引きこもりのせいで、県立とか行けなかったクチなんでしょ?」

と、例の芽衣ちゃんに言われた。


最初は、

ーー何、言ってんだ?ーー

と面食らった風磨だが、これは良いぞ。と気がついて、


「そっ!武勇伝とか無くてごめん。」

と、ものの見事に言い逃れたというエピソードの持ち主なのだ。


風磨は、自分が寸でのところで、噂の的になる危機から逃れたせいか、光生の事が気掛かりだった。

光生は、休み時間やお昼時間も風磨にだけ声を掛けるし、風磨はそうやって光生を気遣っているしで、始業式の次の週くらいから、風磨と光生君はワンセットのように扱われている。

光生が見当たらなければ所在を風磨に尋ねてくるし、風磨に配布物を託してくる。滅多にないけれどもその逆も然り、

そうなると、周りは、風磨が光生の転校の理由まで知ってると決めてかかるわけで、光生のまことしやかな噂を耳に入れてきては、風磨に事実確認をするようになってしまった。


今週いっぱい、光生は学校を休む予定だ。確か明日はスペインで大会の本番。

空港に向かってる最中や、飛行機を降りた後、眠る前。頻繁にメッセージを送ってくる。その内容は、「はらへった。」とか、食事の写メとか「おやすみ。」とか大した内容じゃない。

それでもこんなやり取りをしてるのは風磨だけだから、他の奴に言っちゃダメだと、口止めされている。


風磨は光生の転校の理由を聞いたことがない。


ーー僕が喋りたくないんだから、光生くんから聞き出したいとは思わないな。ーー


それが事実なのに、知らない事をそのまま知らないと言っても、周りには風磨が隠し事をしているように見えるらしい。

だから、誰かが光生の噂話をする時、風磨は、聞きたくないとはあえて言わない。間違っても相槌に聞こえないように発言にも気をつける。そしてただ、相手の目を見つめるのだ。そうすると、相手は詰まらなくなるみたいで、そのうち話を止めてくれる。





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